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平成20年1月4日
新年のご挨拶
学長 伊賀 健一
皆様、明けましておめでとうございます。2008年の門出にあたり、新年のメッセージを述べさせていただきます。

就任の挨拶でも最高の理工系大学を目指そうと、以下のように述べたところです。
「質の高い社会、安心して住める地域、平和な世界、これらは万民の願いです。産業の変化が第3次産業からすでに第4次、第5次に移りつつある中で、工業製品や技術が価格破壊を起こすなど厳しい状況が続き、若い世代の理科離れが生じるなど、産業界としても理工系大学としても座視できないところにきています。しかし、いろいろな努力によって、技術には相応の対価を払おうという反省が出始めました。また、優れた素材や新しいビジネスに日本らしい道を照らす頼もしい下地も存在しています。ふたたび技術、科学を人々のために使う、人々のために技術、科学の研究をし、資質の高い卒業生を世に送り出そうという我らが東工大の出番が再びやってきました。」
2007年のTimesによる世界大学ランキングで、東工大は世界90位、工学系で22位、日本の大学では、東大、京大、阪大に次いで総合4位と健闘しています。日本の強いところは、やはりものつくりです。そして、その力を統合する力、その能力をもつ人材を養成することこそが東京工業大学の使命です。
今年は第1期中期計画評価の年です。これまでの大学の運営状況についての評価書をまとめること、それにもとづいて来年に次期の中期計画を立てること、が中心です。これには膨大な努力と労力を必要としますが、大学法人へ課せられた義務ですので、滞りなく実行しないと大学が立ちゆきません。是非、各部局のご協力をお願いいたします。
では、内外の厳しい状況の中で、東工大をその方向へどのように運営していったらいいのでしょう。繰り返しになりますが、それには次のことを念頭におきたいと考えました。(※1) (※2)
さて、新しい大学の陣容に変わって2ヶ月あまりが経ちました。今、上記フェアプロセスに基づく運営では、第1に意見をよく聴く、第2に決定したことをよく説明する、第3段階では将来展望を示すことが知られています。このうち、今年度の運営では第2段階にさしかかろうとしています。いくつかの緊急課題は実行に移しつつあります。新年を迎え、次の年度あるいは将来にかけての東京工業大学の展望を考える時がやってきました。これまで検討されてきた将来計画を基礎に、喫緊の課題解決、将来を見据えた東工大のビジョンを示していきたいと思います。
まずこれまでに続き第1に、急を要する問題に対し優先順位をつけて解決していきます。安全、対外問題、教育改革などが最優先です。昨年12月に、博士後期課程学生への支援策を提示しました。これから各研究科の意見をよく聴き、継続性ある制度にまとめていかねばなりません。これには大学の浮沈がかかっています。

第2に、東工大の将来計画を立てる仕組みをつくります。それには、3つのキャンパスの有効利用も含まれます。大岡山、すずかけ台、田町、これら3つのキャンパスはいずれも駅の前にあります。全国の大学でこれだけ利便性に恵まれた大学は他に例を見ません。各部局や建物の効率的配置なども要検討課題でしょう。
第3は創立130周年事業です。1881年に創設された東京職工学校から始まって2011年には130周年を迎えます。東工大が、社会、産業界、世界に向けて力を見せるすばらしい事業を計画せねばなりません。
第4は、大学全体のシステム改革です。単なる構造を変えるだけではなく、先に述べた力を統合する組織、運営形態、人の仕組み構築(※3)が欠かせません。私は、ハードコア、ソフトコア、ヒューマンコアの改革と名付けています。以上が、主なところですが、あと少し私の考えるところを述べたいと思います。
ところで、現在の世界を見ると経済のグローバル化が進み、科学技術を起点とした急激なビジネス展開が留まるところを知りません。科学技術が国を支えるもとになっていることは各国も承知し、そこにGDPの1%前後を投じて振興を図っているところです(日本は残念ながら0.5%で、GDPそのものも下降気味)。このような状況ですから、科学技術を担っている我々は留まることを許されませんが、やはり世界の至るところに繰り広げられる多くの問題を直視し、国の利益になることは第一としても、国民、そして世界の人々のための科学技術を考える大学でなくてはならないと思います。最高の理工系大学をという由縁がここにあります。
東工大を支えるのは「人」です。学ぶ学生、教授する教員、研究する研究員、技術と事務で支える職員です。また、企業、社会との連携が大切です。そこで東工大をますます発展させるために、大学力(※1)の指標を明確にしていき、その改善を図ろうと訴えました。大学力とは、教育力、研究力、学生力、経営力、組織力、国際発信力、社会・産業貢献力、同窓力、文化・スポーツ力──これを合成したものだと考えています。Timesの評価項目でははかれない上記の項目が大学の力ではないでしょうか。
東工大は研究大学として生きていくべきですが、新しい息吹を学生に伝え、社会の人々から期待される研究を行わねばなりません。バランスの良い東工大生を育てるには、そして良き友人を大学時代に育むには文化・スポーツ力が大事です。これまでにも民芸陶器の河井寛次郎・濱田庄司・島岡達三(縄文象嵌:2007年暮に他界)、型絵染の芹沢銈介など芸術分野でも名を馳せた人々を輩出しています。2007年には、鳥人間コンテストで優勝、混声合唱団コールクライネスは全日本合唱コンクール全国大会で10年連続金賞という快挙を成し遂げました。サイクリング部も第2回アジアインドアゲームズ・サイクルサッカー部門で優勝しました。東工大が始めたロボコンも18回を数え、海外での開催に参加しました。スーパーコンピュータのコンテストも好評です。
さらに、非常に重要なのが、同窓力です。これまで卒業生を約90,000人送り出し、産業分野の重要な役割を担ってきました。多方面で活躍する同窓生は大学の大きな支えです。同窓会である蔵前工業会と東工大が共同で大岡山に建設予定の、いわば"東工大クラマエ会館"ともいうべきTokyo Tech Front (TTF)も着工の運びとなります。これらを起点として"東工大130" 事業を協力しながら有意義に展開したいと念願しています。
東工大の心、このことを皆さんは考えたことがありますか?それは無形で無言です。でも、私の胸の内には東工大の心があるように感じます。皆さんにも是非見つけて欲しいと願います。
むすびに、私の人生訓でもある次のことをお伝えしたいと思います。
世界で初めてを目指そう ―小さくてもよいから―
それらが集まると、東工大は最高!今年もよい年でありますように…