東工大について

平成28年度 学部 学位記授与式式辞

平成28年度 学部 学位記授与式式辞

本日、ご来賓ならびに列席の本学役職員、部局長とともに大岡山キャンパスにおいて、平成28年度学部学位記授与式を挙行できますことは、本学全構成員の大きな慶びでございます。晴れて学士の学位を授与される皆さん、おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。海外からの留学生の皆さんは日本での勉強と研究を無事終えられ、ほっとなさっておられると思います。そして、本日ご列席のこれまで学業を支えておいでになり、この日を迎えられましたご家族の皆様には深く敬意を表したく存じます。

学部を卒業し、就職して社会人となられる皆さん、大学院に進学する皆さんはそれぞれに夢と希望を持って将来をみつめていることと思います。学生生活を終え、社会人となる皆さんは日本一の理工系総合大学である東京工業大学の卒業生としての誇りを持ち、そして本学で培った専門基礎力をベースにして、与えられた業務に果敢に取り組むとともに、柔軟な思考力をもって様々な場面で社会貢献を果たすべく、気概を持って前進してください。

これから大学院へ進学する皆さんは、これまでに培った専門基礎力をもとにそれぞれの分野での専門力を高め、2年後、あるいは5年後には社会人として我が国の、そして世界の人間社会の持続可能な発展に向けて、新しい社会を切り拓く役割を果たす気概を身につけた人材に育つことを期待しています。これまでの延長として学生生活を続けるのではなく、将来自分を最も活かせる活躍場所と役割に対する夢を意識しながら充実した大学院生活を送ってほしいと願っています。

さて、昨年秋に本学の大隅栄誉教授が2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞いたしました。これにより大隅栄誉教授はもとより、東京工業大学までも、我が国のみならず世界中から注目が集まり、賞賛される栄誉を享受することができました。今ここに学部を卒業する皆さんも、またご家族の皆様もさぞかし誇らしい思いを胸にされたことと思います。受賞にあたり大隅栄誉教授は機会あるごとに基礎研究の重要性を訴えていることは皆さんの多くが受け止めていらっしゃると思います。受賞の対象はオートファジーというすべての生物細胞内で営まれるたんぱく質の分解と合成の仕組の解明についての研究の成果ですが、何より誰も取り組まなかったこの自然現象についての謎解明に取り組んだ大隅栄誉教授の着眼点のオリジナリティと、忍耐強い研究の姿勢が高く評価されたと私は理解しています。過去30年間に渡る努力の経過を通して「この研究が何かの役に立つのか」ということは考えたことがなかった、との大隅栄誉教授の言葉には、誰もがその純粋な科学者の魂に心打たれたのではないでしょうか。我々は大隅栄誉教授が長年に渡り取り組み続け、ノーベル賞を授与された業績の意味を改めて皆さんとともに心に刻みたいと思います。

そしてその一方で科学技術人材にはより良い人間社会を作るために早急に解決しなければならない技術課題に取り組むべき役割があります。地球温暖化の抑制に必要な再生可能エネルギー技術の開発、地震など大規模自然災害の予知あるいは被害低減のための技術開発、安全な食料や水資源の確保など取り組むべき課題は多く、またそれらは地球上の全地域に共通です。国境を越え、文化を超えて世界の若者たちとすぐにもこれらの課題に取り組むのが皆さんです。また近年の急速な情報技術の展開によりこれまでの発想を超えて築かれていくであろう未来社会に備えるために必要な科学技術にも取り組む必要があります。今急速に進展する人工知能技術はこれからの人間社会を大きく変えることが予想されていて、20年後にはその技術により今ある人間がする仕事の50%が代替されるという話も聞こえています。その時代の社会を創り、支えていくのも皆さんなのです。

さあ、今日東京工業大学から羽ばたく皆さんは科学技術の様々な分野において、これらの社会からの期待に応え、信頼される人間となるために、自信を持って何事にも積極的に挑戦してください。教養を含めた幅広い知識と、柔軟な考え方、グループで仕事が出来る協調性等々、幅広い能力を付けるための努力を惜しまず、東工大の卒業生が世界のトップレベルの若者たちと力を合わせて新たな知を創出し、持続可能な社会を作り、守り、そして人々が平和で幸福に暮らせる環境を作り出すことに貢献してくれることを信じています。

最後に、皆さんの明るい未来を心から祈って式辞といたします。

平成29年3月27日
東京工業大学長 三島良直