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高分子の「かたち」をつくる「匠の技」のブレークスルー

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公開日:2014.07.08

高分子の「かたち」をつくる「匠の技」のブレークスルー
-K3,3グラフ構造高分子の合成に成功-

要点

  • 高分子の「かたち」をつくる「匠の技(ものつくり技術)」の新展開
  • ユニークなトポロジー幾何学的性質のK3,3グラフ構造高分子の合成
  • 高分子合成化学から生化学・トポロジー幾何学まで広いインパクト

概要

東京工業大学大学院理工学研究科の鈴木拓也元大学院生、山本拓矢助教、手塚育志教授らの研究グループは、同研究グループが開発した高分子反応プロセス (ESA-CF法、 用語1) を用い、複雑な構造の多環状高分子(図1)の合成に成功した。

このうち特に「K3,3グラフ構造」(図1、用語2)は、「非平面グラフ」としてのトポロジー幾何学的性質が知られ、また最近、ユニークな生理活性を示す環状オリゴペプチド構造としても確認されたことから広く注目されている。高分子合成化学領域だけでなく生化学からトポロジー幾何学にまでインパクトを与えるものと期待される。

今回の研究では、単一サイズの六分岐テレケリクス(用語3、図2)を新規に設計・合成しESA-CF法を用いて、 ナノスケールのK3,3グラフ構造高分子とその構造異性体を合成した。次いで両者の流体力学的体積(サイズ)の違いに着目してリサイクルSEC分取(用語4)を行い、目的とするK3,3グラフ構造高分子の単離を達成した。

この研究成果は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン速報(Just Accepted Manuscripts)で6月23日に掲載された。

用語説明

(用語1)ESA-CF法
カチオン性テレケリクスと多価アニオンとの静電相互作用による自己組織化を利用し、単環状・多環状などの複雑なトポロジー高分子を選択的に合成する手法。

(用語2)K3,3グラフ構造
図1に示す非平面(頂点を結ぶ辺の交叉が避けられない)グラフ。したがって、ガス・水道・電気の3種類のラインを3軒の家に交差しないようにつなぐことはできない。

(用語3) テレケリクス
末端に官能基を有する高分子。

(用語4)リサイクルSEC分取
高分子化合物をその大きさ(サイズ)によって分離する技術。

掲載雑誌名、論文名および著者名

掲載雑誌名:
米国化学会誌Journal of the American Chemical Society
論文名:
Constructing A Macromolecular K3,3 Graph through Electrostatic Self-Assembly and Covalent Fixation with A Dendritic Polymer Precursor
著者:
Takuya Suzuki, Takuya Yamamoto, and Yasuyuki Tezuka
DOI:

K<sub>3,3</sub>グラフと関連する複雑な多環状縮合構造高分子の「かたち」(青色の「かたち」は、これまでに報告されたもの、また赤色は今回の論文で報告したもの。なお緑色には、六分岐テレケリクスの末端の連結様式を示している。)
図1. K3,3グラフと関連する複雑な多環状縮合構造高分子の「かたち」
(青色の「かたち」は、これまでに報告されたもの、また赤色は今回の論文で報告したもの。
なお緑色には、六分岐テレケリクスの末端の連結様式を示している。)

六分岐テレケリクスのESA-CF法を用いたK<sub>3,3</sub>グラフ構造高分子の構築
図2. 六分岐テレケリクスのESA-CF法を用いたK3,3グラフ構造高分子の構築

お問い合わせ先

東京工業大学 大学院理工学研究科
有機・高分子物質専攻 教授 手塚育志
TEL: 03-5734-2498
FAX: 03-5734-2876
Email: ytezuka@o.cc.titech.ac.jp

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