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平成21年1月4日
新年のご挨拶
学長 伊賀 健一
皆様、明けましておめでとうございます。2009年の門出にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。
昨年のあいさつの中で次のようにのべました1)。
「今年度の運営では、これまで検討されてきた将来計画を基礎に、喫緊の課題解決、将来を見据えた東工大のビジョンを示していきたいと思います。第1に、急を要する問題に対し優先順位をつけて解決していきます。第2に、東工大の将来計画を立てる仕組みをつくります。第3は創立130周年事業です。第4は、大学全体のシステム改革です」
これまでの14ヶ月で、第1から第3まで、できることを最大限に実行してきました。東工大の強みも内外に示すところとなったと同時に、まだまだ改善と整備が必要な事項が見えてきました。物理的にも精神的にも快適な勉学と研究ができる環境、安全性、公正性、共通インフラ整備など、これまで大学の規模拡大に伴って十分には手が回らなかった部分、そして、第4のシステム改革です。
2008年後半から、世界は金融信用の膨張とバブル崩壊により、実質経済にも未曾有の危機が及んでいます。裏付けのない貸し付けと破綻が直接原因と言ってよいでしょうが、同時に人間の持つ期待感の過大な膨張が加担しています。20世紀初頭、グローバル化と国際的連携の仕組みができましたが、各国の民族主義や植民地政策などの影響で戦争が起こり、1929年には経済の大恐慌に見舞われました。自動車産業の勃興も今の状況と似ていると思います。歴史は繰り返しますが、競争下に置かれた人間社会はじっとしていると置いて行かれるし、先に進むとバブルになるというダイナミズムから逃れえないのではないでしょうか。その狭間に世界の大きなパラダイム変化が起こります。筆者ら光通信分野の研究者は2000年ごろの通信バブルを経験しましたが、直前まで拡大を誰もが信じていました。今回は規模がその何倍もあり、最大と言ってよいかもしれません。これまでと違って、ネットワーク化がスピードと規模の拡大に拍車をかけました。
加えて、気候変動、資源・水の枯渇、食料需給、人口爆発と減少の不均衡、感染症流行、宗教・地域紛争などの問題が山積しています。日本国内でも、人口減少、超高齢化、社会保障、格差の拡大、食料自給率と食の安全、社会安定性の低下など、多くの難題に直面しています。このような中で、大学のみが安閑として旧習を墨守することは許されないでしょう。大学は、知の砦として社会から突きつけられた課題の解決につながる新しい価値を生み出していかなくてはいけません。そこに、我が国の発展に対し理工系を中心とした学術研究、人材育成でリードしていく東工大の存在理由があります。
そこで、東工大に関連が深い製造業を中心にした主要産業について見ても、消費電力の少ない製品を開発し、生産や流通でもCO2排出削減することは国策につながるのみならず、消費者にとっての最優先事項でもあります。負の情報が多い昨年でしたが、いろいろな分野の方々と話をしている中で、“これから日本の時代が始まる”ということで盛り上がりました。それは、感性での勝負によるものです。例えばディスプレー、その精緻さと美の感覚は日本のものであり、実現する技術はここにありというわけです。食の美、観光における心くばりの良さなどもそうです。2008年10月に観光庁が出来ましたが、初代長官の本保 芳明さんは東工大の卒業です。長官が目標とする「30兆円産業に日本らしさ」を活かせば、もう一つの日本の時代がきます。
東工大は、このような産業界の将来を果敢に先取りし、技術の未来をリードしていくべき大学として、環境重視の姿勢を打ち出しながらも、企業だけでは達成できない創造的な研究を生み出し、さらに産業界が求める能力と環境意識を持った人材を育てていかなくてはならないと思います。そこで、「東工大が動く 世界が変わる」と言われるよう、これまでの伝統と実績を礎(いしずえ)として、さらなる飛躍をはかるべきでしょう。理工系の知により我が国の発展を先導するため、国際的に活躍できる人材育成と社会的課題の解決に挑戦し前進します。
そこで非常に重要なものの一つが、同窓力です。多方面で活躍する同窓生は大学の大きな支えです。蔵前工業会と東工大が共同で大岡山に建設中の“東工大蔵前会館:Tokyo Tech Front (TTF) ”も、今年の春には竣工の運びとなります。
東工大は2011年に創立130周年を迎えます。これを契機として、教育・研究・貢献の3つの柱で“科学と技術で未来を創造する”を起点として、「東工大130」事業を有意義に展開します。東京駅に隣接するサピアタワー8階に開設しました東工大オフィスに、東工大基金募金本部を設置して活動に入ります。蔵前工業会を中心として結成いただいた“東工大基金支援会”が大きな支えです。
2008年の英タイムズによる世界大学ランキングで、東工大は 2007年の90位から世界61位へ、テクノロジー系で21位に上昇しました。日本の大学では、総合4位、テクノロジー系で2位です。エコノミスト誌の評価では、主要410社への就職率が全大学中で首位でした。東工大をますます発展させるために、大学力(教育力、研究力、学生力、経営力、組織力、国際発信力、社会・産業貢献力、同窓力、文化・スポーツ力)をますます高め、我が国の発展と世界のために貢献せねばなりません。美術や音楽など芸術系の講義により,学生に広がりを提供する世界文明センターの活動も活発に展開されています。学生諸君もがんばっていて、2008年には、混声合唱団コールクライネスは全日本合唱コンクールにおいて11年連続金賞という快挙を成し遂げました。国際バイオコンでは金賞を得ました。東工大が始めたロボコンも19回を数え、ブラジルでの開催に参加しました。本学のスーパーコンピューティングコンテストも好評で、2008年の大会では、本学が誇るスパコン“TSUBAME”を高校生諸君が使い、本学附属高校チームも2位を獲得しました。
先にも述べましたが、東工大を素晴らしい大学、すなわち、勉強してよかった、研究できてよかったと思われる大学にしたいのです。今年も厳しい環境は続くでしょうが、大学は社会のアンカーとして、重々しくかつ活力の源泉の役割を粛々として果たさねばなりません。東工大の原点をもとにして方向性を皆様と一緒に作っていきましょう。以下のようなものがヒントになると思います。
