科学を考えること、そして伝えること(ケント大学)

氏名: アミール偉
所属: 社会理工学研究科人間行動システム専攻 野原研究室の博士課程1年
ケント大学での所属: 生物学専攻理学修士課程 Science, Communication and Societyコース

キャンパスの様子。右手に見えるのが図書館です キャンパスの様子。右手に見えるのが図書館です

国際交流ディナーにて。後列左から2番目がアミールさん 国際交流ディナーにて。後列左から2番目がアミールさん

授業風景 授業風景

ケント大学で科学コミュニケーション学んでいる現在、私はその基礎的な知識と方法を少しずつ得ています。といっても、「科学コミュニケーション」という言葉を聞いたことがないという方も多いかもしれません。簡単に説明すると、「人々と社会の中に『科学』を普及させていく」といった感じでしょうか。様々な専門分野が互いに絡み合っている、とても興味深い学問です。授業では、私たちが実際の科学コミュニケーションで実践できるようなアプローチ方法や考え方が出せるよう、様々な観点を取り入れながら議論をしています。例えば、この春の学期には「サイエンス・オンザバス」という新しいプロジェクトが立ち上がり、現在準備をしています。これは、ケント大学で研究されている科学を、バスの乗客に興味を持ってもらおうというポスターキャンペーンで、多くの議論や準備に時間を割いています。何よりも、実際にこういった活動を市内バスの中で実践できるということが、非常に興味深いです。

大学院の授業を受けていくなかで、日本と英国の大学院の大きな違いが見えてきました。1つは、英国では自分の仕事をする一方で、週に1・2回の授業に出席をする30代、40代、50代の学生が多くいることです。単位のシステムは日本とは多少違うかもしれませんが、1つの授業で30単位が得られるので、こういった学生でも無理なく授業に出席することができます。私のコースにもそのような学生が2人いて、1人は中学校の非常勤の教員、そしてもう1人は、なんと5人のお子さんを産み育てている女性なのです。彼らの意見を聞くことは、私たちのような若い20代の学生にとって新たな価値観や刺激を得ることが出来、たいへん勉強になります。

もう1つ大きな違いがあります。それは授業中に、私達自身の考えや意見、そしてそこに至った過程を教員が常に聞いてくることです。そしてそこで徹底的に議論をします。授業では、学生にとって自分の考えを発表する機会が数多くあり、発表の手法はプレゼンであったり、グループ討論の中であったり様々です。私はこのような形式の授業は学生にとって非常に大切だと思います。なぜなら、発表の準備をすることそのものが、授業に関連する様々なトピックを自分が理解する手助けになるからです。さらにその準備のために、参考資料を読んだり、他の学者の意見を分析したり、さらには他の学生と議論するなかで、より深い意味がわかってきます。さらにいえば、授業中の討論が他者の視点や考え方を私たちに気づかせてくれ、新たな発見やより深い考えの構築につながっていきます。

最後になりますが、イギリスに渡ってからの最初の1か月は、様々なカルチャーショックの連続でした。しかしそれらをより注意深く観察していくなかで、人々の行動には、異なる文化的な背景が必ず土台になっているのだということがわかってきました。そういった、自分と異なる背景を持つ人々と接することは、私に新たな視点を与えてくれ、同時に私の視野を広げてくれます。この留学は非常に価値があると感じていますし、もしこれから留学するかどうか迷っている学生がいれば、私は留学することを勧めます。決し後悔することはないでしょう!

Tokyo Institute of Technology Bulletin No. 21 (2011年3月)