東工大ニュース
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5月11~14日にかけて、国際影響評価学会(以下、IAIA :International Association for Impact Assessment)の第36回年次大会「IAIA16大会」が名古屋市の国際会議場で行われました。世界の約80ヵ国から800名ほどが集まり、その約8割が海外からの参加でした。今回が日本で初めての開催となります。
今大会は、本学環境・社会理工学院 融合理工学系の村山武彦教授が、原科幸彦本学名誉教授(現・千葉商科大学政策情報学部長、教授)とともに共同議長の1人として企画運営に関わり、村山武彦教授と錦澤滋雄准教授の研究室が事務局となって2013年から準備を進め、開催に至りました。
IAIAは、1980年に設立されたインパクト・アセスメント(IA)の分野における基幹学会です。開発協力にも関係しているため、世界銀行やアジア開発銀行の関係者も数多く関与しており、国連にも団体登録されています。今大会には、国内からは環境省や国際協力機構(JICA)をはじめ、多くの関係者が参加しました。
テーマは、"Resilience and Sustainability(レジリエンスと持続可能性)"としました。「レジリエンス(復元力、回復力)」は21世紀のグローバル社会における最も重要なキーワードの1つです。当初は生態系に関する用語でしたが、現在では環境面だけでなく社会面、人々の健康面の評価や国際開発、気候変動対策、災害対策等に至るまで、多くの分野において重要な概念になっています。2011年に地震・津波と原子力の災害を経験した日本社会にとって、レジリエンスの能力を高めることは喫緊の課題です。そしてこのことは、日本のみでなく、持続可能な社会に向かう全世界にとっても共通の課題です。日本の経験と教訓を、今大会を通じて世界中から集まる参加者と共有することを目指しました。
80ヵ国もの人が集まる国際会議は、国内では年に数件しかありません。そして、環境省と名古屋市がそれぞれ開催したサイドイベントの参加者も加えると、全体で1,000名を超える大会となりました。
今大会では、以下の3つの成果が得られました。
119のセッションを設け、500題を超える発表が行われました。熊本地震の緊急特別セッションも設けました。アジア地域におけるアセスメント分野の進展は近年目覚しいものがあり、欧米やアフリカを含めた途上国の参加メンバーによる事後アンケートの回答では、最新情報の入手や人的ネットワークの構築に大変役立った、など大変高い満足度が得られています。
世界銀行が5月12日に開催した「Asia Day Forum」の成果として、アジア太平洋地区の政府開発援助(ODA)組織の協働の合意が得られました。アジア開発銀行(ADB)、オーストラリア外務省(DFAT)、国際協力機構(JICA)、世界銀行グループ(WB)の4者が、途上国各国の環境社会配慮、国別セーフガードシステム(Country Safeguard Systems)改善のコラボレーションについて、基本原則に合意し、署名式が行われました。
本大会の協力団体である環境省以外にも、6府省及びその機関からの後援が得られました。後援の承認を得るのにかなり苦労した省庁もありますが、その過程でインパクト・アセスメントに関する認識が向上したことを実感しています。内閣府、外務省、財務省とともに、経済産業省や農林水産省などの事業官庁も後援してくれたことの意味は大きいものがあります。
また、学会は、日本学術会議の後援のほか、関連する国内16学会からの後援を得ることができました。これも、インパクト・アセスメントの更なる認識の向上に繋がることを期待しています。