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ピコ秒レベルで変化する有機結晶の構造の撮影に成功

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公開日:2013.04.18

【ポイント】

  • 生命体などの有機分子がピコ秒(1兆分の1)で起こす構造変化を直接観測する手段がなかった。
  • 「超短パルスレーザー」と「高輝度超短パルス電子線」を組み合わせた分子動画技術で有機光電子材料の超高速な結晶構造変化を直接観測した。
  • 人工光合成反応の観察や、有機太陽電池の設計などの新材料作り、たんぱく質の機能解析にも新たな道を開く。

【概要】

JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京工業大学 大学院理工学研究科の恩田健 流動研究員と同研究科の腰原 伸也 教授は、有機光エレクトロニクス材料の中で起きる分子の移動や変形を、2兆分の1秒の時間分解能(撮影間隔は10兆分の1秒)を持つ電子線を用いた直接的な結晶構造解析法(分子動画)により明らかにしました。これまで、柔軟性を持つ有機分子で、超高速に起こる構造変化の直接的観測手段は、100億分の1秒程度までしかなく、新しい光反応物質の開発や光生物学的な現象解明の妨げになってきました。
本研究では、「超短パルスレーザー」と「高輝度超短パルス電子線」を組み合わせた分子動画技術を新たに開発しました。そして、超高速光スイッチ材料として近年注目されている有機電荷移動錯体結晶(EDO-TTF)2PF6について、光を照射した時の結晶内での分子の変形や移動を直接的に明らかにしました。これは、有機光エレクトロニクス材料の超高速な結晶構造変化を動画技術で直接観測した初めての例となります。また、ここで用いた小型の分子動画技術は、有機光エレクトロニクス材料のみならず、人工光合成など有機物からなるさまざまな新規材料や、たんぱく質など有機生体機能分子の機能解析・新材料設計にも新たな道を切り開くものになると考えられます。
本研究は、カナダ・トロント大学(ドイツ・マックスプランク研究所 兼任)のR.J.D.ミラー 教授のグループ、京都大学の矢持 秀起 教授のグループ、名城大学の齋藤 軍治 教授との共同研究により行ったものです。 本研究成果は、2013年4月18日(英国時間)発行の英国科学誌「Nature」に掲載されます。

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