研究

東工大ニュース

多種多様なRIビームのスピンを操作する新手法を開発

2012.10.24

【本研究成果のポイント】

  • あらゆるRIビームのスピンの向きを整列させることが可能に
  • 従来の手法に比べて有効なスピン操作の測定効率が50倍以上に拡大
  • 新たな基礎物理学の発見や物質科学の応用に期待

 

【概要】

 理化学研究所(野依良治理事長)と東京工業大学(伊賀健一学長)は、あらゆる種類の放射性同位元素(RI)※1ビームのスピン※2の向きを、効率よく一定方向にそろえる手法を開発しました。これにより今まで困難だったRIの詳細な性質の解明だけでなく、RIビームをスピンの供給源として用いる物質科学などへ応用が可能になります。これは、理研仁科加速器研究センター(延與秀人センター長)偏極RIビーム生成装置開発チームの上野秀樹 チームリーダー、市川雄一 元 基礎科学特別研究員(現 東京工業大学特任助教)らを中心とする国際共同研究グループ※3の成果です。
 理研仁科加速器研究センターは、2007年に世界最先端のRIビーム供給施設であるRIビームファクトリー(RIBF)※4を本格稼働させました。RIBFが供給できるRIビームの数は、史上最多の約4,000種にものぼると予想されていますが、スピンの向きを一定方向に揃える"有効なスピン操作"が行えるビームは、そのうちわずか数十種類だけでした。
 スピンがそろった有効なスピン操作ができるRIビームを得るためには、スピンの向きを整列させる「スピン操作効率」と、スピンがそろったRIビームの「収量」という2つの要素を同時に満たさなくてはなりません。通常、向きのそろったスピンを抽出するためには、RIビームの成分のうち不要なものを排除しますしかし、不要な部分のみを排除することは難しく、必要な成分も同時に排除してしまうため結果的にRIビームの収量は減ってしまうという問題がありました。
 そこで研究グループは、このように相反する2つの要素を両立させる新たなスピン操作法「分散整合2回散乱法」を開発しました。RIの生成反応を2段階にしてスピン操作効率の向上を図りつつ、さらに、スピンがそろったRIビームだけを抽出するスリットの数を2つから1つに減らして生成過程で起きるロスを減らし収量の減少を最小限にしました。RIBFで行われた本手法の実証実験では、スピンの操作効率と収量で決まる有効なスピン操作の測定効率が、従来に比べ50倍以上になることが明らかになりました。
 RIビームは、その種類の多様性からさまざまな用途が開発されつつあります。RIBFという世界最高性能のRIビーム供給能力と、本手法による有効なスピン操作を組み合わせることによって、生成可能な「スピン操作RI」の種類が格段に増えることになります。例えば、RIBFで利用可能な全ビームは平均で約10倍、特にウランビームの場合は約50倍に増加します。これにより、未知のRIの詳細な性質に関する基礎研究が進展し、新たなRIビームをスピン供給源として用いることで物質科学などの応用研究の可能性が大きく広がることが期待できます。
 本研究成果は、英国の科学雑誌『Nature Physics』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(10月21日付け:日本時間10月22日)に掲載されます。

詳細はこちら⇒ プレスリリースPDFファイル

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