研究

顔 東工大の研究者たち 特別編 細野秀雄(下)

電子を巧みに操り、物質の潜在能力を引き出す 東京工業大学フロンティア研究機構 教授細野  秀雄

鉄系超電導の研究でノーベル賞の有力候補とされている細野秀雄教授。研究者としてこれまで透明な物質にこだわって研究し、大きな成果を挙げています。中でも、C12A7(12CaO・7Al2O3)は、細野教授のすべての研究の原点ともいえる透明なセメント物質です。透明の魅力とそこに秘められた可能性、そして研究成果について聞きました。

ガラスのような透明なアモルファス酸化物に電流が通った!

当時(1995年)はアモルファスシリコンが全盛の頃ですから、この年に開催された第16回アモルファス半導体国際会議で発表された800件ほどの論文の中にアモルファス酸化物は私の1件だけ。まったくといってもいいほど反響はありませんでした。

超電導研究を始める前は、透明な酸化物の研究をしていたと聞いています。

今でも研究しています。ウイスキーを飲むのに使うクリスタルグラスって、透明でキラキラしてキレイですよね。僕は透明物質が大好きで、そんな透明物質に何か電子の関係する機能をもたせたいと思って、大学院の頃からずっと研究してきました。1993年に助教授として東京工業大学に移ってきたのですが、その時の親分の川副博司教授(現名誉教授)は、ちょうどその頃「透明で電気が流れる酸化物」の研究を始めたばかりでした。それまでも名古屋工大で光機能性ガラスをやっていたのですが、東工大でも大好きな透明物質の研究を続けることができたんです。

そこで、IGZO(イグゾー)半導体につながる透明アモルファス酸化物半導体を
発見したのですね?

東京工業大学フロンティア研究機構 教授細野  秀雄

透明アモルファス酸化物体の研究を始めたのは、現在、高知工業高等専門学校 物質工学科教授の安川雅啓(やすかわ まさひろ)君の実験結果が得られた時からです。結晶の新しい透明酸化物導電体を探していたところ、たまたま得られた銀アンチモネート(AgSbO3)のアモルファスの薄膜が結晶とあまり遜色ない電子の移動度をもつことを発見したんです。アモルファスとは、非結晶、つまり原子が規則的に並んでいないということです。実験的にはX線回折でシャープなピークが示さない物質です。当時は、結晶シリコン(Si)のように原子がキレイに並んでいる物質でないと電子は動きにくい(電気は流れない)というのが常識でした。アモルファスシリコンの研究は盛んに行われていましたが、結晶に比べてずっと電子がずっと動きにくいことがわかっていました。そして、アモルファス酸化物が優れた半導体になることは、知られていませんでした。
 だから、たとえアモルファス酸化物で半導体になる物質をつくったとしても、「どうせ特性は結晶よりも格段に悪いだろう」と考えて、それ以上追及しないのが普通だったと思います。でも、僕は「あ、これだ!」と直感して、どうしてこのような現象が起こるのか考えて、直ぐにモデルを思いつきました。これが、その後IGZO半導体を生み出すことになる「アモルファス酸化物でも結晶と同様に、電子がよく動く物質系」に関するモデルです。簡単に説明すると、これまではスムースに電子が動くためには、結晶シリコンのように「原子がキレイに並んでいなくてはならない」と考えられてきました。でもキレイに並んでいなくても、電子の動く金属イオンの軌道(電子が入ることのできる空間)が、うまくつながっていればいいのだと考えました。原子の軌道をパチンコ玉に例えると、わかりやすいです。パチンコ玉でつくった数珠があるとしましょう。数珠が真っ直ぐに並んでいる状態が結晶で、ぐちゃぐちゃに乱れた状態がアモルファスです。しかし、パチンコ玉のように、電子の軌道が球状であって、かつ隣と接していれば、乱れても電子がそんなに動きにくくなることはないのです。原子の軌道にはいろいろな形があるので、この形が重要だということになります(コラム1参照)。

【コラム1】アモルファス(非結晶)状態でも電気がよく流れる物質がある理由

  共有結合性
シリコンの場合、方向性が大きい
イオン結合性
金属イオン(同期表の周期≧5)、等方的
結 晶 結 晶 結 晶
アモル
ファス
アモルファス アモルファス
  共有結合性とイオン性の半導体の電子の通る道(伝導体の底)
イオン結合性半導体では、結晶でもアモルファスでも金属の丸いS軌道が重なっている。これに対して共有結合性になると軌道の形に向きがあるので、結晶では軌道がぴったり重なっているのが、アモルファスでは重なりが大きくずれてしまう

