トップ > 大学案内 > 学長からのメッセージ > 平成22年3月学位記授与式
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学長 伊賀 健一
晴れて学士、修士、専門職、博士の学位を授与された諸君おめでとう。心からお祝いします。これまで学業を支えておいでになりました保護者の皆様に深く敬意を表したく存じます。
2010年3月26日、新しい学士が1,091名誕生し、1929年以来の学部卒業者の累積数は54,462名であります。また、修士の学位記を授与された修了者は1,385名であり、1955年以来の累積数は41,156名になり、専門職学位記を授与された修了者は25名で、累積数127名となります。また、254名の博士課程修了者に博士の学位記を授与いたしました。これまでの博士の累積数は8,507名となり、論文博士を合わせると合計12,534名に達します。将来に大きな可能性を秘める諸君が、新たな学位取得者として本学の歴史に新しいページを開きました。
東工大のシンボルマークとして、正面にありますようにツバメを用いています。ツバメはめでたい瑞(ずい)鳥であり、これは大学の「大」の字をデザインしたものです。白い部分に注目いただくと工業の「工」となっており、これは学窓を表します。全体で工大を意味します。これは東京美術学校(現在の東京藝術大学)の教授であった堀進二氏の作品で1948年に作られました。

さて、世界には多くの大学があります。その数は1万以上と推定されます。東工大は 2009年の英国の調査機関による世界大学ランキングでトップ100に入り、かつ世界55位と健闘しています。我々の強いところは、やはり「ものつくり」です。そして、その力を統合する力、その能力をもつ人財を養成することこそが東京工業大学の使命です。
大学、企業、社会、を支えるのは「人」です。東工大の強みのひとつに同窓力があります。全学同窓会である蔵前工業会と卒業生のネットワークがその力です。これまで本学は卒業生を約9万人送り出し、主として産業分野の重要な役割を担ってきました。多方面で活躍する同窓生は諸君らの大きな支えです。東工大と蔵前工業会が共同で大岡山駅前に建設していました東工大蔵前会館が昨年5月に完成しました。その入口に「飛翔」というモニュメントが立っています。大きく羽ばたくという意味で、作者は東京藝術大学の宮田亮平学長で、寄贈者は本学卒業生で「ぐるなび」創業者会長の滝久雄さんです。
本学の前身は1881年に創設され、2011年には130周年を迎えます。東工大が、社会、産業界、世界に向けて力を見せるすばらしい事業を計画しようと考えています。蔵前工業会とも協力し、卒業生の皆様とも密に連携して同窓力を高めたいところです。流動化が進むこの世界では、終身雇用制の社会が変貌し、人生の拠り所が希薄になりつつあります。大学が皆さんの帰港地としていつでも帰ってきて頼りになる、そのような東工大でありたいと思っています。母校でもあり、母港でもある訳です。これらの起点として「東工大130周年事業」を、皆様と協力しながら有意義に展開したいと念願しています。そこで、教職員、卒業生、企業の皆様にご理解願ってご寄付をいただき、その基礎を作る「東工大基金」を作ろうと計画しました。そのお願いをする趣旨とパンフレットを本日お渡しいたしておりますので、保護者の皆様には、本日卒業する諸君と大学の将来のためにも、どうかご理解の上ご協力をお願い申し上げる次第です。

ところで創造ということを考えてみましょう。つまり新しくものを作り出すことです。「ものつくり」ということがよく言われますが、本当の楽しさは今まで世の中になかったものを作り出すことです。「フェライト」という物質があります。小さい磁石がたくさん詰まっている材料で、この東工大で発明されたものです。1935年頃ですが、加藤与五郎教授と武井武教授が発見したのです。なおかつ重要なのは、ただちに小さなベンチャー会社が作られ生産を始めたことです。東京電気化学工業という名前で、現在TDK(株)となって大企業に成長し、エレクトロニクスの重要な材料を供給しています。Tは東工大を意味するのだそうです。昨2009年に世界的な学会である電気電子学会(IEEE)から「マイルストーン」の表彰を受けました。世界初の発明と20年以上にわたる継続的な企業化に対してであります。これは一つの例でありますが、このような世界初めてという発見・発明が本学から多く生まれています。正門のそばにあります百年記念館に展示されています。諸君もぜひ「世界で初めて」に挑戦してみて下さい。
我々が直面する世界を考えてみます。私は、今を100年目の革命と捉えています。つまり、第2次産業革命の後、1910年を前後として世界が大きく変わりました。ロシア革命、オスマン帝国の崩壊とイラン立憲革命による中東の変貌などです。現在の世界地図の変わり方はそれにも増して大きなものです。特に、1989年のベルリンの壁崩壊後に共産圏という大きな氷山が溶けて世界が飲み込まれたこと、1999年以後のインターネット爆発による産業構造の激変、2009年から顕在化してきた自動車工業の電気自動車へのシフト、コンピュータや通信のクラウド化などです。
世界政治経済の重心移動/途上国の台頭と困窮、ドバイ発の信用不安等は表層雪崩のようなものです。それに加えて、地球環境を考えるべき時が到来しました。25%の温室効果ガス削減(1990年の排出量を基準)を鳩山由紀夫首相が宣言しました。ただし、主要国が同調しなければだめという条件は付いています。東工大もこれに応えなければいけません。東工大では、昨年2009年11月に環境エネルギー機構を作りました。全学から200人以上の教員が研究科、研究所などを超えて研究と教育を考えるものとしたのです。これからは、一つの専門の人だけでなく、いろいろな技を持った人が共通の問題に向かって協力するという局面が多く出てくると思います。諸君もこれから、国際的に活躍する場面が出てくることでしょうが、臆することなく世界の人々と協力することが大事です。
2009年に長中期の将来計画を定めました。それは「東工大ビジョン2009」と言っています。ミッションとして、「知技志和」の精神を持つことを謳っています。知と技はもちろんのこと、高い志、日本古来の和の心を持つ「理工人」を養成する、東工大の強みを活かし国際的意識を持った信頼される素晴らしい大学へ、と期待しています。諸君はその最前線にいるわけで、大いに期待しているところです。これから大事なのは、新しい価値の創造、目指すは、素晴らしい地球です。
最後に、東工大の翼に乗って世界へと羽ばたき、大いなる活躍を祈念します。そして、いつでも東工大を頼って帰ってきてください。
(本年度も学位記授与式は学部と大学院とに分けて行われました。本稿はそれらの式辞をまとめたものです)