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細野秀雄教授がNIMS賞を受賞

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公開日:2013.05.09

フロンティア研究機構の細野秀雄教授が2013年度 NIMS賞を受賞しました。
高性能ディスプレイを実現したIGZO-TFTの発明、常識を覆した鉄系超伝導体の発見、元素戦略の先駆けとなった研究の世界的インパクトを評価されたものです。

【NIMS賞とは】

NIMS賞は、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)が主催し、毎年、世界トップレベルの研究者が集まり、材料科学・ナノテクノロジーの観点から様々な問題を議論し、最新の研究成果を発表する国際会議「NIMSコンファレンス」が、物質・材料に関わる科学技術において優れた業績を残し、かつNIMSの発展に多大な貢献をした研究者に授与する賞です。

【研究分野】

無機材料科学、透明酸化物半導体、ナノポーラス機能材料、無機光・電子材料、超伝導物質、磁気共鳴

【研究成果の名称】

酸化物を主体とする固体中の電子を活かした新機能の開拓

【研究成果の概要とNIMSへの貢献】

透明で半導体になるアモルファス酸化物
アモルファス透明酸化物半導体(Transparent Amorphous Oxide Semiconductor; TAOS)の提案(1995)、その物質設計指針の提示(1996)と実証(2002)を経て、TAOSの一つであるIn-Ga-Zn-O(IGZO) で、これまで使われてきたアモルファスシリコンに対し約20倍高い電子移動度を持つ薄膜トランジスタ(TFT)を2004年に報告した。IGZO-TFTはタブレット端末やスマートフォン、大型有機ELテレビ等に搭載される高解像度ディスプレイへの採用が拡大している。

電気が流れるセメント
アルミナセメントの成分の1つである12CaO·7Al2O3(C12A7)結晶のかご(ナノポーラス)構造の特殊性に着目し、酸素イオンを強制的に電子に置換することで、電気伝導状態を絶縁体から半導体(2002年)、金属(2007年)、超伝導(2007年)へと変えることに成功した。さらに、新しい透明導電膜、高輝度電子放出源、有機発光TV用高性能電極、アンモニア合成触媒などの機能を開拓した。

鉄系超伝導物質
鉄を含む化合物は大きな磁気モーメントをもつため、超伝導の発現には極めて不向きと信じられてきた中、鉄を主成分とする層状オキシニクタイドにおいて比較的高い転移温度(26K、高圧下で43K)を示したことから、世界中に大きなインパクトを与えた。さらに、多彩な母物質、多バンド由来のペアリング機構や高い磁場下でも大きい電流密度を保てるなど、物性研究と実用の両面で大きな可能性を秘めており、新大陸の発見と形容される大きな拡がりをみせている。

NIMSへの貢献
細野教授はこれまで、アドバイザリーボードメンバー等の立場でNIMSの研究の内容や進め方を含め多岐の項目に亘って的確かつ真摯な助言を行ってきた。このことは、NIMSが国内外で広く認知されるようになり、また高く評価されるようになる上で、多大な貢献を果たしたと言える。また、これまでに数多くの政府系研究助成プロジェクトに携わってきたことから、物質・材料分野を代表する一人として日本の科学技術政策への寄与は大きく、NIMSの今後にとっても様々な形での貢献が大いに期待される。

今回の受賞をうけ、細野教授は次のようにコメントしています。

「受賞の連絡を頂きビックリしました。NIMSは日本のこの分野のハブで、素晴らしい成果を連綿と輩出し続けている組織です。このような組織から受賞者に選定して頂き光栄です。私がリーダを努めておりますFIRSTや元素戦略PJのキーメンバーとしてNIMSの研究者に参画頂いており、連携を密にして一層の成果を挙げたいと思います。」

詳しくはこちら ⇒ 独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)のページへ

フロンティア研究機構 細野秀雄教授

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