原子はそれぞれ決まった数の電子をもっています。それらは、軌道と呼ばれる小部屋に分かれて入っています。軌道にはさまざまな形があって、どういった形の軌道をもっているかは原子ごとに決まっています。原子と原子が結合するというのは、この軌道どうしが重なり合うことで、軌道の重なりあったところを電子が動いていくので、電気が流れます。
例えば、半導体としてよく使われているシリコンの場合、結晶状態では右図の左上のような軌道の重なり合い方をしています。シリコンの軌道は方向性をもっているので、アモルファス(非結晶)になるとその重なりは小さくなってしまいます。そのため、電気の流れやすさは、結晶にくらべてずっと悪くなってしまいます。
一方、s軌道のような球形の軌道で結合をつくっている物質の場合(上図右)、それが空間的に大きく広がっていれば、アモルファスになり原子の並び方が不規則になったとしても、電子の通り道である軌道の重なりにあまり影響がありません。その結果、アモルファスでも電気がよく流れるのです。細野教授は、このことに気づき、こうした軌道をもつ原子の組み合わせを発表したのです。

原子の電子軌道の種類と形

原子の中の電子はそれぞれで決まった形の軌道の上を動いている。

原子の電子軌道の種類と形

出典:「透明金属が拓く驚異の世界」(細野秀雄・神谷利夫著)、サイエンスアイ新書

すでに実用化されていますね。

IGZO(イグゾー)のことですね。インジウム 原子(Indium) 、ガリウム原子(Gallium) 、亜鉛原子(Zinc) 、酸素原子(Oxygen) から構成されている酸化物半導体で、タブレットPC、スマートフォーン、最近では大型の有機ELテレビの駆動に使われ始めたようです。1996年に「アモルファス酸化物が結晶に匹敵する大きな電子移動度をもつ原理」を発表したとき、僕はどのような金属元素の酸化物が、アモルファスでも高い移動度をもつことができるかについても具体的に論文で発表しました。その中には、もちろんIn、Ga、Znも入っていました。IGZOは簡単に緻密なセラミックスができるので、大きなガラス板の上にスパッターリングという汎用な方法で薄膜をつくることができます。こういうこともあって実用に繋がるのが早かったのだと思います。

発表した時の世界の反応は、やはりすごかったのでしょうか?

東京工業大学フロンティア研究機構 教授細野  秀雄

それが、全然でした(笑)。1995年8月のアモルファス半導体国際会議(神戸)で初めて発表したのですが、当時はアモルファスシリコンが全盛の頃ですから、800件ほどの発表論文の中にアモルファス酸化物は私の1件だけ。まったくといってもいいほど反響はありませんでした。ところが、2004年にNature誌に、透明アモルファス酸化物を使って薄膜トランジスタ(TFT)を作製すると、アモルファスシリコンのTFTよりも10倍以上の移動度が得らえるということを、IGZOを例にして発表した後は、反響が全く違いました。世の中が、もっと移動度が高くて、簡単に作れるTFT用の半導体材料を求めていたのです。1995年の会議の発表をよく憶えていた研究者が欧州にいて、その人が組織委員長を務めた10年後の2005年、同じ国際会議(リスボン)でアモルファス酸化物半導体について、基調講演をやることになった。その時は、 “This is a kind of revenge of my talk in the conference in 1995 (これはある意味で、10年前のリベンジです)” という枕を振って講演を始めました。感慨深かったですね。

今後、どのような展開を考えているのでしょうか?

2000年頃からフレキシブルエレクトロニクスといって、折り曲げ可能なトランジスタなどがつくられるようになりました。有機物半導体でつくられることが多いのですが、アモルファス酸化物もフレキシブルな素材として、注目されるようになりました。特に、アモルファス酸化物は、有機物半導体よりも移動度が高く、化学的にも安定という有利な特徴を備えています。現在、IT機器は高精細化が進んでおり、それに伴って電子移動度が高い物質が必要になっているのです。その上、透明であることは、ディスプレイに使う半導体にはとても有利な性質です。
 僕自身は、この透明アモルファス酸化物半導体を使って、大型の有機ELディスプレイを動かしたいと思っているんです。有機ELディスプレイは、液晶に代わる次世代ディスプレイとされていますが、現在の技術では、画素ごとのバラつきや安定性に加え、液晶のように大面積に対応できないなどの技術的な壁があります。この問題を、透明アモルファス酸化物半導体を中心とした新しいコンセプトの材料を使って解決できるのではないかと思っています。

