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平成26年度 大学院 学位記授与式式辞

平成26年度 大学院 学位記授与式

本日、ご来賓ならびに本学役職員・部局長のご列席のもと、本学大岡山キャンパスにおいて、平成26年度大学院学位記授与式を挙行できますことは、本学全構成員の大きな慶びでございます。晴れて修士、専門職学位および博士の学位を授与された諸君、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。海外からの留学生の皆さん、日本での勉強と研究を無事終えられほっとなさっておられると思います。そして、ご列席のこれまで学業を支えておいでになりました保護者の皆様には深く敬意を表したく存じます。

本日、修士の学位記を授与される修了者は1,480名、専門職学位記を授与される修了者は31名、博士の学位記を授与される修了者は219名です。将来に大きな可能性を秘める諸君が、新たな学位取得者として本学の歴史に新しいページを開くことは、大学にとりましても大きな慶びです。

修士あるいは専門職学位を手にされ、これから社会人としての新しい人生をスタートする皆さんにとっては長い学生生活を終え、まったく新しい環境に身を置くことになります。何より本学修士卒の皆さんに対する企業の期待は大きく、それだけにそれに応えていくためには日々の努力の積み重ねが重要です。初めは与えられた仕事こなすだけで精一杯になるのもやむを得ないと思いますが、経験を積み重ねるほどに、常に業務報告に際してはその先の進め方についての提案等のプラスアルファを提示できるよう心がけ、また週末などの時間を利用して企業経営の基礎、語学力、教養等を身に付けていくなど、企業という組織の中でいかに自分を磨くかに主体的に取り組んでいただきたいと思います。

博士後期課程に進学される皆さんの大半は修士論文で取り組んだ研究テーマを発展させ、さらなる研究能力の進化に取り組むことと思います。科学技術の奥深さを体感し、時間をかけてこれと向き合う貴重な時間を過ごされることでしょう。その中で取り組んだ一つの研究課題に対して、収集した実験データや調査資料に対する考察の繰り返しから説得ある独自の見解を論文としてまとめた成果と、そこまでのプロセスを全うしたことに対する資格としての学位が与えられます。したがって、博士学位記を本日手にされる皆さんは、これからはアカデミアで引き続き研究や教育に当たるか、企業等で研究者としてキャリアを積むかに関わらず、学位取得のために取り組んだ課題とは異なる新たな課題に挑戦し、これを解決するために必要な要素とプロセス遂行に対して資格を身に付けていることを自覚し、自信を持って力強く能力を発揮してほしいと思います。

さて、昨今我が国のポスドクを含めたいわゆる博士人材が社会の様々な分野でもっと活躍してほしいと言う期待から、博士号を持つ人たちにより幅広い科学技術の知識や応用力、グループで仕事をするための協調性など、博士論文に関連する研究業績以外の能力を養成する必要が指摘されてきました。そのような状況のもとで現在我が国の政府や産業界はこれまで以上に強く科学技術の博士人材に大きな期待を寄せています。我が国の「科学技術基本計画」は国として育てて行くべき科学技術分野や課題と、その実現を担う人材育成の方針を5年ごとにこれまで4期、20年にわたり明確にしてきました。そして科学技術についての我が国の予算はこの計画に基づいて編成されて来ました。来年2016年・平成28年から第5期の科学技術基本計画がスタートするため、ここにどのような施策を盛り込むかの議論が進んでいます。現在検討されている第5期基本計画において最も重視されている点の一つは「科学技術分野におけるイノベーションの創出」のためのシステム作りと、人材育成です。ここでいうイノベーションとは、画期的な発明を言うのではなく、まったく新しい価値を生み出すために新規の発想と複数の技術を組み合わせて社会実装することにより社会に大きな変化を起こすことです。海外、特に米国においてはシリコンバレーから発出したIntel、Apple、GoogleやFacebookなどの多くの新規ICT企業はこの意味で象徴的です。しかし、このような事例が我が国で実現したことは少なく、我が国の産業競争力を強化するために、また人間社会に新しい価値を生むために必要であるとの認識が背景にあるのです。

すなわち、専門分野、年齢、立場が違う科学技術に携わる若手人材が人文科学や社会科学を専門とする人たちを交えて柔軟な考え方と自由な発想をぶつけ合うことで新しい価値、イノベーションを生み出せるようになるためにはどのような環境が必要かを国全体で考えていく必要があるというのが大きな課題となっているのです。本日博士号を取得される皆さん、そしてこれから博士後期課程に進学する皆さんばかりではなく、これから社会人となって企業で活躍する皆さんにもこのような意味での期待が寄せられていることを分かっていただきたいと思います。

皆さんは日本一の理工系総合大学である本学の大学院修了生です。そのことを胸に、社会に出る人、博士後期課程に進学する人、それぞれに自覚と熱意をもって、世界を見ながら誇り高く、自分自身の新しい価値を育むための挑戦に取り組んでください。舞台は世界です。私は、そして東工大はいつも皆さんを応援しています。

最後に、皆さんの明るい未来を心から祈って式辞といたします。

平成27年3月26日
東京工業大学長 三島良直