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最近の研究成果
 

地球シミュレータによる準テイラー状態の地磁気とその逆転の解明 (/05/07/15)

<大学院理工学研究科  教授  本藏義守>

 高橋 太 (日本学術振興会特別研究員,JAXA/ISAS),松島政貴 (本学助手),本藏義守(本学教授,理事・副学長)は,これまで長い間地球物理学上の難問とされた地磁気生成と地磁気逆転のメカニズムをついに解明し,Science に発表した.この成果は,Science の “News of the Week” でも取り上げられ,高く評価されている.

 本研究では,地球シミュレータを用い,これまでにない高解像度の地球ダイナモのシミュレーションを行った結果,地球中心核における電磁流体プロセスの帰結として地磁気生成と地磁気逆転が自然に理解できることを示している.この研究は,単に磁場生成・維持を示すだけではなく,地球に即したダイナミクスの下での地球ダイナモの特徴を世界で初めて示したという点でユニークである.つまり,地球の中心核では粘性が非常に小さいため,準テイラー状態というダイナミクスが出現することが理論的に予想されるが,数値シミュレーションにおいてついに準テイラー状態が実現され,その状態における地磁気の振る舞いが解明できたというわけである.シミュレーションにおける地磁気は実際の地球磁場の特徴を備えており,地磁気逆転も自然に起こる.さらに,高緯度の磁束斑が極へ移動して消滅し,中低緯度の逆向きの磁束斑が極へ移動することにより,地磁気が逆転するという地磁気逆転のプロセスも明らかになった.

 本研究グループは,21世紀COEプログラム「地球:人の住む惑星ができるまで」の中で,地球上の生命を有害な宇宙線,太陽風などの被爆から守る地球磁場の発生・維持という研究課題を担っており,この意味でも重要な成果である.ところで,現在,地磁気は減少し続けており,このままでは地磁気が消滅し有害な放射線に曝されることはないのかと心配されるかもしれない.現在の地球の磁場では,中低緯度の磁束斑の極方向への移動が見られないことから,本研究で示した地磁気逆転時の振る舞いではない.このことから,地磁気逆転に向けた地磁気の減少ではなく,やがて増加に転じると予測できる.

 今後の研究の方向としては,21世紀COEプログラムのさらなる展開として,地球だけでなく,他の惑星の磁場もターゲットとなる.惑星探査の一環としての惑星磁場計測と合わせて,惑星内部のダイナミクスおよびその進化の解明が課題となる.さらに,火星,金星,月などに,過去に磁場があったかどうかという問題も,これらの進化を含め,今後の研究課題となる.

なお,Scienceに掲載された内容については,以下のURLをご覧ください.
http://www.sciencemag.org/cgi/content/short/309/5733/459


【用語解説】
地球ダイナモ:電気伝導性のある地球中心核(流体)の運動による地球磁場生成・維持機構.

地球シミュレータ:数年前まで世界最速を誇った我が国のベクトル型並列スーパーコンピュータ.

準テイラー状態:地球の外核(流体核)の粘性が非常に小さく,かつ慣性を無視することができる場合,外核内の回転軸に平行な円筒面に働く磁気トルク(回転モーメント)は0になる.これをテイラー状態という.テイラー状態からわずかにずれて,慣性トルクと磁気トルクが支配的で,粘性によるトルクが無視できる状態を準テイラー状態という.このとき,円筒面はねじれ振動する.

地磁気逆転:地磁気の向きが逆転すること.これまで,数十万年程度の平均間隔で不規則に地磁気の逆転が起こってきた.地磁気は,現在では北を指すが,逆転すると南を指すようになる.

磁束斑:地球外核表面で出入りする磁力線の束の局在場所.



本件に関する問合せ先 大学院理工学研究科  教授  本藏義守
TEL  
E-mail yhonkura@geo.titech.ac.jp 
FAX

 
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