東京工業大学広報誌 第8号
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想いを共有したmikanの成果。この先の展開、オタノシミ。
VR(バーチャル・リアリティ)
 この言葉は「仮想現実」と呼ばれ、今やエンタテインメントやデザインの世界ですっかり定着し、身近なものとして市民権を得ています。VRでは、現実と錯覚するほどの視覚的忠実さが求められ、人工的に創り上げた仮想空間を利用して、画面上の作業を行うというのが、現在の一般的な流れです。そこに逆転の発想を持ち込んで、コンテストに参加しようと考えたのがmikanのスタートでした。「人が仮想世界に干渉する」という従来のVRに、「仮想世界が我々の日常生活に干渉してくる」という“逆の操作”を加えてみたらおもしろいことができそうだ。このような発想から11人の有志が結集し、挑戦の毎日が始まりました。
mikanのメンバーの写真
Virtual Browniesを制作したmikan
チーム名"mikan"の由来
みかんが好きだから。
みかん色が好きだからではありません。
メンバーの頭文字を組み合わせたら
「m」「i」「k」「a」「n」になりました。
メンバーは青木 孝文、三武 裕玄、鮎川 力也、栗山 貴嗣、川瀬 利弘、松下 卓史、遠山 喬、市川 宙、浅野 一行、飯尾 裕一郎、松村 周の11人。
触れて感じる
 “視る”だけでは物足りない。仮想と現実が重ね合わされたVRにおける実感を、視覚のほか、+αの感覚を使って確かめたいというのがメンバーの願いであり、こだわりでした。例えばVRのボクシングゲームでは、激しいスポーツのリアルなライブ感を感じることはできても、パンチを受けた感触までは味わうことができません。そのような考えから、ライブに近づくために触感体験を取り入れることがテーマになりました。これはテレビやインターネットなど、視覚情報ばかりが重要視される風潮へのアンチテーゼも多少含まれています。触れてみたいという好奇心、そして実際に触れたときに感じる素朴な喜びを大切にしたい。そこで、題材も素朴なかわいらしいものに決定。仮想の存在=妖精“Brownie”たちが、まるで実在するかのようにテーブルの上を自由に動き回り、現実の物体(ティーカップ)を動かすと反応し、さらに現実の物体(紅茶の缶)を動かしたり、手をかざすと抵抗したりしてくれるのです。物体を介してBrownieとのインタラクションを図ることで、“触れて感じるバーチャル・リアリティ”が完成しました。
「Brownieの窓」から部屋の中を覗いたイメージ Brownieのイラスト
「Brownieの窓」から部屋の中を覗くと…。実際には見えない仮想の世界が見えてきます。3人の妖精たちがテーブルの上にあるオブジェクト(紅茶の缶)を一所懸命に動かしています。
おもしろいこと
 最初の半年は、議論と基礎研究の繰り返し。技術的な発明をめざすよりも、既存の技術をうまく利用し、そこに独自の工夫を加えようというのがmikanのコンセプトでした。アイディアは泉のように湧いてきて、その度に裏付けと応用研究に没頭。実際のシステム構築に入ってからも、週1回のペースでメンバーが分担した研究成果を持ち寄り、考えをぶつけ合いました。そのエネルギーはどこから来るの?とメンバーに尋ねると、「自分たちがおもしろいと感じているから」と、シンプルな答えが返ってきます。その上、見る人が「おもしろいことをやったじゃないか」と思ってくれたら、冥利(みょうり)に尽きるというわけです。
 準備段階での一番の山場、それは技術的に難しいとされる人の動きをグラフィックで表現すること。妖精たちが本当に意志を持っているかのような、自然な動きを作り出すことにこだわりぬきました。今回のコンテストで披露したのは、「Browniesが行うお茶のお手伝い」。けれども、アイディアはこれだけではありません。缶に妖精をぶらさがらせたりするなど、現在の機能を発展させて、やってみたいことはまだまだあるのです。
Virtual Browniesを制御する制御サーバー群の写真
Virtual Browniesを制御する制御サーバー群
1) スパイダ−コントローラ
オブジエクトの移動を画面で制御
2) 表示画面
「Brownieの窓」の映像表示
3) クライアントPC
画像認識
4) サーバーPC
Brownieの動きを物理的にシミュレーション
固定点カメラの写真 スパイダーの写真
Virtual Browniesを駆動する装置
固定点カメラ
上からオブジェクトの動きを監視する
スパイダー
オブジェクトを移動させる
IVRC2004
 「国際学生対抗バーチャルリアリティコンテスト(International collegiate Virtual Reality Contest)」は、1993年から開催されています。これは、バーチャル・リアリティやロボットなどの先端技術を用いたインタラクティブな作品を審査する国際コンテストです。このたびmikanは、「Virtual Brownies」で、この第12回コンテストに臨みました。
 ロボット技術研究会としては、2001年のこの大会で、「VRanko(ブランコ)」という作品で優勝を成し遂げています。その時の貴重なノウハウを生かし、予選・本大会と万全の体制で魅せるプレゼンテーションを展開。そのかいあって、本大会で見事、準優勝/岐阜VR大賞を勝ち取ることができました。
「Brownieの窓」の動いている様子のムービーはこちら
ムービーのアイコン 展示会 妖精1
妖精2 スパイダー
表示画面 クライアントPC
サーバーPC 妖精ができるまで
ご覧いただくには、 QuickTimeが必要です。
ダウンロードはこちらから。
クイックタイムダウンロードサイトへ
Brownieのイラスト
妖精、ロスへ
 その後も「Virtual Brownies」は注目を集め、6月22〜24日に東京ビッグサイトで開催された「産業用バーチャルリアリティ展」での実演展示に続き、7月31日〜8月4日にアメリカのロサンゼルスで開催された「SIGGRAPH(シーグラフ)2005」でも、口頭発表と実演展示を行いました。SIGGRAPHはコンピュータ・グラフィックスとインタラクティブ技術の祭典として、世界で最も権威ある展示会とされています。mikanのバーチャル・リアリティに対する情熱は、こうして海外にも届いたのです。
SIGGRAPHを終えて シーグラフの写真
Brownieのイラスト 私たちmikanは、CG界の最高峰であるSIGGRAPHで、「Virtual Brownies」の実演展示を行うことができました。世界中から集まった第一線の研究者の方々に体験していただき、たくさんのコメントをいただきました。中でも衝撃的だったのは、あのジョージ・ルーカス監督が「Virtual Brownies」を体験してくれたことです。私たちは、この作品が世界的に認められ、評価されていることに大きな喜びを感じています。今後もさらなる進化を続けていきたいと思います。
サークル活動の写真 ロボット技術研究会
ロボット技術(ロボティクス)を中心に、回路技術、ソフトウェア技術などについての研究開発を行う、大学公認サークルです。創部は1981年。以来、部員の自主性を重んじ、自発的な研究活動を行っています。部内は幾つかの活動グループに分かれ、それぞれがコンテスト等に積極的に参加しています。サークル棟4の3階にある部室が主な活動場所です。
詳しくはこちらから・・・http://rogiken.org
Brownieのイラスト
2005 Tokyo Institute of Technology