社会連携

学勢調査 学生の声が大学を変える

学勢調査 学生の声が大学を変える

東工大生の大学生活を調査する学生活動

本学には多種多様なサークル・学生活動があり、学生は勉学だけでなく課外活動にも励んでいますが、この「学勢調査」という活動は他に例を見ない、本学独自の特徴的な取り組みです。「国勢調査」になぞらえたネーミングのこの活動は、その名から推測されるように、学生から日々の大学生活、意識あるいは大学に対する意見を収集し、その調査データをもとに、東工大生の実態について分析を行っています。そして大学を良くしていくためにはどうすれば良いかについて学生の目線で検討し、大学への提言を一冊の提言書としてまとめ、学長に提出しています。

学勢調査は2005年から始まり、2年に一度のペースで実施しています。2017年6月、「学勢調査2016」の奉呈式が行われ、三島良直学長に学生自らが提言書を手渡しました。また意見交換を通じて、学生たちが抱いている「生の声」を届けました。提言書は各学院や事務部門等にも配信され、今後の大学運営の改善案として使用されます。

学勢調査2016の学生スタッフ代表を務めた児島佑樹さん(理学部 物理学科4年)に、学勢調査の取り組みや活動に対しての思いについて聞きました。

提言書を受け取る三島良直学長(左)と学勢調査2016学生スタッフ代表の児島祐樹さん(右)

提言書を受け取る三島良直学長(左)と学勢調査2016学生スタッフ代表の児島祐樹さん(右)

学勢調査がまとめられるまで

「自分が毎日通っている東工大ですが、実際はよく知らないところが多くあり、いろいろなデータを見られたら面白いのではないかと思い、学勢調査への参加を決めました」と語る児島さん。活動に参加する学生たちは様々な動機を持って集まってきますが、ピアサポーターなど普段から学生支援の取り組みに興味を持っている学生や、長い目で東工大を変えていきたいという強い意志を持って参加する学生も多いようです。学勢調査2016では、8名の学生スタッフが設問の作成に参加し、11名の学生スタッフが解析・提言作成を担当しました。いずれの学生も自ら応募して活動しています。

提言は、以下のような流れで作成し、より実現可能性の高いものとなるよう大学の多くの教職員とも話し合って検討を重ね、磨きをかけていきました。

1. Webを通じたアンケートの実施

調査データを収集するアンケートは、学生支援センター自律支援部門の教職員からアドバイスを受けながら、2016年の春より設問の検討を行い、同年秋にWeb上で実施されました。学勢調査2016に回答した学生は1,794名となりました。

2. 収集されたデータをもとに現状分析

学生たちが回答したデータは、「データ班」によって分析、グラフ化されます。提言の内容ごとに「学習班」「サービス・施設班」と活動班を分けて、いま東工大生が抱えている問題、大学に求めていることは何かを精査します。そして会議を重ねて、提言の草案を形にしていきます。

留学に関するデータ分析の例。データ分析の結果、左図「留学したことはない」学生が多数を占める一方で、右図の通り、留学経験のない学生の中では「留学したい」という気持ちを抱えている学生もまた多数派であることが分かり、実態とのギャップが明らかになった。

留学に関するデータ分析の例
データ分析の結果、左図「留学したことはない」学生が多数を占める一方で、右図の通り、留学経験のない学生の中では「留学したい」という気持ちを抱えている学生もまた多数派であることが分かり、実態とのギャップが明らかになった。

3. 「キャンパスミーティング」の実施

提言の草案が完成すると、大学の運営に携わる各部局の教職員との打ち合わせ「キャンパスミーティング」が実施されます。ここで提言の草案を示し、教職員から大学の実情をヒアリングすることで、提言をより実現可能性の高いものへとブラッシュアップします。キャンパスミーティングを実施すると、学生が見落としていた問題が明らかになり、大学の運営陣がどのような方針を持っているのかという「大学の気持ち」が分かってくるのだと、児島さんは言います。

4. 最終版の提言書が完成

キャンパスミーティングでの意見交換を経て、提言書の最終版が作成されます。執筆にあたっては、学生の思い、大学の方向性の両方を視野に入れながら、大学を良くしていくための提言をまとめます。

このようにしてまとめた提言書を、学長や理事・副学長へ奉呈します。奉呈式の場では、提言内容について説明し、意見交換を通して、今後の大学運営に活かすための可能性を探ります。また学生たちは話し合いで得たことを、次回の学勢調査の参考として積み重ねていきます。

三島学長、丸山俊夫理事・副学長と提言について意見交換を行う

三島学長、丸山俊夫理事・副学長と提言について意見交換を行う

学勢調査2016の完成によせて 学生スタッフ代表 理学部 物理学科4年 児島佑樹

児島佑樹

今回の調査では、2016年から始まった教育改革をはじめ、就活や留学に関わる調査項目を新たに増やしました。教育改革が施行されてからまだ1年も経っていないタイミングでしたので、新制度への条件反射的な不満や反発を煽るような設問にならないように工夫しました。また提言にあたって、教職員と学生間の意見交換の機会を増やすことや、大学院の授業が英語化することに伴うサポート体制の強化など、新体制をより良く運用していこうという意識のもとで行いました。

提言書を読んでいただくと、キャンパスミーティングで話し合われた内容についても記載しているので、なぜ大学が現在こうなっているのか、なぜ学生の意見と大学の現状との間に距離があるのかなどが分かると思います。そして、「なぜ」が分かると大学の思いについても理解が深まり、徐々に大学の現状と学生の思いとのすれ違いも減ってくるのではないかと考えています。

学生の声が大学を変える

学勢調査による提言を受けて、本学の各部局担当者は提言内容について検討を行います。その結果は「大学の対応」としてweb上に公開されます。本学ではこれまでの学勢調査の提言を受けて、または提言が後押しとなって実現した施策がたくさんあります。

学勢調査の提言等をもとに実現された施策の例

  • 講義情報やイベント情報を伝える電子掲示板を設置
  • 学内者向け情報提供サービス「東工大メールニュース」を配信開始
  • 学内にコンビニを誘致
  • 講義室へ防災マニュアルの設置
  • 人工芝のグラウンドを施工
  • 生協食堂に小鉢の一品メニューを導入
  • 電子掲示板(プラズマディスプレイ)
    電子掲示板(プラズマディスプレイ)
  • 人工芝のグラウンド
    人工芝のグラウンド
  • 生協食堂の小鉢メニュー
    生協食堂の小鉢メニュー

児島さんは、「学勢調査の回答率は、Webアンケートとしては高い値ですが、もっと多くの学生に調査に協力してもらい、回答後には自分の意見がどのような提言となったか、そして実際に大学が学生の意見を施策に取り入れてくれていることについても、もっと多くの学生に知ってもらいたいです。」と話します。

「時代の流れに沿って大学も変わっていかなければならないと思いますが、大学という大きな組織では、学生が何かを変えたいと思っても簡単に変えることが難しかったり、変化を望む声を上げづらいところがあると思います。学勢調査は活動を支援してくださった教職員の方とともに、少し離れた第三者として大学に意見を伝えています。学勢調査を通じて学生からの視点を取り入れ、東工大がもっと良い姿へが変わっていけるようになったら良いと思います。」――大学教職員と学生の気持ちが1つになった東工大の実現が、学勢調査を行う学生たちの願いでもあります。

学勢調査2016の学生スタッフと、活動を支援した学生支援センター自律支援部門の教職員

学勢調査2016の学生スタッフと、活動を支援した学生支援センター自律支援部門の教職員

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2017年9月掲載