研究

東工大ニュース

折り曲げられる太陽電池の変換効率を大幅に高める技術を開発

2009.03.03

要約

 本学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻の谷岡明彦教授と松本英俊特任准教授,坪井一真特任助教を中心とする研究グループは,柔らかくて折り曲げ可能な太陽電池の光電変換効率を大幅に高める技術を開発した.
 柔らかくて折り曲げ可能な太陽電池として現在,色素増感型と呼ばれる太陽電池が脚光を浴びている.色素増感型ではその名前の通り,色素を使った太陽電池である.特定の色素は,太陽光を吸収すると電子を放出する.この現象を利用する.色素増感型の太陽電池は,従来商用化されているシリコン太陽電池に比べると製造が簡単で低コスト化が可能,プラスチック基板を使えば柔らかく折り曲げられるといった特長を備える.

研究の内容,背景,意義,今後の展開等

 本学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻の谷岡明彦教授と松本英俊特任准教授,坪井一真特任助教を中心とする研究グループは,柔らかくて折り曲げ可能な太陽電池の光電変換効率を大幅に高める技術を開発した.
 柔らかくて折り曲げ可能な太陽電池として現在,色素増感型と呼ばれる太陽電池が脚光を浴びている.色素増感型ではその名前の通り,色素を使った太陽電池である.特定の色素は,太陽光を吸収すると電子を放出する.この現象を利用する.色素増感型の太陽電池は,従来商用化されているシリコン太陽電池に比べると製造が簡単で低コスト化が可能,プラスチック基板を使えば柔らかく折り曲げられるといった特長を備える.

 これまで研究されてきた色素増感型太陽電池には,ヨウ素電解液を対向電極基板で挟んだ湿式と呼ばれる太陽電池セルが使われてきた.一方の電極基板は透明電極になっており,酸化チタンの微粒子を堆積してある.酸化チタンの微粒子表面に色素(通常はルテニウム錯体)を塗布する.外部の光が透明電極を透過して色素に当たり,色素が放出した電子が酸化チタン微粒子を伝搬して透明電極に達することで発電する.酸化チタンの微粒子を使うのは,微粒子だと表面積が大きくとれるので色素を塗布する面積を大きくできることと,酸化チタンが導電性を備えた安価な材料であることによる.
 ただしこの構造には,光電変換効率がシリコン太陽電池に比べて低いという弱点がある.酸化チタンの抵抗値が比較的高く,電流が流れにくいからだ.酸化チタンの微粒子間に存在する結晶粒界が,抵抗値を高めてしまう.

 谷岡明彦教授と松本英俊特任准教授,坪井一真特任助教を中心とする研究グループは元々,カーボンナノファイバーと呼ぶ炭素の微細な繊維を研究していた(図1,図2).厚さが数十μmのシート状のカーボンナノファイバーは高い導電性を備えている.このことから,折り曲げ可能な色素増感型太陽電池の電極基板に応用できると考えた.
 そして色素を塗布する材料に,酸化チタンと同様に安価で,酸化チタンよりも抵抗値の低い酸化亜鉛を選び,カーボンナノファイバーの表面に酸化亜鉛を極細のワイヤ(ナノワイヤ)状に成長させた(図3).この構造に電解液と対向電極を組み合わせて太陽電池を試作し,実際に太陽電池として動作することを確認した.電解液はヨウ素電解液,色素はルテニウム錯体,対向電極は白金電極である.
 試作した太陽電池の光電変換効率は1.2%とまだ低い.ただし今回は初めての試作なので,改良の余地は十分にある.今後の改良によって発電変換効率を大きく高めることが期待できる.

 なお本研究は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構) により東工大に創設されたナノファイバーイノベーション創出NEDO特別講座の研究活動の一環である.

図1 シート状のカーボンナノファイバー.指で簡単に折り曲げられる

図1 シート状のカーボンナノファイバー.指で簡単に折り曲げられる

図2 ナノファイバー(極細のファイバー状)の製造方法.電界紡糸法(エレクトロスピニング法)と呼ばれ,常温・常圧でナノファイバーの連続製造が可能.ポリマーのナノファイバーを炭化してカーボンナノファイバーを作る

図2 ナノファイバー(極細のファイバー状)の製造方法.電界紡糸法(エレクトロスピニング法)と呼ばれ,常温・常圧でナノファイバーの連続製造が可能.ポリマーのナノファイバーを炭化してカーボンナノファイバーを作る

図3 カーボンナノファイバーに酸化亜鉛のナノワイヤーを成長させたところ.成長には気相成長法を用いた

図3 カーボンナノファイバーに酸化亜鉛のナノワイヤーを成長させたところ.成長には気相成長法を用いた