「大学発の技術だ」と言ってもらえたら

日本の大学や研究所で開発された基礎研究の成果の実用化に、日本の企業がもっと積極的になってくれるといいんだけどね。その時に、「これは大学発の技術だ」と言ってもらえたら、研究者も学生も研究開発のモチベーションが上がるよね。

100年来のアンモニア合成法を変えるC12A7エレクトライド触媒

「アンモニア合成法は呪われているから、手を出さないほうがいいなどと、触媒の専門家の間ではいわれているそうです。でも、電子を高濃度にドープしたC12A7(C12A7エレクトライド)が電子をアルカリ金属のように放出しやすいのに、素手で触っても全く問題がないほど安定というユニークな性質があることを突き止めました。この物質ならいけるはずだと思いましたね」

細野教授の材料研究といえば"これ"という代名詞的な物質があるそうですね。

C12A7(12CaO・7Al2O3)C12A7(12CaO・7Al2O3

実は、30年くらい研究を続けているマスコット物質があるんです(右図)。C12A7(12CaO・7Al2O3)というアルミナセメントの構成成分の物質で、これももちろん透明(粉末では白)です。これが面白くて興味が尽きないんです。まるで、「おもちゃ箱」みたいなんだよね。例えば、C12A7はもともと絶縁体ですが、その結晶構造の中に入っている酸素イオンを電子で置換するという方法を使って、電気的な性質を変えることを試みました。そうしたら、まず透明な半導体になり、続いて金属(温度を下げると電気抵抗が下がる)になり、さらに、2007年には超電導にもなったんです。

学生実験に不思議が隠れていた

名古屋工業大学の助手になりたての頃、学生実験の面倒を見ていました。隣の研究室の親しい同僚が面倒を見ていたのがC12A7を合成する実験だったのです。油を売りに行って眺めていると不思議なことに気づきました。炭酸カルシウムとアルミナを混ぜて融かして固化してつくるのですが、高温の溶けた状態から冷却して固化する際に、本来なら無色になる温度なのに、かなり濃い黄色をしていたのです。また、急冷して透明なガラスにしたものを、もう一度加熱すると、試料全体から膨大な数の泡(中身は酸素ガス)が発生したのです。どうしてこんな変哲もない物質で、こんな現象がおこるのか知りたくて、自分の研究テーマとして取り上げるようになったわけです。学生実験に新しいことが隠れているなんて、意外に思われるかもしれませんが、案外、身近なことで分かっていないこと少なくないと思います。以来、このセメント物質を相手に、とにかくいろんなことを試してきています。この物質は今では多機能性物質としても少しは有名になったのは、僕のおかげだと思っているんだ(笑)。

そのマスコット物質が、今度は、アンモニア合成触媒になったんですね。

東京工業大学フロンティア研究機構 教授細野  秀雄

アンモニア(NH3)が、肥料の原料として重要な物質だということはよく知られていますが、近年は燃料電池に使われている水素(H2)の貯蔵物質としてその価値が高まっています。水素は気体なので体積が大きくて貯蔵や運搬が不便ですが、液体のアンモニアの形で貯蔵しておいて、必要な時に水素に分解するのであれば、この問題は解決されるからです。アンモニア合成は、100年ほど前から、ハーバー・ボッシュ(HB)法で行われています。これまでに新しいアンモニア合成法の開発に取り組んだ研究者はいましたが、誰もその置き換えには成功していません。それで、呪われているといわれているようです。
 どうしてこれほどまでに難しいのかというと、アンモニアを合成するには、最初に、その原料である窒素分子(N≡N)の強い三重結合を切って2つの窒素原子にしなくてはならないからなんです。私はそのためには、電子をアルカリ金属のように渡し易く、しかも窒素と反応しないという2つの相反する性質を物質が有効だと考えました。このC12A7エレクトライドは、これらを満足する物質なので、その表面に本学の尾崎・秋鹿名誉教授によって提唱されたルテニウムの微粒子を担持したものを触媒として試したのです。その結果、アンモニアの合成反応がスムースに進むことが分かりました。(コラム2参照)。

