研究

東工大ニュース

マイクロ波でマグネシウム製錬の省エネ化に成功―アンテナ構造で生成効率アップ―

2017.04.28

要点

  • 工業的に利用されている金属の中で最も軽いマグネシウムの新たな製錬方法を開発
  • マイクロ波照射時に熱伝導性をあげるため材料の成形方法を工夫
  • 他の有用金属の製錬における省エネルギー化への応用に期待

概要

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田雄二教授、藤井知特任教授らの研究グループは、オリコン・エナジー株式会社が出資するマイクロ波共同研究講座を中心に、マイクロ波を用いたマグネシウム(金属マグネシウム)製錬で、従来と比べ、70%近い省エネルギー効果が得られることを見出した。

金属マグネシウムの原料である酸化物(ドロマイト:MgO・CaO)は、マイクロ波のエネルギーを吸収しにくく、発熱しない。

今回、還元剤として導電性のあるフェロシリコン(FeSi)を、原料のドロマイトと混合して成形する際に、アンテナ構造にすることで、マイクロ波のエネルギーを集めやすくして、より低温で還元させることができた。マイクロ波の特徴である内部加熱や接触点加熱が見られ、この製錬における平均反応温度は、従来の1,200~1,400 ℃から1,000 ℃まで下がった。

本研究成果は4月12日付けの英国科学誌ネイチャーの姉妹誌「サイエンティフィック・レポート(Scientific Reports)」オンライン版に掲載された。

背景

現在、金属マグネシウムの製錬は、主に材料を高温にするピジョン法(熱還元法)が用いられ、その熱源として石炭が大量に使われている。金属マグネシウムは約80%が中国で生産されている。製錬の際に、大量の石炭を燃焼することで、大気汚染物質であるPM2.5(微小粒子状物質)の発生や二酸化炭素の大気への放出が大きな問題となっている。

ピジョン法とは、ドロマイト鉱石とケイ素鉄を高温で加熱し、蒸気になったマグネシウムを冷却して金属マグネシウムを得る方法だ。

2MgO (s) + 2CaO (s) + (Fe)Si (s) → 2Mg (g) + Ca2SiO4 (s)+ Fe (s)

s:個体、g:ガス
ドロマイト鉱物:MgO・CaO、フェロシリコン:FeSi
熱源:石炭

研究の経緯

東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の和田研究室は、オリコン・エナジー(株)と2013年11月からマイクロ波を再生可能エネルギー分野に応用する共同研究をスタートさせた。翌年の7月からは、同大学内に設置した共同研究講座で、金属マグネシウムの製錬について研究を行っている。本成果は、この共同研究講座での共同研究の一環。

研究成果

通常、ドロマイトは、マイクロ波エネルギーの吸収が少なく発熱しない。そこで、還元剤にフェロシリコンを使い、ドロマイトとフェロシリコンを混合したペレット原料の形を工夫して、アンテナ[用語1]として成形することで、2.45 GHz(電子レンジの周波数と同じ)に対して共振構造になるようにして、ペレット内にマイクロ波エネルギーを閉じ込めることに成功した。

小規模実験炉では、1 gの金属マグネシウムの製錬に成功した。また、エネルギーを正確に見積もるために、実験炉の約5倍サイズの実証炉を作製、実験したところ、7 g程度の金属マグネシウムの製錬に成功した。これは、従来法に比べ、68.6%のエネルギー削減ができる。

今後の展開

金属マグネシウム製錬の省エネ化が成功したことで、この技術が酸化物の高温還元プロセスに展開・適用できる可能性が出てきた。

今後は、本研究をさらに発展すべく、他の金属材料の製錬に適用し、なかなか進まない鉄鋼・金属・材料・化学における省エネルギー化を解決し、地球温暖化の原因の1つである二酸化炭素の削減に貢献していく。

ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

図1. ドロマイトとフェロシリコンを使ってアンテナ構造を作製

シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

図2. シミュレーションによるアンテナ構造有無の違いによるアプリケータ内の電場分布

小型炉でのマグネシウムの製錬結果

図3. 小型炉でのマグネシウムの製錬結果

用語説明

[用語1] アンテナ : 最も単純なものは、電波の波長/4の大きさにした導体(モノポールアンテナ)、この整数倍の大きさで共振する。アンテナの役割は、空間中のエネルギーを内部に取り込むことである。一般には、アンテナは、携帯電話などの通信機器に搭載されており、電波に含まれるデジタル情報を取り出すことに使われる。

論文情報

掲載誌 :
Scientific Reports
論文タイトル :
Smelting Magnesium Metal using a Microwave Pidgeon Method
著者 :
Yuji Wada, Satoshi Fujii, Eiichi Suzuki, Masato M. Maitani, Shuntaro Tsubaki, Satoshi Chonan, Miho Fukui & Naomi Inazu
DOI :

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