研究

東工大ニュース

二酸化チタンの光触媒活性を決める因子を発見

2014.06.05

要点

  • 二酸化チタン結晶表面での光励起キャリアのダイナミクスをリアルタイムで観測することに成功し、光触媒活性を決める因子を発見。
  • 未解明であったアナターゼ型とルチル型二酸化チタンの触媒活性の違いが、光励起キャリアの結晶表面に固有な寿命に起因することを証明。
  • 光触媒活性を簡便に制御する方法を提案。

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の小澤健一助教、東京大学物性研究所の松田巌准教授と山本達助教、上智大学理工学部の坂間弘教授らの研究グループは、光触媒(注1)である二酸化チタン(TiO2)結晶の表面における光励起キャリア(注2)の振舞いをリアルタイムで観察し、キャリア(電子と正孔)寿命(注3)が触媒活性を決定する重要な因子であることを発見した。

TiO2 にはルチル型とアナターゼ型という原子構造が異なる結晶型が存在し、アナターゼ型の方が高活性だが、両型の触媒活性の差はこれまで未解明だった。今回の研究により、アナターゼ型の結晶表面でのキャリア寿命がルチル型結晶に比べて10 倍以上も長いことが原因であることを突き止めた。触媒表面の化学処理により光励起キャリアの寿命を制御する手法が、より高性能の光触媒を開発するために有効であることが示唆された。

研究ではTiO2 が半導体であることに着目し、半導体に特有な現象である表面光起電力(注4)をナノ秒スケールで追跡することで、結晶表面の光励起キャリアを捉えることに初めて成功した。実験は、大型放射光施設SPring-8 の東京大学放射光アウトステーションビームライン「BL07LSU」で、紫外光レーザーと軟X 線放射光を組合せた時間分解光電子分光装置を用いて行った。

本研究成果は、2014年5月16日にアメリカ化学会の速報誌「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー・レターズ(The Journal of Physical Chemistry Letters)」オンライン版に掲載された。

論文情報

Electron-Hole Recombination Time at TiO2 Single-crystal Surfaces: Influence of Surface Band Bending, Kenichi Ozawa, Masato Emori, Susumu Yamamoto, Ryu Yukawa, Shingo Yamamoto, Rei Hobara, Kazushi Fujikawa, Hiroshi Sakama, and Iwao Matsuda, The Journal of Physical Chemistry Letters, 2014, 5, pp 1953-1957
DOI: 10.1021/jz500770couter

用語説明

(注1) 光触媒 :
光照射下で化学反応を促進する物質で、自身は反応前後で変化しない。バンドギャップを持つ半導体の一部が光触媒作用を示す。
バンドギャップより大きなエネルギーを持つ光を半導体に照射すると、価電子バンドの電子が伝導バンドに励起され、価電子バンドには電子が抜けた孔ができる。励起電子と価電子バンドの孔(正孔)を総称して光励起キャリアと呼ぶ。
光励起キャリアが生成してから消滅するまでの時間。キャリアは電子と正孔が再結合することで消滅する。
表面ポテンシャルのある半導体表面で光励起キャリアが生成すると、ポテンシャルの電場勾配に沿ってキャリアが移動する。その結果、結晶表面と内部の電荷のバランスに偏りが生じて電位が発生する。これが表面光起電力である。

図 アナターゼ型とルチル型TiO2 の光励起キャリア寿命が、表面ポテンシャル障壁の高さにどのように依存しているかを示した図。アナターゼ型の線がルチル型より常に上側にあるということは、同じ障壁の高さで比べるとアナターゼ型のキャリア寿命が長いことを意味する。

お問い合わせ先
大学院理工学研究科物質科学専攻
助教 小澤健一
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