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東工大ニュース

カリフォルニア大学バークレー校講師がTA制度について講演

2015.04.20

平成28年度から始まる東工大の新しい教育制度では、学部生から博士課程までの一貫したリベラルアーツ教育を実施する予定です。修士課程1年目に、講義「東工大リーダーシップ道場」を履修した学生が、学部3年目必修科目「教養卒論」のピアレビューアー(査読者)として活動するというダイナミックな教育プログラムを準備しています。

授業全般に当てはまることですが、特にこうしたプログラムでは、学生の学習活動を活性化するために大学院生の教務補佐員(TA)が非常に重要となります。TAとして教え、クラスを活性化することは、大学院生本人にとっても教えることを介して学ぶ機会となります。加えて、研究・教育者としてのキャリア形成や、共同作業のリーダーシップ養成としての実用性もあります。「教養卒論」のピアレビューアーとしての活動は単位取得の要素の一つであり、給与が発生しないため、一般的に言うTAとは異なりますが、同様の狙いのもとで活躍してもらうことになります。

講師のLinda von Hoene先生

講師のLinda von Hoene先生

TAについて先進的な取り組みをしている大学として、カリフォルニア大学バークレー校(UCB)があります。UCBでは、TA(UCBではGraduate Student Instructor: GSIと呼びます)がかなり多くの教育を担当しています。GSI Teaching & Resource CenterがTAの教育・調整・管理を担当しており、全米でも日本でも注目されています。そこでリベラルアーツ研究教育院ワーキンググループは、DirectorのLinda von Hoene先生と、Sabrina Soracco先生とを招き、講演会とワークショップを開催しました。

3月23日にロイヤルブルーホールで開催された講演会には、リベラルアーツ研究教育院所属予定の教員21名に加え、学内外から12名が参加しました。

UCBでのTAの多様な活動と教員による指導・管理体制

アメリカでは1940年代から大きなクラスの弊害が指摘され、対応策としてTAを雇用しました。ところが、「子供が子供を」教えるという批判が学生の保護者から挙がります。そこで、UCBでは1989年にGSIのセンターを設立し、TAの教育活動の改善が開始されました。

講演の様子

講演の様子

現在、UCBでは1学期間に1,800名のTAが活動しています。講義の74%では受講者が30名以下ですが、大きなクラスでは、セクションに分けて複数のTAが対応することもあります。TAを担当する学生は講義プランの作成やオフィスアワーの設定、さらには成績評価まで担当しています。これらは教員の指導下で行われ、TAの指導・管理を行う体制が維持されています。講演後の質疑応答は50分を超える熱のこもったものになりました。

TAの活動の幅が広いこと、その活動が具体的に規定されて、教員がどのように管理するかがしっかりと決められていることなど、TAの有効活用と、TAがどのように成長するのかについて、具体的な話を聞くことができました。これからTAを活用しようとする上で大変有意義な講演会となりました。

TAの効果的な活用に向けて

教員のためのケーススタディー

教員のためのケーススタディー

講演会の後、リベラルアーツ研究教育院所属予定教員を対象としてケーススタディーが行われました。TA、教員、学生の具体的な行動例が練習問題として設定され、問題点、その背景、解決策が話し合われました。TAと教員のコミュニケーションや、TAが行うことを具体的に記述しておくことの重要性が強調されました。

さらに、倫理的な問題や、問題となりそうな行動、ハラスメントとなりそうな行動について、具体例を基に問題点を議論しました。それらの行動を防ぐためにTAにどのような指導をするのが有効なのかについても話し合われました。

良い授業とは何か?学生参加のワークショップ

講演会の翌日、3月24日にロイヤルブルーホールで開催されたワークショップには、学部から博士課程の学生12名が参加しました。「ひきだすスキル」「教えるスキル」を身に着けたい学生が全学から集まりました。講師は、前日に引き続き、UCB GSI Teaching & Resource CenterのLinda von Hoene先生と、Sabrina Soracco先生です。

4名にわかれてのグループワーク

4名にわかれてのグループワーク

テーマは、良い授業とは何かをグループディスカッションを通して考えることでした。グループで考えたことを代表して答えると、すぐにHoene先生にWhy? と聞かれます。講義も質疑も英語ですが、理由を答えるのが難しい質問にも学生はすぐに答えていました。

講師からは、教えることから学ぶことへのパラダイムシフトが起こり、受動的に知識を学習する形態からアクティブラーニングへ変わりつつあるといった説明を受けました。「コースが終わった後に何をできるようになっているのか」を基準に授業を設計することが重要といった、教員にとっても役立つ授業設計について、学生は熱心に聞いていました。

中でも印象的だった話題として、ルーブリック(目安を記し、達成度を評価するスケール)による評価の説明がありました。評価にルーブリックを利用する利点、ルーブリックの形式や、どのようにルーブリックを作成するかについてペアワークやグループワークを通して議論しました。そばで聴講している教員でも考えるのが大変なほどでしたが、学生は緊張も解けてきて、積極的な発言が聞かれるようになりました。

フリーディスカッションの様子

フリーディスカッションの様子

ワークショップ終了後は、参加者でフリーディスカッションを行いました。ワークショップ中には聞けなかったことが次々と質問され、講師の二人も熱心に答えてくださいました。

聴講している教員は、学生の様子を見て、大学院生がTAとして活躍できる教育プログラムの提供が重要であることを再認識しました。東工大の中で「教え合い、学び合う」雰囲気が醸成されれば、学生が主体的に学ぶようになり、学生自らがリーダーシップを持ってクラスを引っ張っていくことが期待できます。その期待が高まると同時に、教員の教育のブラッシュアップが欠かせないことを実感できる有意義なワークショップとなりました。参加した学生にとっても、自分自身の学びや、今後教える現場に活かせる、英語でのアクティブラーニング体験となりました。

東工大教育改革

2016年4月、東工大の教育が変わります。現在推進中の教育改革の骨子と進捗をまとめた特設ページをオープンしました。

東工大教育改革

問い合わせ先

リベラルアーツ研究教育院WG

Email: ila2015@liberal.titech.ac.jp