トップ > 大学案内 > 学長からのメッセージ > 平成20年3月学位記授与式
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学長 伊賀 健一
本日、ご来賓ならびに本学役職員・部局長のご列席のもと、平成19年度学部および大学院学位記授与式を挙行できますことは、本学全構成員の大きな慶びであります。
学士、修士、および博士の学位を授与された諸君おめでとう。心からお祝いいたします。海外からの留学生の皆さん!日本での勉強と研究を無事終えられほっとなさっておられると思います。これまで学業を支えておいでになりましたご家族の皆様に深く敬意を表したく存じます。
2008年3月26日、新しい学士が1,114名誕生し、1932年以来の学部卒業者の累積数は46,046名であります。修士の学位記を授与された修了者は1,537名であり、1955年以来の累積数は38,017名になり、専門職学位記を授与された修了者は25名で、累積数61名となります。また、271名の博士後期課程修了者に博士の学位記を授与いたしました。これまでの博士の累積数は課程博士7,347名となり、論文博士を合わせると合計12,081名に達します。将来に大きな可能性を秘める諸君が、新たな学位取得者として本学の歴史に新しいページを開くことは、大学にとりましても大きな喜びであります。

私は昨年10月24日に学長に就任いたしました。就任の挨拶でも最高の理工系大学を目指そう、今こそ東工大の出番だと訴えました。質の高い社会、安心して住める地域、平和な世界、これらは万民の願いです。産業の変化が第3次産業から第44次、第5次に移りつつある中で、工業製品や技術が価格破壊を起こす,エネルギー、食料の高騰など厳しい状況が続いています。小中学生までは理科が好きなのに、高校から大学に進むにつれて理科離れが生じるなど、産業界としても理工系大学としても座視できないところにきています。しかし、いろいろな努力によって、技術には相応の対価を払おうという反省や理数教育の充実の機運が出始めました。国立大学の工学系への志望者も平成18年から今年にかけて増加に転じています。また、優れた素材や新しいビジネスに日本らしい道を照らす頼もしい下地も存在しています。ふたたび技術、科学を人々のために使う、人々のために技術、科学の研究をし、資質の高い卒業生を世に送り出そうという我らが東工大の出番が再びやってきました。
2007年の英国の調査機関による世界大学ランキングで、東工大は世界90位、工学系で22位、日本の大学では、総合4位と健闘しています。日本の強いところは、やはりものつくりです。そして、その力を統合する力、その能力をもつ人材を養成することこそが東京工業大学の使命です。
ここで、本年度における東工大の主な活動について御紹介したいと思います。教育面では、いわゆる FD(Faculty Development)研修、つまり教授法改善研修を全学的に広げました。それには、ものつくり教育研究支援センターを中心に学生諸君の創意工夫を育てる努力が含まれています。学部一年生が自分たちで企画したパネル討論会では元文部大臣の有馬朗人氏、脳科学者の茂木健一郎氏をお招きし、私も加わって非常におもしろいイベントになりました。また、大学院を中心とする改革の一つとして、情報系教育研究機構が作られることになり準備が進んでいます。世界文明センターが活動を開始し、文学、美術、音楽の講義が魅力ある講師陣によって聴けるようになり好評を博しています。
研究面では、文部科学省の大型プログラムである21世紀 COE(Center of Excellence)・12拠点、グローバル COE・5拠点でユニークな研究と博士課程システム改革が進んでいます。東工大の情報系として自慢できるのが、日本一高速のスーパーコンピュータ「TSUBAME」です。今年大きく進化し、大規模な計算科学の世界を開いて、全国の研究者をひきつける魅力となっています。スーパーコンピュータのコンテストも全国的に認知されてきました。学術情報のみならず全学の各種情報もここに集められていきます。また全学で使える無線LAN も整備され、論文などの学術情報が便利に閲覧できる仕組みになりました。また、東工大の得意とする産学連携活動や、ベンチャーの立ち上げなども進行中です。
国際的な活動としても、「国際大学院プログラム」が正式に発足し、007年10月には100人余りの人たちが入学しました。中国清華大学との大学院合同プログラムも博士課程にまで拡大しました。タイ、フィリピンでの大学コース協力も進んでいます。

東工大附属の科学技術高校も、この名前になってからの第一期生が3月11日に卒業しましたが、大学と高校の連携、スーパーサイエンスハイスクールも活発に行われています。
東工大は研究大学として世界から評価され、新しい息吹を学生に伝え、社会の人々から期待される研究を行っていると思います。バランスの良い東工大生を育てるには、そして良き友人を大学時代に育むには文化・スポーツ力が大事です。これまでにも民芸陶器の河井寛次郎・浜田庄二・島岡達三(縄文象嵌:人間国宝で2007年暮に他界)、型絵染の芹沢介など芸術分野でも名を馳せた人々を輩出しています。また、特徴ある音楽家や美術家も多く活躍しています。2007年には、鳥人間コンテストで優勝,混声合唱団コールクライネスは全日本合唱コンクール全国大会で10年連続金賞という快挙を成し遂げました。サイクリング部も第2回アジアインドアゲームズ・サイクルサッカー部門で優勝しました。東工大が始めたロボコンも18回を数え、海外での開催に参加し、つねにこの分野をリードしています。
諸君はこれから社会に出、あるいは大学院に進学する訳ですが、内外の厳しい状況の中で、これからリーダーシップを発揮するにはどのようにしたらよいかについて、いくつか私の考えを述べ、参考にしていただければ幸いです。
まず、自分自身、理念(ビジョン)をもつことです。会社に入り、あるいは研究室に所属して研究を始める、そのとき小さくても良いからビジョンをもつことが大切です。スローガンのようなものでしょうね。次に、概念(コンセプト)、これはもう少し具体的な形のイメージとなります。それから、それらを実行する方法を考えることです。状況は進化し、変化しますから、柔軟に対応しないといけませんが、ビジョンはぶれない方が良いでしょうね。
ところで、現在の世界を見ると経済のグローバル化が進み、科学技術を起点とした急激なビジネス展開が急激に進んでいます。科学技術が国を支えるもとになっていることは各国も承知し、そこに GDP の1%前後を投じて振興を計っているところです。日本はというと残念ながら0.5%で、GDP そのものも下降気味です。このような状況ですから、科学技術を担っている我々は停滞することを許されませんが、やはり世界の至るところに繰り広げられる多くの問題を直視し、国の利益になることは第一としても、国民、そして世界の人々のための科学技術を考えることでなくてはならないと思います。
大学なり企業なりを支えるのは「人」です。東工大の強みのひとつに同窓力があります。同窓会である蔵前工業会と卒業生です。これまで卒業生を約90,000人送り出し、産業分野の重要な役割を担ってきました。多方面で活躍する同窓生は大学の大きな支えです。蔵前工業会と東工大が共同で大岡山に建設予定の,いわば“東工大クラマエ会館”ともいうべき Tokyo Tech Front(TTF)も着工の運びとなりました。
本学の前身は1881年に創設され、2011年には130周年を迎えます。東工大が、社会、産業界、世界に向けて力を見せるすばらしい事業を計画します。これらを起点として“東工大130周年事業”を、卒業生の皆様と協力しながら有意義に展開したいと念願しています。
最後に、東工大の心、このことを皆さんは考えたことがありますか?それは無形で無言です。でも、私の胸の内には東工大の心があるように感じます。皆さんにも是非見つけて欲しいと願います。これをいつもよりどころにしていただくと、諸君の未来はきっと大きく開けると思います。
以上をもちまして学長告辞といたします。