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2011.10.8
創立一三〇周年記念式典 式辞
東京工業大学は、本年創立130周年を迎えました。これもひとえに東工大を支え、応援して下さった皆さまのお陰であると深甚なる謝意を表したく存じます。
本日、ご多用中のところ、ご来駕いただきました文部科学省、全国の大学長をはじめ、ご来賓の皆さまに深く御礼申し上げます。また本日は、海外より協定校の皆さま、そして、在日大使館の皆さまにご来駕いただいております。みなさま、ようこそ東工大へお越しくださいました。そして、海外から、遠方から、ご出席いただいている卒業生の皆さまには、ようこそ東工大へお帰りなさいと申し上げたく存じます。
本年3月11日、東日本大震災が発生いたしました。多くの方がお亡くなりになり、依然、行方不明でいらっしゃいます。心より哀悼の意を捧げますとともに、被災された皆さま、被害に遭われた大学、学校、 企業の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。本学でも約50名の学生の家族が被災いたしました。
さて、東工大が30年前に百周年を迎えました時に編纂された本学百年史の「刊行の辞」において、当代の松田武彦学長は次のように書き出しています。
すなわち、
「思えば、明治維新直後から、我が国の工業立国の基礎としての、近代的工業技術の教育機関として、手島精一氏をはじめ、多くの有識者の筆舌に尽くしがたい労苦の末、東京職工学校は、明治十四年に創立されたのである」。
本学は、東京工業学校、東京高等工業学校として発展した後、1923年の関東大震災による火災のため校舎を失いました。しかし、多くの教職員、学生、卒業生の、血のにじむような努力によって再建し、1929年、東京工業大学へと昇格を果たしました。
同時期に、創立の地である蔵前から大岡山にキャンパスを移転いたしました。震災の教訓を活かした、頑健な本館校舎が建設されたのは、この頃であります。本学の大学歌において、作詞者の三好達治は、剛堅で美しい本館校舎を「月毛色の馬」と形容しました。
その後、第二次世界大戦が起こり、大学も大きな影響を受けます。しかし、戦後になると、いち早く大学改革を実施し、和田小六学長が提唱した「くさび形教育」のシステムが整い、自由にして、真理探究の念に燃えた、東工大の学風が形づくられました。
1960年、70年の大学紛争の後、1975年には、全国初の独立大学院である総合理工学研究科を設置いたしました。 また、同年9月には長津田(現在のすずかけ台)キャンパスを開所いたしました。
2004年のいわゆる独立法人化に伴い、「国立大学法人東京工業大学」となり、2011年に創立130年を迎えたのであります。
この間、日本も世界も大きく変わりました。産業とビジネスのグローバル化、経済の世界的大変動、地球規模の環境問題、東日本大震災で顕在化した原子力とエネルギー問題など、多様な課題が突きつけられています。
2009年に、東工大の今後十年を見据えた将来構想「東工大ビジョン2009」を策定いたしました。日本の、世界の将来を担う理工系人材、「知(ち)・技(わざ)・志(こころざし)・和(わ)の理工人」の養成をその基本方針に掲げ、教育・研究・貢献の3つの柱でさまざまな取り組みを実施しております。
教育では、社会を牽引するリーダーを養成する「グローバルリーダー教育院」を設置し、新しい博士課程教育を開始いたしました。科学技術に関する深い「専門力」に加え、幅広い「人間力」を併せ持つ人材の養成を目指します。
研究では、「新しい価値の提示によるイノベーションの創出」にチャレンジいたします。 これまでも、加藤 與五郞、武井 武のフェライトや、白川英樹の導電性ポリマーの発見など「世界で初めて」を生み出してきた、東工大の伝統を受け継ぎ、新しい材料・デバイスの創成、本学独自の設計によるグリーン・スパコンTSUBAME2.0などが世界をリードいたします。
社会貢献では、 東日本大震災への復旧・復興支援など、社会的要請にお応えし、様々な事業を展開しております。
130周年事業の一環として、「東工大基金」を設立し、企業の皆さま、卒業生、教職員の諸氏に、ご寄附をお願いしております。東工大基金の目指す【これからの日本を担う人材養成】に共感していただき、ご同意を頂戴いたしております。東工大基金を本学の今後の教育・研究・貢献の発展に大切に活用させていただくことをお約束いたしますとともに、寄付者の皆さまへ重ねて御礼申し上げます。
さて、 久しぶりに大学に帰って来られた卒業生の皆さまには、 ずいぶんキャンパスの風景が変わったと感じられたのではないでしょうか。
2009年には「東工大蔵前会館」が竣工いたしました。 これは、本学同窓会「蔵前工業会」と共同で大岡山駅前に建設したものです。さまざまな学術シンポジウムの会場として、また、世代を越えた交流の場としてご活用いただいております。
本年3月には、大岡山に新しい図書館が完成し、先日、グッドデザイン賞を受賞いたしました。また、4月には「東工大博物館」を設置いたしました。これは、百年記念館をつくった時の博物館構想が実ったものです。
緑が丘地区に建設中の「環境エネルギーイノベーション棟」では、エネルギー・環境の研究を行うとともに、エネルギーの自給自足型ビルのモデルを提示いたします。すずかけ台キャンパスには、20階建ての産学連携棟を建設中です。
今、先輩方の努力によって継承されてきた130年の重みを改めて感じております。 師から学生へ、先輩から後輩へ脈々と受け継がれてきた「知へのあくなき探求」と「ものつくりの心」を携えて、これからも新しい歴史を刻んでゆく所存です。
東工大は「科学と技術」を牽引する理工系大学としての責任を果たし、これからも、社会からの要請を真摯に受け止めて、世界から信頼される存在を目指して、鋭意努力して参ります。
皆様、ここに東工大の覚悟を見守っていただき、変わらぬご鞭撻、ご支援をお願いし、式辞といたします。
平成二十三年十月八日
学 長 伊賀 健一