12CaO・7Al2O3

【コラム2】

アンモニアの製造は、現在も100年前に工業化されたHB法で行われています。この方法は、これまで小さな改良が加えられてきましたが、200~1000気圧、400~600℃の高温高圧条件でなければ合成反応が進まないため、依然として大量のエネルギーを必要とします。そこで、細野教授は、より穏やかな条件でのアンモニア合成を可能にする触媒の開発を目指しています。触媒の元となった物質C12A7エレクトライド(電子を高濃度にドープした12CaO・7Al2O3)は、石灰とアルミナからできているセメント物質で、たくさんのカゴ状の構造からできています。このカゴの中にはもともと、酸素イオン(O2-)が入っていますが、金属チタンと一緒に加熱すると、酸素イオンはチタンと結合して簡単に抜け、その後には電子(e-)が入ってきます。この電子がとても外部に受け渡されやすいので、窒素分子(N≡N)に移って強い三重結合を切ることができるのです。その結果、この触媒を使えば、1気圧、350 ℃でのアンモニア合成が可能です。細野教授は、この温度はもっと下げられるのではないかと考えています。

この物質はカゴ構造をもっていて、その中にいろいろな原子や電子を閉じ込めることができます。電子の場合、閉じ込めたといってもフワッと入っているので、外に出やすい。この性質を利用するのがアンモニア合成触媒です。これによってこれまでより一桁高い効率でアンモニア合成ができそうなんです。

100年変わることのなかったアンモニア合成触媒の開発は、難しかったのでは?

もちろん簡単ではありませんし、未だ私たちの研究も基礎的部分がうまくいっただけです。HB法はそう簡単に置き換えられるほどやわなプロセスではありません。化学プロセスの金字塔とも言われているくらいですから。我々は、常圧下でなるべく低温という温和な条件で、水素が入手できるところでオンサイトで、アンモニアを合成できる方法を確立したいのです。この物質を触媒にしたいと思ってから、失敗続きで実現するまでに10年くらいかかりました。今回対象としたアンモニア合成では、電子の受け渡しがポイントなので、窒素と触媒が接触する表面が重要です。ですから、とにかくC12A7エレクトライドの表面を原子レベルで観察してやろうと思ったのです。周りからはこんな劈開もしない複雑な結晶構造の物質では無理だろうといわれましたが、当時、博士課程3年生だった戸田喜丈君(現特任講師)が頑張ってくれて、2010年にはトンネル顕微鏡を使って表面構造が観測できるようになりました(表面科学のエキスパートの平山博之先生には大変お世話になりました)。それで、これまで触媒としてなかなかうまくいかない理由がわかった。実は、表面のカゴが壊れて電子が入っていなかったんです。その後、いったん適当な温度域で加熱すれば、カゴ構造を再構築できることがわかったので、本格的にアンモニア触媒として試すことにしました。それで、触媒の専門家にも参加してもらおうと、FIRST プロジェクトを始める時に、応用セラミックス研究所の原亨和(みちかず)さんに「手伝ってくれない」と言いに行ったら、先ほどのアンモニア触媒は呪われている話をされたんです(笑)。でも、僕が考えている電子の受け渡しのメカニズムを話したら、直ぐに「やってみましょう」ということになりました。原さんはアンモニア合成に魅せられて触媒の研究に入った人だったんです。こうして、アンモニア触媒開発は進んできました。

実はありきたりの物質

C12A7は、ありきたりのセメント物質なんだよね。長年研究してきた僕には、まだまだ新しいことが出てくる「おもちゃ箱」なんだっていうのが感覚的にわかるけれど、2000年にJSTのERATOプロジェクトを始めたとき、博士研究員にセメント物質で電子機能性を発現させたいといっても、言われた方は破天荒な話だと訝るよね(笑)。この4月から九州大学の教授になった林克郎さんが、このテーマを担当したのだけど、当時は、成果が得られるか本当に不安だったと思うよ。
超電導体も新しいアンモニア合成触媒も珍しくもない物質に、常識はずれの機能を発見したわけ。僕の仕事の多くにそういう側面があるので、自分でこれこそはと思う論文を投稿すると、理解が得られず最初は"却下"の通知が来ることもしばしば。その都度、必要なデータを揃え、誤解を解くように論理を組み立て直します。根気も必要なんだよね。

