国際交流

ウプサラ大学・東工大 合同シンポジウム

国際共同研究を目指して、スウェーデンのウプサラ大学と合同シンポジウムを開催しました

東工大は、世界に貢献できる理工系人材育成と革新的科学技術創出を担う「世界最高の理工系総合大学」を目指し、教育・研究の国際化に取り組んでいます。その一環として、2014年9月16日~17日、スウェーデンのウプサラ大学にて、東工大とウプサラ大学の合同シンポジウムを開催しました。
東工大とウプサラ大学は、このシンポジウムを端緒として相互の研究交流を図るとともに、今後の教育や研究における相互協力を推進していきます。

ウプサラ大学とオングストローム研究所

ウプサラ大学本館 内観 ウプサラ大学本館 内観

ウプサラ大学は1477年に創立した北欧最古の大学です。世界大学ランキングでも100位以内に名を列ねるヨーロッパ屈指の大学のひとつです。また、シンポジウムの会場となったオングストローム研究所は、微小な長さの単位に使われるオングストローム(1 Å=10-10m)で知られているウプサラ大学のオングストローム教授の名前を冠した物理学の高名な研究所です。ノーベル物理学賞を親子で受賞したX線分光学のジーグバーン父子もこのオングストローム研究所で教授を務めていました。オングストローム研究所には、生命系を除く数学、物理、化学、工学などの学科を持つ理工学部があります。

ウプサラ大学本館 ウプサラ大学本館

オングストローム研究所 オングストローム研究所

合同シンポジウム開催

ウプサラ大学と東工大を繋げたのは、大学院社会理工学研究科価値システム専攻の池上雅子教授でした。池上教授は、ウプサラ大学で博士号を取得しており、ウプサラ大学と同じスウェーデンのストックホルム大学の教授を務めていたこともあります。
ウプサラ大学側では、池上教授の旧知で元理学部長およびスウェーデン王立科学アカデミー物理学分野議長のグンナー・インゲルマン教授にシンポジウム発足と準備に多大な御尽力をいただききました。
池上教授とウプサラ大学との関係をきっかけに東工大とウプサラ大学の合同企画がスタートし、両大学の注目の研究者たちが5つの分野にわたり講演を行う合同シンポジウムが実現しました。

池上雅子教授池上雅子教授

グンナー・インゲルマン教授グンナー・インゲルマン教授

ウプサラ大学・東工大 合同シンポジウム

合同シンポジウムは「エレクトロニクス・材料科学分野」「物理・核科学分野」「生命科学分野」「環境・再生可能エネルギー関連分野」「産学連携と外部資金獲得」の5つの分野において、東工大・ウプサラ大学の研究者が講演を行いました。

エレクトロニクス・材料科学分野

エレクトロニクス・材料科学分野では、東工大フロンティア研究機構の細野秀雄教授による鉄系超伝導体と室温安定なエレクトライドの開発及び最新の研究成果に関する講演から始まり、東工大からはその他に大学院総合理工学研究科物質電子化学専攻の菅野了次教授、大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻の森健彦教授、大学院理工学研究科物性物理学専攻の村上修一教授が研究発表を行いました。ウプサラ大学からは、細野教授とも旧友であるクラエスゴラン・グランクヴィスト シニア教授による光と空気に関わる室内環境に優しい材料とデバイスについての講演(ラース・オスターランド教授との共同)のほか、ビプラブ・サンヤル博士、シリ・ザング教授、クリスティーナ・エドストローム教授、フリドリッヒ・マグナス博士らによる5件の研究発表が行われました。

細野秀雄教授細野秀雄教授

クラエスゴラン・グランクヴィスト シニア教授クラエスゴラン・グランクヴィスト
シニア教授

物理・核科学分野

竹下健二教授
竹下健二教授

物理・核科学分野では、東工大原子炉工学研究所の竹下健二教授が、原子力廃棄物処理に関する最近の研究成果を発表し、長期に放射能毒性を示す放射性核種の分離と核変換処理によって、核のゴミの短期無毒化が可能であることを示しました。
ウプサラ大学からは、エリクソン教授による核融合システムの中性子診断技術、エカルネ教授による核融合と核分裂をハイブリッド化した発電技術に関する研究が発表されました。
新しい原子力技術について前向きなウプサラ大学側と東工大の論議は白熱し、両大学の連携によって、この分野の新展開が期待できると考えられます。

生命科学分野

ウプサラ大学には、超遠心機を開発したスヴェドベリ教授、電気泳動の研究者ティセリウス博士(両名ともノーベル化学賞を受賞)といった生命科学研究に欠かせない分析手法を編み出した研究者がいます。
シンポジウムは東工大フロンティア研究機構の大隅良典栄誉教授によるオートファジー研究の講演から始まり、ウプサラ大学のヨハン・エルフ教授による細胞内でのタンパク質の動態を1分子レベルで解析する手法の紹介、大学院生命理工学研究科生体分子機能工学専攻の田口英樹教授による「タンパク質世界の理想と現実」と題したタンパク質の構造形成(フォールディング)研究の現状についての講演が行われました。

大隅良典栄誉教授 大隅良典栄誉教授

ヨハン・エルフ教授
ヨハン・エルフ教授

環境・再生可能エネルギー関連分野

柏木孝夫特命教授
柏木孝夫特命教授

東工大ソリューション研究機構の柏木孝夫特命教授から、日本のエネルギー基本計画について、特に、水素の導入や電力改革により分散電源が進むことなどの詳細な説明がありました。ウプサラ大学からは、薄膜フィルムを採用した高効率太陽電池の紹介やエネルギーの蓄積におけるナノ材料の役割などの紹介がありました。
再生可能エネルギー開発を推進するスウェーデンの政策的推進力と、日本の卓越した再生可能エネルギー技術とは、優れて補完的です。シンポジウムにはこの分野の若い研究者や学生が多く参加し、環境・エネルギー関連分野に関するスウェーデン側の関心の高さが現れていました。ウプサラ大学が進める海洋エネルギーについて東工大から共同研究の提案もあり、国際共同研究の具体化が期待できる分野です。

産学連携と外部資金獲得

ウプサラ大学から、企業と大学の共同研究の手法について、企業からのニーズを確実に理解するために研究者と企業が直接対話をするAIMDay(ディスカッションの日)の仕組みが紹介されました。また、EUの推進する科学技術支援制度Horizon2020の紹介があり、先進的な共同研究に対して補助金が適用可能であることが説明されました。

合同シンポジウムの成果

三島良直学長(当時)とウプサラ大学エバ・アケッソン学長 三島良直学長(当時)と
ウプサラ大学エバ・アケッソン学長

このシンポジウムにおいて、大学間交流の進展を約する基本合意書(Letter of Intent)が締結されました。また、細野秀雄教授とクラエスゴラン・グランクヴィスト シニア教授、そして池上雅子教授とウプサラ大学のミカエル・フーク地球科学部准教授が共同研究覚書(MOU)に署名しました。

これらを受けて、東工大とウプサラ大学は具体的な国際共同研究に向けての作業が進みつつあります。
材料科学分野においては計算科学と材料研究の共同研究を模索しています。また、ウプサラ大学のミカエル・フーク教授が2014年11月に東工大に来学し、環境政策についての研究セミナーを開催しました。

研究者間の信頼関係を基盤に大学全体で多面的な交流を推進し、関係構築を重ねていくことにより、国際共同研究を加速させ東工大の研究力の一層の強化を図っていくことが期待されます。

ウプサラ大学・東工大 合同シンポジウム開催

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2015年1月掲載

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東京工業大学 総務部 広報課

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