SIYSS:世界の若手研究者との交流を通して

大村智先生(中央)とともに。大橋匠さん(左)、笹森瞳さん(北海道大学)(右)

大村智先生(中央)とともに
大橋匠さん(左)、笹森瞳さん(北海道大学)(右)

氏名:
大橋 匠
学年:
博士後期課程1年
所属:
大学院総合理工学研究科
物理電子システム創造専攻

毎年12月、ノーベル賞授賞式に合わせてストックホルム国際青年科学セミナー(SIYSS: Stockholm International Youth Science Seminar)がスウェーデンのストックホルムで開催されます。ノーベル財団協力の下、スウェーデン青年科学者連盟が主催するこのセミナーには、さまざまな方法で選抜された若手研究者25名が世界各国から集い、約1週間の日程でノーベル賞授賞式、ノーベル賞受賞者による講演などの諸行事に参加し、また、現地の高校生約500名に向けて自身の研究発表を実施します。日本からは毎年2名の学生が、国際科学技術財団を通じて派遣され、2015年度の代表として本学学生が選ばれ参加しました。

より多くの刺激を求めて

私は将来、新興国で教育に携わる仕事をしたいと考えています。東工大に3年次編入学するまでは、自らの経験を還元し幅広い選択肢を学生に提供できる教員を目指していました。しかし、東工大グローバル理工人育成コース在籍中に海外インターンシップを実施したことにより、その方向性は大きく変わりました。日本の代表として派遣された先は、アジア最貧国の1つと言われるバングラデシュの水道公社。3ヵ月間の現地生活で学んだことは、目の前にある様々な問題の根は深く、「今の自分では何もできない」という厳しい現実でした。これに大きな衝撃を受けた私は、教育に携わる者として、ただ単に選択肢を示すだけでは不十分であり、自分に何か1つでも強みが必要であることを強く感じました。その強みを基に未来を描くことの重要さに気付いた私は、科学技術の分野でより多くの刺激を受け、世界の優秀な学生と濃密な時間を過ごすことで考え方の幅を広げたいと考え、本セミナーに応募し、その貴重なチャンスを得ることができました。

世界の若手研究者との交流を通して

本セミナーではさまざまなイベントが企画されていますが、そのうちの1つに、グループに分かれて科学倫理に関する課題を議論し、発表するという「倫理セミナー」がありました。そこで私は、国際的な教養に非常に長け、自らの意見をしっかりと持ち発信できる参加者の力を目の当たりにし驚嘆しました。非常に難しい課題で時間の制約があったにも関わらず、一人ひとりが自らのバックグラウンドや知識から、緻密に意見を構築しようとする姿勢にとても感心しました。それは、常日頃からさまざまなことにアンテナを張り、情報を得て、そしてそれを自分の中で咀嚼している結果であるようにも感じました。世界の動きに関心を持とうと心掛けていたのにも関わらず、自分の興味関心の範囲はまだまだ狭く、より広範な視野を持つ必要があることを実感した瞬間でした。

大村智博士からのメッセージ

今回のセミナー参加で感慨深かった経験がもう1つあります。2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智博士とお話する機会を得たことです。私が海外の人々に重きを置いたプロジェクトを実行するために最も重要なことは何かと尋ねると、大村博士は「人との繋がり」と仰っていました。「自分ひとりじゃだめ。周りの人との縁や繋がりが大事」、人との繋がりこそが成果を育む土台であり、研究は人との繋がりに生かされているのだと。研究を通して、アフリカなど多くの国々に住む人々を救った大村博士のその言葉から、「新興国で教育」という自分の大きな目標に向かうには、1人でできることはあまりにも小さいことを再認識しました。自分がどのように大きな目標に対して関わりたいのかを明確にする必要性を強く感じ、今後のキャリア形成の上で非常に大きな指標となりました。

かけがえのない経験

ノーベル賞受賞者や世界各国から集まった学生との交流から、本当にたくさんの刺激を受け、そして多くを学びました。授賞式で、大村博士と梶田博士が表彰されるときは鳥肌が立ち、同じ日本人として誇りに思うばかりでした。このような素晴らしい機会を頂けたことに心から感謝し、ここで学んだことを活かしながらこれからも目標に向けて一歩一歩進んでいきたいと思います。

セミナー参加学生とホストしてくれた現地大学生
セミナー参加学生とホストしてくれた現地大学生

写真:公益財団法人 国際科学技術財団

Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 41 (2016年2月)