研究

環境エネルギーイノベーション棟

安全安心な低炭素社会に向けた東工大の挑戦

最先端の環境エネルギー技術の研究が行われる「環境エネルギーイノベーション棟」は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を約60%以上削減し、しかも棟内で消費する電力をほぼ自給自足できるエネルギーシステムをもつビルとして設計された、世界でも類をみない研究棟です。

環境エネルギーイノベーション棟 (南面) 環境エネルギーイノベーション棟 (南面)

先進の環境エネルギー技術

CO2排出量の削減(既存の東工大研究棟比60%以上のCO2排出量削減目標)を、最大のプライオリティとする基本構想の下、本棟のエネルギーシステムが以下の指針により設計されました。

1.
徹底した省エネルギー化
2.
エネルギー需要に合致した高効率分散電源の導入
3.
分散発電システムと外部電力との連携 (系統連系など)による電力需給の総合的なマネジメント

各種太陽電池による発電システム

太陽電池パネルが設置された西面太陽電池パネルが設置された西面

6種類の太陽電池パネルを約4570枚が設置され、総発電容量は約650kWです。
太陽電池パネルが設置されたソーラーエンベロープを傾斜させ、また冬至基準での高密度設置をおこなうことにより、年間の発電量を最大化しています。遮光が必要な実験室フロアでは、太陽電池パネルを壁なりに設置、居室フロアでは昼間の室内照度をシミュレーションし、太陽電池ルーバーの開口度を最適化しました。この傾斜によって空間がうまれ、通風が確保されることで太陽電池の温度上昇による電圧低下を防いでいます。

単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、アモルファス・結晶シリコン太陽電池、CIGS薄膜太陽電池

排熱利用型燃料電池により総合効率を向上

デシカント空調機デシカント空調機

100kWのリン酸型燃料電池で、その高温排熱を吸収式冷凍機などによって外気処理空調に利用しています。
さらに湿度を制御するデシカント空調に低温排熱を利用し、最終的にはトイレの手洗い水として供給することで、システムの総合効率を向上させています。この本デシカント空調は、吸着材であるセラミックローターが回転しながら除湿と吸着した水の脱離、再生を連続的におこないます。

地中熱ヒートポンプと放射冷暖房

室外機から放出される熱を地中に放熱し、ヒートアイランドの防止にも効果をあげています。また輻射によって冷暖房をおこなう放射冷暖房と組み合わせることで、ファン動力の削減と自然な空調が可能となります。

ドラフトチャンバーの同時稼動率の予測と風量制御バルブの採用

研究に必要なドラフトチャンバーの同時稼動率を、大岡山キャンパス内の運用実績データから予測し、排気設備容量を最適化しています。また、実験室内に人が不在の間、自動的に前面扉が降下し、風量制御バルブと外気処理空調が連動することで室内の圧力を制御し、環境性能の向上と省電力化を両立させています。

クリーンルームにおけるファン・フィルターユニットの自動制御

太陽電池の研究・製造では、高度に清浄化され塵のないクリーンルームが必要です。燃料電池の排熱を利用して湿度制御する外気処理空調が導入されています。また人感センサーによって研究者の動きを感知し、ファン・フィルターユニット(PACエアコン)を選択可能な3種類のモードで自動運転しています。

電力消費情報および発電情報の集約化と解析

研究棟内の電力消費情報・太陽電池・燃料電池の発電情報をリアルタイムで電力情報サーバーに集約化、それらの解析と研究者への情報公開によって、さらに効率的な運用を行います。

技術的挑戦を通して時代を刻む建築

ソーラーエンベローブソーラーエンベローブ

時代を刻む東工大の新たなシンボル

この建物では、太陽電池パネルによるCO2排出量の劇的な削減に挑戦しました。細長いクサビ型の敷地に太陽電池パネルを最大限設置する仕掛けとして、建物本体から切り離されたソーラーエンベロープが生まれました。建物の屋根や壁に太陽電池パネルを設置する従来の方式ではなく、太陽電池パネルが自立した要素として建物より大きく広がることで、エネルギー自給自足型である建物の存在意義が明確に表現されています。

建物を包むソーラーエンベロープ

ソーラーエンベロープは鉄骨のフレームに、太陽電池パネルとキャットウォークを設置したものとして構成されています。これにより、メンテナンスが容易になりました。内部では研究室や環境エネルギー研究における分野融合を促進するため、柱や壁を最小限に抑えた各層800m2の一体空間を確保しています。

活発な分野融合が日常となる空間

環境エネルギーに関する様々な要素技術が導入されていますが、研究者や学生にとっては生活の中心となる場所です。したがって、各要素技術を空間的にインテグレートする配慮が求められます。例えば、ドラフトチャンバーの縦ダクトは外部に露出しないようにソーラーエンベロープと建物の間に収められています。一階の多目的ホールやエントランスホールには、ここで研究成果などを広く公開することを意識し、大きな窓と窓辺に長く連続するベンチを組み込みました。学生室と通路の仕切りには、旧図書館の本棚を再利用して、手作りの暖かみを空間に与えています。

1階 多目的ホール1階 多目的ホール

地震エネルギーを吸収する外郭架構

エネルギー吸収ブレースを斜めに配する北面エネルギー吸収ブレースを
斜めに配する北面

本体構造

高性能の履歴型地震エネルギー吸収ブレースを外殻に配置した、広い空間を有する靱性の高い制振外郭架構を構成しています。小レベルの地震よりエネルギー吸収を開始することで、各階の応答変位・加速度を低減し、高い地震レベルまで梁・柱・外装の損傷を防ぎ、建物の継続使用性を確保する設計を実現しました。

ソーラーエンベロープ架構

細径角型鋼管のフィーレンデールトラスを主体とした、軽快でフレキシブルな架構を実現。各太陽電池パネルを保持しながら本体架構の動きに追従可能な納まりとなっています。

建物名称:
東京工業大学 環境エネルギーイノベーション棟
構造・規模:
鉄骨造 地上7階 地下2階
建築面積:
1,741.85m2
延床面積:
9,553.57m2
完成時期:
平成24年2月
デザインアーキテクト:
塚本由晴研究室outer(意匠)、竹内徹研究室outer(構造)、伊原学研究室outer(環境・エネルギー)
設計:
施工:
(建築)戸田建設、(空調・衛生)ダイダン、(電気)ユアテック

2013年6月掲載