ドイツのビアガーデンから、花咲かじいさんの国へ。(シュツッツガルト大学)

氏名: 今飯田佳代子
所属: 総合理工学研究科人間環境システム専攻 修士2年

学生寮の裏庭:多くの学生が散歩やジョギング、サイクリングを楽しんでいます。 学生寮の裏庭:多くの学生が散歩やジョギング、サイクリングを楽しんでいます。

クリスマスマーケット:シュツッツガルトは国内最大のクリスマスマーケットが開催されることで有名です。 クリスマスマーケット:シュツッツガルトは国内最大のクリスマスマーケットが開催されることで有名です。

春祭のビアホール:4月にはオクトーバーフェストの春版のお祭りがあります。(左が著者) 春祭のビアホール:4月にはオクトーバーフェストの春版のお祭りがあります。(左が著者)

私は、総合理工学研究科人間環境システム専攻修士2年の学生で、現在ドイツのシュツッツガルトで都市計画を学んでいます。交換留学なので1年間という短期間の滞在ですが、私はこの交換留学の魅力は何と言っても外から日本を見つめるきっかけを得られることだと思います。海外へ行って文化の違いを体験する、とはありきたりな表現に聞こえるかもしれませんが、ドイツの風土をより深く知りドイツについて考えることは同時に日本を相対化するプロセスでもあり、気づくと「一方、日本では?」と考えている自分がいます。

"Ein Bier bitte. (アイン・ビア・ビッテ)" ビールのおかわりを注文するこのフレーズは、間違いなくドイツ中どこへ行ってもよく耳にするドイツ語だと思います。木陰のベンチに腰掛けて大きなジョッキを交わしビールを飲む人々の姿を見ていると温かい気持ちになりますし、私自身もビアガーデンで友人とゆったりと過ごす時間は本当に気持ちの良いものです。そんなビアガーデンに関して私がとても驚いたことがあります。それは1999年にバイエルン州の州政府が発表したユニークな法律です。その中でビアガーデンは、木々に囲まれた中庭のような雰囲気を持ち、訪れる人々は自分たちの家から食べ物を持って来てよい場所として定められているのです。バイエルン州の人々が、ビアガーデンを彼らの良き伝統的文化として認識しそれを継承する枠組みを作っていたことに、私は感心してしまいました。

日本の都市部に、このように心地良い時を過ごせる場所はあるでしょうか?東京は世界的に見ても、モノも人も大変なスピードで動いている忙しい都市です。利便性が高くサービスの質も良いという一方で、多くの人が自分たちの作り出したそのスピード感に疲れてしまっているようにも見えます。この先遠くない将来、人口減少がより顕著になるにつれ、首都東京でさえもその空間規模は縮小され、空地が増えるだろうと考えられています。都市計画に関わる複雑な問題はさておき、私はそんな東京の空地に対してひとつ楽しい提案を考えました。今よりもっと桜の木を増やしてみたらどうでしょう。春になると都市部の至る所で桜が咲き乱れ、人々は思わず笑みがこぼれます。休日はもちろん、通勤・通学の足取りも軽くなるに違いありません。そこかしこで花見を楽しむ春の情景を思い描いた時、形は違えども日本にも心地良い時間を享受する良き文化があることに気づきました。ドイツにとってのビアガーデンは日本にとっての花見である、と言っては少し強引かもしれませんが、そのくらいそれぞれの国によく合い深く根付いている伝統的文化であると思います。私は自国の文化の価値を正しく理解した上で、人々が心地良く暮らせる日本をつくっていきたいです。

Tokyo Institute of Technology Bulletin No.27 (2012年8月)