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第33回蔵前科学技術セミナー「活発化する火山列島・日本~東工大の取り組み」開催報告

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公開日:2015.11.30

本学の全学同窓会である蔵前工業会主催、東京工業大学並びに東京工業大学火山流体研究センター共催で第33回蔵前科学技術セミナーを開催しました。今回は、「活発化する火山列島・日本~東工大の取り組み」と題して、10月24日の午後東工大蔵前会館のくらまえホールにて行われ、参加者276名が熱心に聴講しました。

石田義雄理事長
石田義雄理事長

三島良直学長
三島良直学長

蔵前工業会の石田義雄理事長と東京工業大学の三島良直学長の挨拶に引き続き、東京工業大学火山流体研究センターの小川康雄教授、野上健治教授、神田径准教授、寺田暁彦講師、東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻の高橋栄一教授、5名の教員による講演が行われました。火山観測研究の歩みと成果を紹介するとともに、御嶽山噴火や草津白根山など活発化の科学的な検討状況、および富士山の将来の噴火活動について詳細に説明がありました。

当日の立て看板
当日の立て看板

会場の様子
会場の様子

1.「活発化する火山列島序論」

小川康雄教授

東京工業大学火山流体研究センター草津白根火山観測所長
小川康雄教授

プレートテクトニクスとマグマの発生、火山の噴火様式に関する基本的な概念について説明がありました。小川康雄教授は「プレートは、マントル対流が上昇する中央海嶺で形成され、冷却され厚みを増して日本列島下に沈み込みます。それがマントル中に水を運び、マントルの融点を下げ、マグマを発生させます。マグマの組成、とくにシリカの含有量は重要で、シリカが多く粘性の高いマグマは爆発的な噴火をします。」と解説しました。御嶽山、箱根大涌谷、草津白根山のように、マグマが直接噴出しない水蒸気爆発をする火山もあることなどを紹介しました。

2.「我が国における火山研究と東工大の果たしてきた役割」

野上健治教授

東京工業大学火山流体研究センター 野上健治教授

東工大の火山観測研究の歩みと成果を紹介しました。野上健治教授は「火山活動はエネルギーと物質の持続的放出現象であり、地震や地盤変動などの力学的現象の観測のみならず、気体・液体・固体として放出される物質の観測は火山活動のモニタリングには不可欠です。」と話しました。東工大では、世界に先駆けて火山ガスの採取・分析法を確立し、化学組成と噴気温度の関係を明らかにするなど、1950年代から基礎研究・理論研究に加えて、全国の火山で地球化学的観測研究に取り組んできたことを述べました。

3.「電磁場から探る火山の内部」

神田径准教授

東京工業大学火山流体研究センター 神田径准教授

電磁場を利用した地下構造探査法について事例を交えて解説しました。火山体の内部構造を知る地下構造探査法として、自然の電磁場を利用した地磁気地電流法(MT法)について解説しました。「MT法は、地表における電磁場の観測から、地下の比抵抗の分布を推定する手法です。比抵抗は、物質の電気の流れにくさを表す物性値で、火山体を構成する岩石は一般に電気を通しにくいが、マグマや火山体内に存在する熱水および熱水変質岩石は低い比抵抗値を示します。」と解説しました。事例として、阿蘇山・口永良部島・立山などで推定された比抵抗構造について紹介しました。

4.「空中と地中から探る火山の内部~御嶽山噴火・草津白根山の活発化」

寺田暁彦講師

東京工業大学火山流体研究センター 寺田暁彦講師

草津白根山の活発化と接近不可能な御嶽山の噴火口を如何に観測したか紹介しました。寺田暁彦講師は「草津白根山の活動火口のごく近くに精密な観測装置を展開し、24時間観測を続けてきた結果、火口近傍の複数の傾斜計によって、火口の地下浅部へ熱水が流入してゆく様子を捉えることができました。また、御嶽山の噴火では、ドローンに多様なセンサを搭載して山麓から火口までの調査飛行を試みた結果、火山ガス組成や温度などの貴重データを取得することに成功ました。」と火山観測の技術的な側面を語りました。

5.「富士山は噴火するか」

高橋栄一教授

東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻
高橋栄一教授

富士火山のマグマだまりの実験的再現と過去1万年間の活動史をもとに富士火山の将来の噴火活動について解説しました。高橋栄一教授は「2011年3月11日の巨大地震の影響で日本列島の火山の多くが活動を再開する準備段階にあると推察されます。」と話しました。東工大の高橋研究室では、内熱式ガス圧装置を用いて富士火山宝永火口から1707年に噴火したマグマの溶融実験を高温高圧で行い、玄武岩マグマが深さ25kmのマグマだまりから噴出したことを明らかにしました。富士火山の過去1万年間の活動史、地震トモグラフィーから推定される地下深部の構造、高温高圧実験から推定されるマグマ溜りの熱的状態などの情報を総合し、富士火山の今後の活動予測について説明しました。

講演後、ロイアルブルーホールにて行われた交流会には、76名の参加があり、講演した教員を囲んで質疑応答が繰り広げられました。講演会・交流会を通して、参加者にとって活発化する火山列島・日本の現状を把握する有意義な機会となったようです。

お問い合わせ先

一般社団法人蔵前工業会
Email : kuramae@kuramae.ne.jp
Tel : 03-3748-2211 / Fax : 03-3748-2213

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