東工大ニュース
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公開日:2015.08.17
東京工業大学大学院総合理工学研究科の沖野晃俊准教授と神戸大学大学院医学研究科の東健教授は、3Dプリンターを用いた大気圧低温プラズマジェットの開発に成功した。 従来の機械加工では作成が困難な直径3.7mm、重さ3.5g、チタン製の小型大気圧低温プラズマジェットをチタンで造形し、高強度なプラズマを安定的に生成できることを確認した。
3Dプリンターによる造形は設計の自由度が高いことを生かし、小型化と高い処理効果を両立したプラズマ装置の開発を実現した。微細部の表面処理や内視鏡治療などに用いる医療機器への応用が期待される。
この成果は7月31日に米国物理学協会(AIP)の学会誌「AIPアドバンス(Advances)」で発表された。
3DプリンターはCADの設計により、継ぎ目のない鎖や複雑な水路、切削加工では不可能な微小な構造などが金属や樹脂で精密に造形できる。本研究ではこの3Dプリンターを用い、従来の機械加工では作成が困難な直径3.7mm、重さ3.5g、チタン製の大気圧低温プラズマ源を開発した。
3Dプリンターは小型の放電電極の中に微細な水冷チャンネルを配置するなどの自由な加工ができるため、放電部の小型化とプラズマの高強度化を両立できる。また用途に合わせたプラズマ生成部の構造を短時間かつ安価に設計・作成できるため、表面処理などの産業応用のみならず、医療用機器としての利用も期待できる。
現在、大気圧低温プラズマは室温~100℃程度の低温でありながら高い活性力を持つ活性種を生成できるため、表面親水化による接着性向上、細菌やウイルスなどの殺菌、血液凝固、植物の成長促進など様々な効果が報告されている。さらに、放電損傷のない、手で触れるプラズマも生成可能なため、生体殺菌や手術時の止血などへの応用も検討されている。
しかし、従来は金属や樹脂を旋盤やドリルなどの機械加工でプラズマ生成部を作成していたため、小型化や設計の自由度に制限があり、微小でかつ高強度なプラズマ装置を製作することは困難だった。
例えば、内視鏡の鉗子口は内径3.7mm前後であるため、内視鏡下でプラズマを使用するためには、それよりも細いプラズマ装置を作成する必要がある。これに対し、東工大の沖野准教授らは、世界に先駆けて金属の3Dプリンターを用いてプラズマ生成部を試作し、高強度なプラズマを安定に生成することに成功した。図1上は窒素のプラズマジェット、下は内視鏡の鉗子口にこのプラズマジェットを組み込んだ写真である。
図1.
上:窒素プラズマ 下:内視鏡に組み込んだ様子
窒素プラズマのほかにアルゴンやヘリウムのプラズマも生成できる。また、生成されるプラズマは室温程度の低温であり、図2のように熱損傷なく生体に照射処理することができる。
図2.
プラズマ生成部が微小であることから、従来の機械加工では製作が困難であった複雑な構造や屈曲した構造を持つプラズマ装置の開発ができる。小型化だけでなく、通常の大きさのプラズマ装置の電極内に水冷機構を配置するなど、3Dプリンターの様々な応用が期待できる。
論文情報
掲載誌 : |
AIP Advances, 5, 077184 (2015). |
論文タイトル : |
Atmospheric nonequilibrium mini-plasma jet created by a 3D printer |
著者 : |
Toshihiro Takamatsu, Hiroaki Kawano, Hidekazu Miyahara, Takeshi Azuma and Akitoshi Okino |
DOI : |
問い合わせ先
大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻
准教授 沖野晃俊
Email : aokino@es.titech.ac.jp
Tel / Fax : 045-924-5688
東京工業大学 広報センター
Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661