東工大ニュース

「スポーツする楽しさ、スポーツ科学の面白さ」を学生と学ぶ

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公開日:2015.04.06

リベラルアーツが動き出す シリーズ講演会 第6回 開催報告

「東工大発、世界を見据えたリベラルアーツとはなにか。」多彩なゲストを迎え、さまざまな視点から考えていく全7回の講演会シリーズです。東工大は現在教育改革を進めており、2016年4月から新しい教育がはじまります。この改革の取り組みのなかで、東工大の教養、語学、健康教育などを司る「リベラルアーツ研究教育院」が同じく2016年4月に発足します。この講演会シリーズは同研究教育院の発足に向け、準備を進めている同研究教育院ワーキンググループが、スーパーグローバル創成支援事業の支援を受け、実施しています。

このシリーズ講演会は主に東工大の大学院生、教職員を対象としていますが、今回の講演会は一般にも公開されました。

第6回
日時
3月16日(月)15:45~17:15
場所
西8号館10F大会議室
タイトル
「スポーツする楽しさ、スポーツ科学の面白さ―教養として、専門として」
講師
彼末一之(早稲田大学教授、大阪大学名誉教授)

東工大出身で現在は早稲田大学スポーツ科学学術院教授の彼末一之教授が登壇し、生理学から脳神経科学、スポーツ科学にわたる話題を、自身の体験を交えながら分かりやすく語りました。

講義テーマを話す彼末一之教授の様子
講義テーマを話す彼末一之教授の様子

なぜ運動をするのか? 運動は健康によい?

講師の彼末一之教授の講義風景

講師の彼末一之教授の講義風景

なぜ人は運動をするのかを考えるにあたって、彼末教授は生理学のホメオスタシスの概念から説明しました。体温や血圧、代謝等を一定に保つホメオスタシスを維持するには、ホルモンや自律神経の働きに加えて「行動」が必要になります。生きることと運動・スポーツの繋がりはここから始まるとのことでした。

動物が生きていくには、栄養素や水を確保するため、配偶者探索のため等々、「行動」が必要になる理由がいくつもあります。そもそも、人間とは生きることに有利な行動を快感と感じるようになっています。とすれば、運動にも心地よいと思う理由があるはずです。ただし運動が体に良いからと言って、誰もがすぐに楽しく運動ができるわけではありません。持久走が嫌になる、運動が辛くてしたくないという経験をした人も多いでしょう。基本的には、運動を楽しむためにはある程度のレベルに達する必要があり、そこで良いコーチ・指導者の必要性が出てきます。

司会の林直亨教授

司会の林直亨教授

「そこで東工大の出番ではないか」との話から、「体を使って、かつ飽きないゲームの開発ができないだろうか」という提唱がありました。

動かないことが健康に良くないということは明確で、テレビを1時間観ると、21分寿命が縮むという統計の数字があります。そこで彼末教授から「ここまで話を聞いた聴衆の皆さんは、もう寿命が21分は縮みました、ではそれを埋め合わせるために、ストレッチをしましょう」と提案があり、全員が立ち上がって大きく伸びをするという一幕もありました。

スポーツ科学の楽しさ

講師の彼末一之教授の講義風景

講師の彼末一之教授の講義風景

スポーツを「科学する」ことについても実際の事例を交えた興味深い説明が展開されました。「運動神経がよいとはどういうことか?」「女子サッカーの澤選手や卓球の福原選手は何がすごいのか?」という疑問に対しての答えも明かされました。「結局、これは「脳の問題」で、頭の中で上手くイメージを持つことができるかどうかの勝負になります。できない動作はイメージできないのです」と彼末先生は話しました。

また、金メダリストと普通の人を比べて、運動時の脳の働きが違うことを示す実験結果が紹介されました。この他、会場の聴衆がスライドに映し出された手の写真を見て、それが右手か左手かを瞬間的に見分けるという実験が行われ、参加者たちはイメージを持つことの難しさを実感する機会も持つことができました。

今回の講演では、運動・スポーツという切り口で、様々な分野の科学的分析から有意義な結果が導き出せることが語られました。そして「スポーツは科学のまな板に載る」という彼末教授のメッセージが参加者には強く印象に残ったようです。また自分の経験と他人の経験を比べて科学的に分析する視点の重要性など、東工大生が視野を広げて様々な「教養」を身につけることを考える上で、示唆に富んだ話がありました。

ホメオスタシス : 生物および鉱物において、その内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のこと。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

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