
最先端の研究から生まれた東工大ロボット
モーターが甲高い音をあげ、ジュラルミンの筐体(きょうたい)が動き出した。その動作は、予想をはるかに超えて、滑らかなS字を描いて優雅に進んでいく──発想の豊かさと確かな技術力を感じさせるロボットたち。日本でロボットというと、アニメやSFの影響もあってか、人間に近いヒューマノイドタイプが思い浮かぶが、東工大ロボットはそれだけがロボットの魅力ではないことを教えてくれる。
社会で活躍するロボット
フィールドロボットと呼ばれる、建設現場などで危険な作業を人の代わりに行うロボットがいる。広瀬・福島研究室の法面(のりめん)作業用4足歩行ロボットTITAN XI(A左)がそれだ。法面とは土砂災害などを防ぐ人工斜面のこと。傾斜している上、出っ張りもある法面での作業は危険が伴う。TITAN XIは、出っ張り部分を察知し、脚の置き場を決め、ボルトやアンカーの打ち込みを人に代わって行う。広瀬茂男教授に東工大ロボットの特徴を伺うと“質実剛健”という言葉が返ってきた。「まずは現場を知ること。ニーズを把握し、一番役に立つ形でつくり上げるのが私のモットーです」。
阪神・淡路大震災の際、半壊家屋での救助活動が瓦礫の山を前に難航した。北川・塚越研究室は、二次災害の発生が予想される被災地での救助を目的に、ジャッキアップ移動体Bari-bari-IV(H)を開発。倒壊した建物の下など、人には入れない狭く危険な場所に潜り込み、瓦礫を押し上げながら移動することができる。
そして医療の分野にもロボットの力が求められている。小俣研究室の腹腔内組立式3指9自由度ハンド(G)は、開腹手術における人への負担の軽減をめざす。腹部に開けた小さな穴から部品を入れ、腹腔内で組み立てて施術する。医療現場との連携をとりつつ、開発が進められている。
あらゆる分野の知識と技術が必要とされる総合学問
新しい何かが未来をつくる
ヘビ型ロボットACMシリーズ(F)はもともと、誰にも解明されていなかったヘビの動きを数値的に解析する研究のなかで、理論を実証する目的でつくられた。まるで本物のヘビのように、にょろにょろと体を左右にくねらせ、やわらかに地面を這う姿には驚かされる。現在は水中で泳ぐタイプも開発されるなど、災害救助などでの活躍も期待されている。またロボット制御の分野では「どう動かすか」も重要になってくる。意図した運動を実現するには、制御しやすいロボットが必要だ。2本の脚を持つデューク(D)はまさにそれだ。人とはあえて異なる股関節構造を持たせ、動かしやすい機構にしている。人間と同様、ロボットにおいて頭脳となる制御と、体である機構は切っても切れない関係なのだ。そして、想定外の結果が、必ずしも失敗であるとは言えないのが“研究”だ。それが新しい発見や思いがけない展開に広がることもある。新しい何かを生み出すには、今までとまったく異なる視点や、自由な発想が不可欠。研究機関として、教育の場として、大学は未来をつくる使命を担っている。
ロボットに“はまった”学生たち
機械物理工学を専攻する渡辺将旭さんが語る夢は「世の中の多くのロボットを簡単に制御できるようにすること」。もともとロボットに興味があった訳ではなかったが、岡田昌史准教授の授業を受け、制御に面白さを感じ研究室の門戸を叩く。この研究室では制御技術の視点からロボット研究を行っており、制作した群ロボット(B)は避難誘導や混雑緩和のプロジェクトに応用されている。群ロボットは合計22台あり、1台の牽引するロボットを先導役として、その動きに反応して他のロボットが後を追うように制御することができる。人間の動きを群ロボットに置き換えることで、群衆の挙動の制御を可能にする研究だ。
世界に類を見ないこの研究の一翼を担うのは同研究室の本間良幸さん。群ロボットの設計図を起こすところから携わっている。「研究室というスペースが限られている場所で、22台を動かしてデータを取るため、なるべく小さくなるように設計しました。また、自由自在に動けるようにオムニホイール(ホイールを複合させ、前後左右に動くロボットの足)を採用しています」。彼は小学生の頃にロボットコンテスト(ロボコン)をTVで見てその動きに興味を持った。そして大学生となった今、実際にロボットをつくっている。
ロボットに求められるもの
ロボットを制作しているのは、何も研究室の中だけではない。東工大の「ロボット技術研究会(ロ技研)」の発足は1981年。現在約100名もの部員が所属する。
ロボットの面白さは、自分でつくったものを動かせるというところにつきる。ロ技研では、基本的に一人でつくりたいロボットを制作できる。最初はロボットを見てスケッチや採寸を行う。さらに機構を見ていくと、徐々に原理が見えてくる。そうすると大学での授業に加え、身の周りのすべてから学べる・使えるモノがあることに気付く。
部長の村山雄輝さんは「普段から使っているモノほどよくできているんですよ。家電や折りたたみ椅子など改めて見ると感心してしまいます」と語る。副部長の長井悠佑さんはこう続ける、「自分の得た知識の分だけロボットに活かすことができるのも醍醐味。自分なりにプランして、考えて、ひらめいて、失敗してを繰り返し、最終的に自分の思い通りに動かせる快感は一度味わうとやみつきです」。
身近にあるものが参考になるというのは、逆にそれだけ様々な技術や仕組みをロボットが備えているからだろう。そういったことからもロボット研究は“総合学問”といわれるのである。機械系専攻者だけがロボット研究をしているわけではない。東工大には様々な学科や分野でロボットに向き合っている先生や学生がたくさんいる。東工大生のつくったロボットが、あなたのすぐそばで活躍している。そんな日が近い将来くるかもしれない。
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IDCロボットコンテスト大学国際交流大会
世界7カ国から大学生が集まって各国混成チームを結成するため、コミュニケーション力も重要。東工大では「創造設計第一」の授業で行う競技会で出場者を決定。競技会には他学科生も参加可能。
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新入生ものつくり体験@ものつくりセンター
4月から行われる1年生向けの体験学習。ものつくり教育研究支援センターで行われ、希望者は誰でも参加できる。 |
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ロボットキットを使い、プログラミングなどを実施する。制作期間は約2カ月。
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ロボット技術研究会
ロボコン等の大会に出るためだけでなく、それぞれが自由にロボットを制作。部室にはフライス盤や電動糸ノコギリがあり、制作にはもってこいの環境。
http://rogiken.org/
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