東工大について

平成26年度 学部 学位記授与式式辞

平成26年度 学部 学位記授与式

本日、ご来賓ならびに本学役職員・部局長のご列席のもと、本学大岡山キャンパスにおいて、平成26年度学部学位記授与式を挙行できますことは、本学全構成員の大きな慶びでございます。晴れて学士の学位を授与された諸君、おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。海外からの留学生の皆さんは日本での勉強と研究を無事終えられほっとなさっておられると思います。そして、本日ご列席のこれまで学業を支えておいでになりました保護者の皆様には深く敬意を表したく存じます。

今日、2015年3月26日、新しい学士が1,110名誕生しました。将来に大きな可能性を秘める諸君が、新たな学位取得者として本学の歴史に新しいページを開くことは、大学にとりましても大きな慶びです。

学部を卒業し、就職して企業等で仕事に従事される皆さん、大学院に進学する皆さんはそれぞれに夢と希望を持って将来をみつめていることと思います。学生生活を終え、社会人となる皆さんは日本一の理工系総合大学である東京工業大学の卒業生としての誇りを持って、そして身に付けた専門基礎力をベースにして与えられた業務に果敢に取り組むとともに、柔軟な思考力を身に付けて様々な場面で社会貢献を果たすべく、気概を持って前進していただきたいと思います。そしてこれから大学院へ進学する皆さんは、これまでの学部での学びで培った基礎力をもとにさらなる専門力を高め、2年後、あるいは5年後には社会人として我が国の、そして世界の人間社会の持続可能な発展に資するため、新しい社会を切り拓く役割を果たすことが求められます。これまでの延長として学生生活を続けるのではなく、将来自分をもっとも活かせる活躍場所、役割とそれに対する夢を育てながら充実した大学院生活を送ってほしいと願っています。

さて、現在我が国の政府や産業界は科学技術の素養を持つ若い世代に大きな期待を寄せています。20年前の1995年以降、我が国は「科学技術基本計画」を策定して、5年ごとに国として育てて行くべき科学技術分野や課題と、その実現を担う人材育成の方針を明確にしてきました。そして科学技術についての我が国の予算はこの計画に基づいて編成されて来ました。第4期の基本計画が答申されたのは2010年ですが、その翌年2011年3月にあの東日本大震災が起こったために、当初から計画されていた環境・エネルギー分野とライフサイエンス分野等の重点施策に急遽災害復興に資する科学技術分野が大きな柱として組み込まれました。そして来年2016年・平成28年から第5期の科学技術基本計画がスタートするため、ここにどのような施策を盛り込むかの議論が進んでいて、今年年末にはその計画が策定されることになります。現在検討されている第5期基本計画において最も重視されている点の一つは「科学技術分野におけるイノベーションの創出」のためのシステム作りと、人材育成です。イノベーション、革新という言葉はすでに皆さんの頭に入っていると思います。しかし、現存する技術が越えられない壁を打ち破りその技術が大幅に改善する、いわゆるブレークスルーという意味も含まれるでしょう。しかし現在真剣に検討されているイノベーション創出の意味はまったく新しい価値を生み出すために新規の発想と複数の技術を組み合わせて社会実装することにより社会に大きな変化を起こすことです。このような事例が我が国で実現したことは少なく、我が国の産業競争力を強化するために、また人間社会に新しい価値を生むために必要であるとの認識があるのです。その分かり易い例でよくあげられるのは半導体など内部の部品はほとんど日本製であっても、我が国からスマートフォンは生まれなかったということになります。

すなわち、専門分野、年齢、立場が違う科学技術に携わる若手人材が人文科学や社会科学を専門とする人たちを交えて柔軟な考え方と自由な発想をぶつけ合うことで新しい価値、イノベーションを生み出せるようになるためにはどのような環境が必要かを国全体で考えていく必要があるというのが大きな課題と なっているのです。皆さんへの期待がこの意味においても大きいことを分かっていただきたいと思います。

今日東工大から羽ばたく皆さんはこのような社会からの期待に応え、信頼される人間となるために、自信を持って何事にも積極的に挑戦していただきたいと思います。教養を含めた幅広い知識と柔軟な考え方、グループで作業が出来る協調性等々幅広い能力を付けるための努力を惜しまず、本学の卒業生がグローバル社会において世界のトップレベルの若者たちと力を併せて持続可能な社会を作り、守り、そして人々が平和で幸福に暮らせる環境を作り出すことに貢献してくれることを願っています。

最後に、皆さんの明るい未来を心から祈って式辞といたします。

平成27年3月26日
東京工業大学長 三島良直