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第2回オープン創薬コンテストで13個のヒット化合物を発見

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公開日:2015.07.31

  • 標的タンパク質に対しコンピュータ技術を用いて薬のタネとなる化合物を提案し試験する、世界にもほぼ例がないオープン創薬コンテスト
  • 参加グループの提案化合物から約2000個を選び、アッセイ試験[用語1]を実施、標的としたヒトC-Yes酵素[用語2]に対する阻害活性を持つヒット化合物を13個発見
  • 受賞者はベンチャー企業の研究員、博士号取得直後のアカデミア研究員、大学院修士課程学生など

特定非営利活動法人 並列生物情報処理イニシアティブ(IPAB、秋山泰理事長:東京工業大学教授)と東京工業大学学術国際情報センターの関嶋政和准教授らが共同で実施したオープン創薬コンテスト『コンピュータで薬のタネを創る 2』により、標的としたヒトC-Yes酵素に対して阻害活性を有するヒット化合物を13個発見できました。各グループの手法と発見された化合物は、7月17日(金)に東京工業大学大岡山キャンパスで開催する発表会・表彰式で明らかにされました。

同コンテストの最大の特徴は、事前に公開した一つの標的タンパク質に対して、各参加チームがそれぞれのコンピュータ技術を用いて薬のタネとなる候補化合物の予測(IT創薬)を行い、応募された化合物に対して実際にアッセイ試験を実施して、提案された化合物の効果と、予測手法の性能を評価する点です。

第2回オープン創薬コンテストの流れ

同コンテストは、関嶋准教授らの発案で昨年初めて開催され、今回は2回目となります。2014年12月に参加グループを募集し、2015年1月~3月に参加登録と予測の提出を行いました。参加費は無料で、匿名による参加も可能です。参加グループは、事前に指定された約240万種の入手可能な化合物の中から、活性があると予測する化合物の識別番号を答えます。参加における唯一の義務は、用いた手法と得られた結果の公表に同意することです。

提案された化合物の中から、実行委員会(委員長 関嶋政和東京工業大学准教授)が審査委員会(委員長 産業技術総合研究所 広川貴次氏)の助言を受けて約2000化合物を選出し、4月~6月に海外の専門業者への外注によりアッセイ試験を実施しました。その結果、標的としたヒトC-Yes酵素に対して阻害活性を有するヒット化合物を新たに13個発見できました。

今回、ヒット率部門とリガンド効率部門で二つのグランプリを受賞するグループ「IMSBIO」の望月正弘氏((株)情報数理バイオ)は、昨年度の第1回コンテストでもグランプリを受賞していますが、一年間で予測性能の大きな進展が見られました。新規化合物部門でグランプリを受賞する「ソ創」の山本一樹氏(東京大学大学院医学系研究科(当時))は、昨年度は学生奨励賞を受賞した若手研究者です。グランプリに迫る総合成績を出した2つのグループには優秀賞が授与されます。「チーム TSUBAME-2」の安尾信明氏(東京工業大学大学院情報理工学研究科)は修士課程の学生で、昨年度は学生奨励賞を受賞しました。「Gromiha-Velmurugan」のマイケル・グロミハ氏(インド工科大学マドラス校)も昨年度からの参加者であり、各参加グループが前回の結果を参考にして、確実に技術力を高めている様子が見て取れます。

IPABコンテスト『コンピュータで薬のタネを創る2』 発表会・表彰式

  • 日時:
    2015年7月17日(金) 13:00~17:30 (12:30受付開始) 参加無料
  • 場所:
    東京工業大学 大岡山キャンパス 西9号館ディジタル多目的ホール

コンテスト受賞グループ

「 」内は参加グループ名

  • ヒット率部門グランプリ(NEC賞):
    「IMSBIO」 代表者:(株)情報数理バイオ 望月正弘氏

  • 新規化合物部門グランプリ(JBIC賞):
    「ソ創」 代表者:東京大学大学院医学系研究科(当時) 山本一樹氏

  • リガンド効率部門グランプリ(ナミキ商事賞):
    「IMSBIO」代表者:(株)情報数理バイオ 望月正弘氏

  • 優秀賞(シュレーディンガー賞):
    「チームTSUBAME-2」代表者:東京工業大学大学院情報理工学研究科 安尾信明氏

  • 優秀賞(DDN賞):
    「Gromiha-Velmurugan」代表者:インド工科大学マドラス校 マイケル・グロミハ氏

コンテスト受賞者と関係者の記念撮影
コンテスト受賞者と関係者の記念撮影

用語説明

[用語1] アッセイ試験 : 生体分子や細胞などを用いて、影響を調べる試験。バイオアッセイ。今回は、ヒトC-Yes酵素への各提案化合物の阻害活性を、一定濃度、または濃度を変化させて調べた。

[用語2] C-Yes(シーイエス)酵素 : 他のタンパク質をリン酸化する酵素の一種。細胞増殖やがんとの関連性が知られるほか、ウエストナイルウイルスの増殖にも関係する可能性が報告されている。

問い合わせ先

特定非営利活動法人 並列生物情報処理イニシアティブ(IPAB)

理事長 秋山泰
Email : office@ipab.org
Tel : 03-5734-3645(秋山) / 03-5830-3819(事務局)

コンテスト実行委員長 東京工業大学学術国際情報センター

准教授 関嶋政和
Email : sekijima@gsic.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3325

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

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