FIRSTも終わって、道半ばの研究を今後どのように進めていくのでしょうか。

東京工業大学フロンティア研究機構 教授細野  秀雄

2012年から文科省の「元素戦略プロジェクト」を進めています。元素戦略とは、持続的な社会を可能にするための新材料の開発戦略です。それから、昨年10月からJSTの新プログラム ACCELの一号課題に選定された「エレクトライドの物質科学と応用展開」を始めました。僕自身は、もうプロジェクトに縛られることなく自由に研究したいと思っていましたが、そういうわけにもいかないようです(笑)。ただ、元素戦略という言葉によって、僕が今までやってきた材料研究すべてが1つになると思っていて、超電導も透明酸化物半導体も触媒も続けていきます。
「元素戦略プロジェクト」では、新たな物質・材料研究のあり方を提案していきたいと思っています。そのためにメンバーを30代、40代の若手にしたり、高エネルギー加速器研究機構、物質・材料研究機構や東大物性研の計算物質科学イニシアチブと確り連携して研究を進めています。結構、面白い組織ができたと思っています。このスパンは約10年なので、すぐに成果が出るテーマを取り上げていませんが、必ず面白い成果が生まれると思っています。後者のACCELの方は、前者と違い自分の研究グループがコアです。

これほど多岐にわたる研究成果を出してこられたわけを、
ご自身はどう考えていらっしゃいますか?

大した成果はまだでていないと思いますが、心がけているのは物質を眺めるときの大局観です。その物質が、全体のどういうところに位置するのか。特殊例なのか、一般例なのかというところを的確にとらえていくのが重要だと思います。そこは、単なる勘だけではありません。僕は有機化学、無機化学、固体物理、材料…と広く学んできたから、けっこう基礎知識があると思いますよ。これらをフルに動員して考えることにしています。

最後に、ご自分を材料科学者と呼んでいるそうですね。聞き慣れませんが。

僕は、もともと化学が専門です。でも、固体物質の研究をしていると化学も物理も関係してくるから、分ける必要を感じなくなって「科学」というようになりました。
 僕自身は、もともと材料をやろうという強い意志はありませんでした。名古屋工業大学の助手に採用して頂き、阿部良弘教授(現名誉教授)の下で働くようになって、新しい材料を開発するとこんなに世の中に大きな影響を与えられるものかと感じる出来事があった。これをきっかけに、材料は凄いと思うようになり、自分の進む道に選びました。さらに、材料への意識が大きく変わったのは、娘が生まれた時です。材料の世界では、新しい材料を「次世代材料」というでしょう。それって、自分には当面は関係ないってことですよね。でも娘が生まれた時、これが“次世代”なんだと実感した。それで、材料研究は世の中の役に立つ、生きるために必要な研究(Essential for Life)だと、材料に関わっていることを誇りに思うようになりました。それで、僕は、自分を材料科学者ということにしているんです。

若手と真剣に向き合うと…写真左は研究室の飯村壮史助教

若手と真剣に向き合うと…

今の若い研究者は優秀だよ。それに、よくできる若手ほど生意気だね。こっちも、負けてはいけないと、ディスカッションで真剣に向き合うとへとへとになる。こちらは寄る年波でだんだんパワーがなくなっているから(笑)。でも、まだ負けてはいられない。研究は本当に面白い。パチンコだったら2日くらいで飽きてしまうけど、研究は飽きないね(笑)。

〜インタビュアーの一言〜

いずれの研究成果も、細野教授が物質の性質を的確にとらえ、そこに手を加え、新たな機能を引き出した結果として生まれたのだということがわかりました。そして、こうした物質に秘められた機能をとらえる鋭い目は、科学分野を広く学んできた細野教授固有のもののようです。この鋭い目は、今度は物質のどんな機能を見つけてくれるのか、大いに期待しています。

細野秀雄(Hideo Hosono)東京工業大学フロンティア研究機構 教授

細野 秀雄 Hideo Hosono)

東京工業大学フロンティア研究機構 教授

  • 1953埼玉県生まれ
  • 1977東京都立大学 工学部 工業化学 卒業
  • 1982東京都立大学大学院 工学研究科 工業化学 博士 修了
  • 1982名古屋工業大学 助手
  • 1988バンダビィルト大学 博士研究員(~1989)
  • 1990名古屋工業大学 助教授
  • 1993東京工業大学 助教授
  • 1995岡崎国立共同研究機構 分子科学研究所 助教授
  • 1997東京工業大学応用セラミックス研究所 助教授
  • 1999東京工業大学応用セラミックス研究所 教授
  • 2004東京工業大学フロンティア研究機構 教授
  • 2012東京工業大学元素戦略研究センター長

2014年9月掲載