東工大ニュース
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公開日:2015.02.12
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻の奥住聡助教と竹内拓特任准教授、工学院大学の武藤恭之助教の研究グループは、惑星形成の母体である原始惑星系円盤[用語1]を貫く磁場の強度が、ある上限値を持つことを理論的に解明した。さらに、天文観測から示唆される原始星の磁場強度、および原始惑星系円盤から中心星へのガスの供給率が、本研究の理論的予言によって統一的に説明できることを明らかにした。
我々の住む地球をはじめとする惑星は、原始惑星系円盤と呼ばれるガス状の円盤(星雲)の中で形成されると考えられている。このような円盤がどのように形成され、どのように消失していくのかを明らかにすることは、天文学・惑星科学における重要な研究課題となっている。
近年の理論研究によって、原始惑星系円盤の進化を引き起こす主な原動力は、円盤ガスと星間磁場[用語2]との相互作用である可能性が明らかになってきた。しかし従来、円盤を貫く磁場の強さは観測的な制約が乏しく、磁場が円盤の進化を引き起こすという理論シナリオを検証することは困難となっていた。
奥住助教らのグループは、磁場の円盤内輸送に対する「平均場モデル」と呼ばれる理論を用いて、原始惑星系円盤を貫く磁場の強度に対して、ある上限値が存在することを理論的に導いた。この理論モデルは1990年代に提唱されて以降、数学的に厳密な解が未知であったが、本研究ではコンピューターによる数式処理を駆使して厳密解を導くことに成功し、これが磁場強度の上限の発見につながった。
さらに、近年の円盤進化モデルを用いて、この上限値から予想される原始惑星系円盤のガス降着率[用語3]を算出したところ、天文観測から示唆されるガス降着率の範囲をよく説明することが明らかになった。磁場強度の上限値の存在は、若い星がその母体である分子雲コアに比べて非常に小さな磁束量を持つこととも調和的である。
本研究成果は原始惑星系円盤の磁場強度に対して具体的な予言を与えるものであり、惑星を育む原始惑星系円盤が磁場の影響によってどのように進化するかを解明するための重要な手がかりとなることが期待される。また、磁場を介して進化するガス円盤は、中性子星の周りや銀河中心核にも存在すると考えられており、本研究成果はこのような高エネルギー帯での物理現象にも応用が期待される。
用語説明
[用語1] 原始惑星系円盤 : 形成直後の若い星を取り囲む、ガスと塵からなる円盤。
[用語2] 星間磁場 : 星と星の間の空間に存在する磁場。典型的な強度は1~10マイクロガウス(1マイクロガウス=0.1ナノテスラ)。
[用語3] ガス降着 : 原始惑星系円盤から中心星へガスが流出する現象。円盤の消失を引き起こすメカニズムの一つと考えられている。ガス降着率とは単位時間あたりのガスの流出量を表す。
本研究で導かれた原始惑星系円盤の大局的鉛直磁場の最大値(実線)。赤線・青線・緑線は観測から示唆される最大の定常円盤ガス降着率をもたらすのに必要な磁場強度の理論値。星印は若い星の典型的な磁場強度を表す。
論文情報
論文タイトル : |
Radial Transport of Large-scale Magnetic Fields in Accretion Disks. I. Steady Solutions and an Upper Limit on the Vertical Field Strength |
掲載誌 : |
The Astrophysical Journal 785, 127 (2014) |
DOI : |
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著者 : |
Satoshi Okuzumi1, Taku Takeuchi1, and Takayuki Muto2
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所属 : |
1東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻、2工学院大学基礎・教養教育部門
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問い合わせ先
大学院理工学研究科地球惑星科学専攻
助教 奥住 聡
Email : okuzumi@geo.titech.ac.jp
TEL : 03-5734-2616