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最近の研究成果
 

従来よりもはるかに小さな携帯機器用燃料電池を実現可能な技術を開発 (/05/12/27)

<炭素循環エネルギー研究センター  助教授  伊原 学>

 本学炭素循環エネルギー研究センター(理工学研究科化学専攻)の伊原学助教授,長谷川真一修士課程1年らによる研究グループは,従来よりもはるかに小さく軽い携帯型電子機器用燃料電池を実現可能な燃料電池技術を開発した.

 燃料電池ではふつう,水素と酸素を反応させて水を生成する反応の過程で電気を取り出す.燃料電池セルは燃料極,電解質,空気極の3層構造となっている.燃料極では水素と酸化物イオンが反応し,水と電子が生成される.電子は外部回路を通って空気極に移動する.空気極では酸素と電子が結合して酸化物イオンが生成される.酸化物イオンは電解質を通過して燃料極に移動し,水素と結合して水と電子を生成する.この反応を繰り返すことで発電を継続する.

 燃料電池の種類は多岐に渡る.電解質,燃料極,空気極の材料が異なる,多種多様な燃料電池が研究されてきた.例えばノートパソコンや携帯電話機などの携帯型電子機器に向けた燃料電池としては現在,メタノールを使った燃料電池が企業で盛んに研究されている.ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)と呼ばれる.DMFCでは水素の代わりにメタノールと酸素を反応させ,水と炭酸ガスを生成させる過程で電気を取り出す.メタノールを燃料に使うのは,水素を最も多く含む液体であるからだ.水素を直接扱うよりも,取り扱いが簡便になる.ただしDMFCには,発電効率があまり高くない,ポンプなどのメタノールを供給する機構が必要,耐熱性が低いといった課題がある.また反応温度が80〜100℃と低く,高価な白金を触媒として必要とする.

 伊原助教授らが開発した燃料電池技術は,固体酸化物燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)を基本とする.SOFCは燃料電池の原理としては発電効率が最も高く,しかも全固体なので耐久性が高いとされている.ただしこれまでは電力用途を想定した据置き型燃料電池として主に研究されており,携帯型電子機器用途を想定した研究はあまりなかった.
 SOFCが携帯型機器に適さないとされている理由の一つに,動作温度が800〜1000℃と高いことがある.ところが伊原助教授らは,動作温度が高いことは欠点ではなく,さまざまな物質を燃料として使える可能性があること,耐熱性が高いことから,工業的には長所だと考えた.また最近は断熱技術が著しく進化しており,断熱構造が小型化を阻害することにはならないだろうと見込んでいる.
 そこで酸化物導電性セラミックスを電解質とする小型の燃料電池セルを試作した.燃料電池セルは直径20mm,厚さ0.3mmほどの小さな円板である.燃料極にはニッケルとGDC(ガドリウムドープセリア)の多孔質構造を用いた.燃料はプロパンガスなどの炭化水素ガスを熱分解して得られた固体炭素である.電力密度は最大52mW/平方センチメートルであり,初期段階の試作品であるにもかかわらず,DMFCとほぼ同等の出力を得た.固体はエネルギー密度が高く,燃料タンクと燃料ポンプが必要ないことから,今後の改良により,DMFCを上回る出力密度と小型化が期待できる.
 試作した燃料電池セルは,燃料の炭化水素ガスを熱分解してから発電させる.発電中はガスを供給する必要はない.熱分解に要した時間が5分間のとき,発電が最大83分間持続した.熱分解と発電のサイクルは6回まで実行し,安定した発電特性を示すことを確かめた.

 なお開発した燃料電池セルは,化学反応の過程が既存の燃料電池とは大きく異なる.炭化水素の水素ではなく,炭素を燃料として使う.炭素が酸素と反応して炭酸ガスを生成する過程で電気を取り出す.この独特の発電原理も,伊原助教授らのグループが開発した.具体的な反応過程としては最初に炭化水素ガスを燃料極で熱分解し,炭素を析出させる.燃料極では炭素が酸化物イオンと結合し,炭酸ガスと電子を生成する.電子は外部回路を経由して空気極に達する.空気極の酸素は,電子と結合して酸化物イオンとなる.この酸化物イオンが電解質を通過して燃料極に移動し,炭素と結合する.この反応を繰り返すことで発電を継続する.

図1 開発した燃料電池技術の原理.プロパンガスなどの炭化水素ガスを熱分解して炭素を燃料極に析出させる.この炭素を酸素イオンと結合させ,電気を取り出す.リチャージャブル・ダイレクトカーボン燃料電池(RDCFC:Rechargeable Direct Carbon Fuel Cell)と呼んでいる.なお炭化水素ガスを熱分解する過程で水素ガスが発生するので,水素の発生器としても利用可能である.


本件に関する問合せ先 炭素循環エネルギー研究センター  助教授  伊原 学
TEL  
E-mail mihara@chem.titech.ac.jp 
FAX

 
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