東工大について

平成27年度 大学院 学位記授与式式辞

平成27年度 大学院 学位記授与式式辞

本日、ご来賓ならびに本学役職員・部局長のご列席のもと、大岡山キャンパスにおいて、平成27年度大学院学位記授与式を挙行できますことは、本学全構成員の大きな慶びでございます。晴れて修士、専門職および博士の学位を授与される皆さん、おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。海外からの留学生の皆さん、日本での勉強と研究を無事終えられほっとなさっておられると思います。そして、ご列席のこれまで学業を支えておいでになり、この日を迎えられましたご家族の皆様には深く敬意を表したく存じます。

本日、修士の学位記を授与される修了者は1,505名、専門職の学位記を授与される修了者は29名、博士の学位記を授与される修了者は214名です。将来に大きな可能性を秘める皆さんが、新たな学位取得者として今年創立135周年を迎える本学の歴史に新しいページを開くことは、大学にとりましても大きな慶びです。

修士あるいは専門職の学位を手にされ、これから社会人としての新しい人生をスタートする皆さんは、これまで長い学生生活を終え、まったく新しい環境に身を置くことになります。本学出身の皆さんへの企業等からの期待は特に大きいことを自覚し、それに応えていくために日々の努力の積み重ねが重要であることを胸に刻んでほしいと思います。初めは与えられた仕事こなすだけで精一杯になるのもやむを得ないと思いますが、経験を積み重ねるほどに、正確で説得力のある業務報告を提示できるよう、そしてさらにその先の進め方についての提案等を提示できるよう心がけてほしいと思います。すなわち、常に与えられた仕事をこなすだけではなく一歩先を目指しつつ進んでほしいと思います。さらに週末などの時間を利用して企業経営の基礎、語学力、教養等を身に付けていくなど、企業という組織の中でいかに自分を磨くかに主体的に取り組み挑戦し続けていただきたいと思います。

博士後期課程に進学される皆さんの大半は修士論文で取り組んだ研究テーマを発展させ、さらなる研究能力の進化に取り組むこととなります。科学技術の奥深さを体感し、時間をかけてこれと向き合う貴重な時間を過ごされることでしょう。その中で取り組む研究課題の目的と意義への理解を深めつつ、得られた結果の意味するものについて、指導教員や研究室の仲間たち、そしてその分野の学外の研究者たちとの忌憚のない意見交換を通して説得ある独自の見解を論文としてまとめていくプロセスを身に付けてください。博士の学位は特定の分野の研究論文としての価値だけではなく、そのプロセスを全うしたことに対する資格として与えられるものです。

本日、博士の学位記を手にされる皆さんは、これからはアカデミアで引き続き研究や後進の教育に当たるか、企業等で研究者としてのキャリアを積んでいかれることでしょう。特に企業においては学位取得のために取り組んだ課題とは異なる新たな分野、課題に挑戦することと思います。今述べたように博士とは新たな課題解決に臨みこれを解決するために必要な要素とプロセス遂行に対して資格を身に付けていることを自覚し、自信を持って力強く能力を発揮してほしいと思います。博士を修了する皆さんは本学が輩出する科学技術人材の最高峰であることを忘れずに世界を舞台に社会貢献を果たして行くことを期待しています。

さて、この4月にスタートする第5期の科学技術基本計画は第4期後半から様々な関連委員会の検討をベースとして、内閣府の総合科学技術イノベーション会議が昨年1年以上をかけて設計し、今年1月末に閣議決定されました。その内容は多岐にわたりますが、大きく3つに分けるとすれば、1)現在我が国が抱えている経済・社会的課題への対応、2)未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組、そして3)その両方に必要な科学技術イノベーションを生み出す仕組みとこれを担う人材育成がその骨格です。これまでの第4期までの取り組みと比較して第5期基本計画の特徴といえるのが2つめの「未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出に向けた取り組み」です。近年ICTの進化等により、社会・経済の構造が日々大きく変化する「大変革時代」の到来といわれています。

このように将来に向けての見通しが立ちにくい中で我が国が産業競争力を維持・強化して持続可能で安心・安全な社会を構築していくためには、未来の産業創造や社会変革に国として先見性を持って戦略的に取り組んでいかなければなりません。したがって第5期科学技術基本計画では自らが大きな変化を起こし大変革時代を先導していくことを目指すため、非連続なイノベーションを生み出すための取組を進めるとしているのです。このような考え方が国の政策として示される中で、科学技術をベースとして、これからの社会での貢献を果たそうとしている皆さんへの期待は大変に大きなものがあります。すなわち、科学技術イノベーションを生み出すために重要と考えられるプロセスの一つに専門分野、年齢、立場が異なる科学技術に携わる若手人材が人文科学や社会科学を専門とする人たちも交えて柔軟な考え方と自由な発想をぶつけ合うことが挙げられています。新しい価値、非連続なイノベーションが生むと期待されるこのような環境を醸成するにはどのような仕組みが必要かを国全体で考えていく必要があるということも今期の科学技術基本計画に書き込まれています。本日、博士の学位を取得される皆さん、そしてこれから博士後期課程に進学する皆さんの他、これから社会人として企業で活躍する皆さんすべてにこのような意味での気概と果敢な挑戦に期待が寄せられていることをしっかりと自覚していただきたいと思います。

皆さんは日本一の理工系総合大学である東京工業大学の大学院修了生です。そのことを胸に、社会に出る人、博士後期課程に進学する人、それぞれに自覚と熱意をもって、世界を見ながら誇り高く、自分自身の新しい価値を育むための挑戦に取り組んでください。舞台は世界です。私は、そして東工大はいつも皆さんを応援しています。

最後に、皆さんの明るい未来を心から祈って式辞といたします。

平成28年3月28日
東京工業大学長 三島良直