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科学教室「進化論と利他行動 ~あなたは困っている人を助けるか?~」開催報告

2017.06.14

生命理工学院 基礎生物学教室は、3月26日に大岡山キャンパスにおいて、高校生以上を対象とする科学教室「進化論と利他行動 ~あなたは困っている人を助けるか?~」を開催しました。

総当り鷹鳩ゲームに向け、行動戦略を練る参加者

総当り鷹鳩ゲームに向け、行動戦略を練る参加者

自己を犠牲にして、他個体の利益となるような行動を「利他行動」と呼びます。生物学では「利益」とは端的には残すことのできる子孫の数を指しており、この利他行動の進化を古典的なダーウィン流の進化論で説明することは困難でした。そこで今回、その利他行動の進化をどのように説明すればよいのか、現代の進化生物学がその発展と共にどのように考えてきたのかを考察することを目的として、東工大基金「理科教育振興支援」の後援を受けて高校生以上を対象にした科学教室を開催しました。

現代進化生物学では、血縁選択※1マルチレベル選択※2など、いくつかの理論で利他行動の存在を説明しようと試みています。今回はその中でも、進化ゲーム理論に基づいた鷹鳩ゲーム※3を用い、参加者全員でゲームを楽しみながら進化論や囚人のジレンマ※4について学びました。

まず、利他行動の実例をいくつか紹介し、古典的な進化論の概要とその限界を共有した上で、現代進化生物学にはいくつかの理論的な考察があること、そしてその1つとして進化ゲーム理論を利用した鷹鳩ゲームがあることを説明しました。

  • 進化論と利他行動について解説する様子

    進化論と利他行動について解説する様子

  • シミュレーション結果の一例

    シミュレーション結果の一例

続いて、参加者にはパソコン上のシミュレータの使い方を習得してもらった上で、古典的な進化論による利他行動の説明が難しいことをシミュレーションで確認してもらいました。また、さまざまな条件のもとでシミュレータを動かしながら、場合によっては利他行動が出現する可能性があることの理解を深めました。シミュレータは、例えば「このような場合には利他行動を行う」「別の場合には利己的に振る舞う」といったさまざまな行動戦略を簡単に入力して試行できるよう、あらかじめ作成しておきました。

最後に、参加者全員が自身の行動戦略を考えた上でそれぞれの戦略を全て持ち寄って「総当り鷹鳩ゲーム」を開催し、誰のどのような戦略がより適応度が高いかを考察しました。

今回の科学教室では「鷹鳩ゲーム」という遊びながら学ぶことのできる題材を取り上げ、みんなで楽しみながら進化論や利他行動の基礎を学んでもらうことができました。基礎生物学教室では、今後も小学生から高校生の期待に沿えるイベントの開催を予定しています。決まり次第、基礎生物学教室のウェブサイトにてお知らせしますので、ふるってご参加ください。

※1
血縁選択は、生物としての「利益」を一個体としての自身に限定する事なく、遺伝子を共有する血縁者にまで包括・拡張して考えることで、利他行動の進化を確率論的に解釈する。ミツバチ等の真社会性昆虫が代表例。
※2
マルチレベル選択とは、言わば「古典的群選択」の現代改良版。種(しゅ)の保存に着目する古典的群選択は当初、利他行動の進化を説明し得ると考えられたが、まもなく理論的なナイーブさを指摘され、その可能性はほぼ否定された。
※3
鷹鳩ゲームとは、ゲーム理論における最も有名なゲームの一つ。このゲームでは、各プレイヤーはそれぞれ鷹戦略(利己行動)と鳩戦略(利他行動)を選択して対戦させる。その対戦結果を各プレイヤーの「利益」とみなし、そこからそれぞれの適応度を求める。つまり各プレイヤーの適応度は、どのような戦略を取るか(利己行動か利他行動か)で決まる。
※4
囚人のジレンマとは,個々にとっての最適戦略が全体にとっての最適戦略にはならない「ジレンマ」状態を表すモデルの一つ。自身の「利益」を最大化するために、あえて自己を犠牲にする利他行動を選択した方が良いケースがあることが示される。

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