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2002年末時点の契約台数は実に7300万台以上、普及率は6割におよぶ「携帯電話」。Eメールやiモードサービスを含む個人の利用頻度は固定電話以上とも言われる現代人の必携アイテムですが、「携帯電話」という名称が使われるようになったのは、いわゆる「第1世代」と呼ばれるアナログ式携帯電話が登場した1987年以降のことでした。
初期のアナログ式携帯電話機は音質が悪く、雑音も多い上に少しでも動くとすぐ切れる、現在の携帯電話とは比較にならないほど不完全で扱いづらいもの。当時、多くのユーザーは「携帯電話とはそういうもの」と思っていましたが、そんな認識を大きく変えたのが1993年の「第2世代」、すなわちデジタル式携帯電話の登場でした。音の形をそのまま電波の強さにして送るアナログ方式に対して、一旦、数字のデータに変換して送るデジタル方式は同じ量の電波でより多くの情報を扱うことを可能にします。当然、通話音質は格段に良くなったわけですが、デジタル方式へ移行した本当の理由は別のところにありました。実際に携帯電話のデジタル化を促したのは通話料金の大幅な値下げと電話機自体の軽量・小型化による利用者の急増。つまり、限られた電波(周波数)を有効に使うためだったのです。 |
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| ディジタルコードレス(1982) 世界最初のディジタル電話機 |
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実はデジタル式携帯電話の研究・開発は1970年代後半から進められており、もっと早い時期の導入も可能でした。東京工業大学大学院理工学研究科集積システム専攻の鈴木博教授は1974年にNTTの前身である日本電電公社へ技術者として入社し、携帯電話のルーツと言われる「自動車電話」が登場した1979年にはすでにデジタル携帯電話の開発に取り組んでいたのです。
以来、今日に至るまで一貫して移動通信に関する研究を続けてきた鈴木教授は、1992年に発足したNTT移動通信網株式会社で主幹研究員に任命され、1993年のデジタル方式導入時にはもう「次世代型携帯電話」の研究開発に着手していました。いわば常に“一歩先”を歩いている鈴木教授のメインテーマは、環境に応じて電波信号を処理する集積回路の設計。ひとことで言うと「さまざまな電波障害によって乱れた情報を受信側で正確に復元する仕組みづくり」です。たとえば、携帯電話から発信した電波は建物や地面などに反射したり、あるいは自分宛でない電磁波に妨害され、受信する時にはバラバラになって届きます。全ての携帯電話にはそうした「乱れ」を修復する回路が組み込まれており、私たちはずっと前から知らず知らず、その恩恵を受けているわけです。しかしながら携帯電話利用者の急増や電子機器の氾濫によって膨大な電磁波が乱れ飛ぶ今日。いつ、どこで、どういう電波障害が起こるのかを把握することはきわめて重大なテーマと言えるでしょう。そこで大きな注目を集めているのが『移動通信シミュレータ』なのです。 |
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1996年に東京工業大学へ着任した鈴木教授が研究室スタッフと共に創り上げた『移動通信シミュレータ』とは、移動通信で起こりうる電波障害を全てコンピュータ上で再現するというもの。電波が障害物に反射して起こるフェージングや移動中のドップラー効果による到着時間のズレ、他の携帯電話から出る電波との混信、その他のあらゆる電磁波障害を現実に測定することはもちろん不可能ですが、それをコンピュータ上で再現することができれば有効な復元プログラム、つまり新しいアルゴリズム(命令手順)を開発することも容易になるわけです。携帯電話が単なる音声の伝達装置ではなく、iモードに代表されるデータ通 信や画像・動画の配信といったマルチメディアへと進化していく時、その情報を乗せた電波を正確に受け取ることは何より重要です。データの送受信をより大量かつ高速に行う「第3世代」の携帯電話も、この技術がなければ意味がありません。それはどんなにすぐれた自動車でも、道がなければ走れないのと同じです。『移動通信シミュレータ』はますます劣悪化する電波環境から大切な情報を守るための見張り役であり、携帯電話をはじめとする次世代の無線通信機器の開発に欠かせない水先案内人と言っても良いでしょう。 |
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