東京工業大学広報誌 第8号
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小学校に授業出前します 沸とうすると温度が変わらないのはなんでかな 「当たり前」の中に“不思議”を探せたら、それは科学の芽生えです。
今回は石川謙先生です
石川謙先生の写真
石川 謙先生
Ken Ishikawa
東京工業大学
大学院理工学研究科
有機・高分子物質専攻 助教授
大学で研究をしている理由はいろいろありますが…やっぱり、やっていておもしろいからだと思います。 
何がおもしろいかというと、わからないことがわかるようになるのがおもしろいのです。
先生はこんな研究をしています
 特にいま一所懸命にやっているのは、有機物を使い、性能のよいトランジスタや太陽電池を作ることと、光と電波の中間の遠赤外線と呼ばれている光線を使って液晶状態での分子の動きを調べることです。液晶は、テレビ画面用などですごくよく使われるようになっていますし、また、多くの種類があるのですが、なんで液晶状態が出現するのかといった基礎的なことで、まだまだ分かっていないことがあります。遠赤外線を使う測定は新しい手法なので、これまでは分かっていなかったことが発見できるといいなと思い、測定装置を作っているところです。
身の回りにある当たり前なことも、ちょっと考えると不思議だなって思うことはないかな? 石川先生の問いかけに、いきなりびっくり顔の子どもたち。当たり前が不思議って、どういうこと・・・?
温度計のイラスト
当たり前は不思議
 最初は、カセットコンロでお湯を沸かす時の水とガスボンベの温度変化を調べる実験です。まず、子どもたちに実験結果の予想をしてもらいます。水の沸とうは、4年生で学習済み。そのため、「100℃で止まるんだ諱vと即座に元気な答えが返ってきました。
 ガスボンベについてはクラスの大半は、「火のそばだから熱くなるよ」と予想。2人の子どもが代表で、30秒ごとの温度を計測しました。すると、水温は上昇し沸とうすると一定になるのに、ガスボンベの温度は下がり続けます。読み上げる子どもたちの声にも、どことなく緊張感がにじんできました。
 予想に反した実験結果に、不思議そうな表情の子どもたちに向かって石川先生は、「ボンベの温度が下がるのを不思議だと思っているよね。でも、水が沸とうすると温度が変わらないのも不思議じゃない?」と問いかけます。そして「沸とうすると温度が一定になるのとボンベの温度が下がるのは実は同じ原理なんだよ」とたたみかけると、子どもたちの頭の中で当たり前が不思議に変化して動き出した様子です。
温度を計測する2人の子どもの写真
コンロのスイッチを入れて
鍋の湯ととガス缶の温度変化をチェック。
カセットコンロと鍋の写真
実験装置は、カセットコンロと鍋に張った水。
コンロのガス缶につけた温度計の変化のグラフ 鍋のお湯につけた温度計の変化のグラフ
水が沸とうするしくみとはのイラスト
不思議は面白い
 「ところで、水の沸とうする温度を上げることはできないかな?」という先生の問いに対して、ほとんどの子どもは困っていますが、中には「塩を入れるといいよ」と勢いよく答える子どももいます。それに対して先生は「その理由も分かってる?」とさらに問いを重ねます。理由が分からない知識じゃダメなんだということを伝えたいようです。
 さて、塩を加えていくと水の温度は108℃まで上がり、子どもたちの口からはいっせいに「ホントダァ〜」の声が出てきました。塩の粒子が水が飛び上がるのをジャマするんだよという説明のあと、圧力をかけてもよいという話が続くと、圧力鍋の原理が分かって嬉しそうな子どももいます。きっと、今度家で圧力鍋を使う時に、嬉しそうに原理の説明をするのでしょうね。
 ここで、除塵用のエアスプレーの登場です。エアスプレーの中にはフロンガスが入っていて圧力によって液化しているのだそうです。本当に圧力がかかっているのかを調べるために、まずはスプレーとの力比べです。噴射口に注射器をセットして両手で押さえての力比べ。この対決に軽々勝利したのは、女の子だったというのもおもしろいですね。
 そして、スプレーを逆さまにして圧力で液体になっているフロンをジッパー付きのポリ袋の中に取り出すと、圧力から解き放たれた液体は気化し、袋には霜が付きました。ジッパーを閉めて袋を回している間に蒸発は進んで風船のようにみるみる膨んでいきます。子どもたちは冷たさを実感しながら、でも、恐る恐る隣の友だちに手渡す途中で、ジッパーがはじけて袋は破裂。こんな現象にも、子どもたちは大興奮でした。
水の沸とうする温度を上げてしまう「ヒミツの粉」を溶かしてみよう!
鍋にヒミツの粉を入れる先生の写真
粉の正体は、食塩でした。
スプレー缶の中の圧力と力比べをする女の子の写真 スプレー缶の中の圧力と力比べ! 押さえるのに35kgの力がいるぞ。
膨らんでいく袋を見る女の子の写真
みるみる膨らんでいく袋の中には缶の圧力から解放された液体がフツフツと…。
実験をする先生と様子を見つめる子どもたちの写真
真空になる箱の中で、クシャクシャだったビニール袋はどんどん膨らみ、
温めてもいない水が沸とうを始めた。いったい何がおこっているのだろう?
ぐるりと回って心におちる
 ここで、話は水に戻ります。「水の沸点を低くするのにはどうすればいい?」この質問の答は分かりますよね。そうです。圧力を高くすると沸点が上がるのだから、圧力を低くすればよいのです。
 そこで、真空ポンプの登場です。ようやく登場した本格的な実験装置を前に、子どもたちの顔は期待に輝きます。水を入れたビーカーに温度計を差し込み、確認すると28℃。装置の中にセットして徐々に中の圧力を抜いていくと、水が沸とうを始めました。真空という別世界がつくり出した「別の不思議」に、子どもたちからまたもや大きな歓声があがったのです。箱から取り出した時の水の温度は22℃。子どもたちの心の中で、不思議が納得に変わった瞬間です。
 そうそう、科学って遠い世界のことでなく、身の回りのことだったんですよね。明日から世界を見る目が変わります。
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ムービーのアイコン 力比べ
爆発!
蒸発
真空ポンプ登場
実験
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みんなの質問への答えです
「この実験、海の底でやったらどうなるの?」「地球に分子は何個あるの?」
──授業のあと、山ほど押し寄せたみんなの質問に、先生が一つ一つ答えて下さいました。
子どもたちの写真
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2005 Tokyo Institute of Technology