35 計算工学専攻

[1][2][3]

 

 高度に発達した情報化社会において,計算機システムはあらゆる分野に根幹かつ不可欠な要素となっている。またその処理形態のより一層の多様化と効率化,そして高信頼化が要求されると同時に,人間と能率良く意図伝達を行うためのインターフェースを実現し,知的で高度な情報処理機能を備えることが必要となる。このようなシステムを研究・開発してゆくためには,計算の概念に帰着される情報処理の原理,計算機ハードウェア,計算機ソフトウェア,計算環境,そして推論,学習,認知等,人間の持つ知的能力を計算機に付与する人工知能と,認知工学の学問分野を包括した「計算工学」に関する高度な知識が必要である。

 計算工学専攻には,まず大規模かつ複雑なソフトウェアをいかに効率よく開発実現するかといったソフトウェア環境学やマルチメディア技術,さらに高速・大容量の情報ネットワークなど計算環境学に関する分野がある。またVLSIのレベルからシステムアーキテクチャのレベルまでをカバーする自動設計技術や超高速超並列アーキテクチャなど,計算組織学に関する分野がある。計算機ソフトウェアの重要性が高まるにつれ,その高度化,複雑化,大規模化が急速に進展しているが,そのような状況に対処するため,ソフトウェアを設計し実現するために必要な,抽象化,構造化の手法,アルゴリズム理論などを扱うソフトウェア機構学の分野がある。また知識工学や推論機構,物体や画像を認識する情報認識機構,あるいは自然言語を理解する自然言語理解機構などに関する認知機構学の分野がある。

 本専攻の履修者は,それぞれの研究分野の性格に関連の深い講義を受講すると共に,学際的な幅広い教養を身につけるために,専攻間,研究科間にまたがる共通性の高い講義,そして人文系との境界領域に用意された総合科目と国際的な発表能力を養うための国際コミュニケーション科目を併せて履修されたい。

 また高品質ソフトウェア開発のスペシャリストを育成する「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」も用意されている。

 先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムについては特別教育研究コースのページを参照してください。

○ カリキュラム

 計算工学専攻のカリキュラムは,情報理工学研究科における本専攻の設立理念に基づき,計算工学に関する基盤的な知識から先端的な知識に至るまでの体系的な学習と,先端技術の発展の中核をなす研究者,技術者,行政官として必要な様々な能力開発のために工夫されている。

1.教育の目的

 修士課程,博士後期課程共に,科目の履修と同時に研究論文の作成が義務づけられているが,それぞれ以下の教育を主な目的としている。

 修士課程

1)情報専門分野の中で,自分の研究の客観的な位置が理解できる程度の広い視野と,専門家としての必須の知識を与える。

2)情報専門分野における問題発見・解決能力を与える。

 博士後期課程

1)情報専門分野における深い専門知識を与える。

2)技術的観点に加え,広く社会的観点からも自らの研究専門分野の状況を評価できる能力を与える。

3)問題発見・解決能力に加え,リーダーシップの取れる指導能力を与える。

2.科目の分類

 カリキュラムは,表1に示すような科目により構成されるが,それらは以下のように分類される。

1)基盤的科目

 計算工学の専門的基礎知識を教授する。各講義は計算工学専攻の各学問分野において必要となる,基礎的な事柄について知識単位が整理されている。履修に当たっては,各自の希望分野を考慮しつつも,あまり特定の分野にかたよらず,バランスのとれた総合力を養成することを目的に,科目を選択することが望ましい。

2)先端的科目

 基礎的科目をベースとして,より専門的あるいは応用的,横断的な科目が用意されている。修士課程においては,各自の希望分野を考慮して,また博士後期課程においては,より専門性の高い講義を履修すると同時に,知識の幅を広げることにも留意して修得されたい。

 以上,基盤的科目,先端的科目については,内容に従って以下の4つの専門分野(表2−表5)に分類される。

表2(計算機システム)

(基盤的科目)

計算機アーキテクチャ特論
フォールトトレラントシステム論
オペレーティングシステム特論

(先端的科目)

分散アルゴリズム論
符号理論特論
自律分散システム
データ工学特論

表3(ソフトウェア)

(基盤的科目)

プログラム理論
ソフトウェア設計論
並行システム論
システム検証基礎演習
システム開発プロジェクト総合実験基礎

(先端的科目)

ソフトウェア論理学
ソフトウェア工学特論
情報セキュリティ特論
ネットワークプログラミング特論
ソフトウェア開発演習
ソフトウェアプロジェクトマネージメントと品質管理
システム開発プロジェクト総合実験応用
ソフトウェアテスト演習

表4(人工知能)

(基盤的科目)

知識工学
人工知能特論
自然言語処理特論

(先端的科目)

機械学習
推論機構特論
バイオインフォマテクス

表5(認知工学)

(基盤的科目)

データ解析特論
パターン情報処理
マルチメディア情報処理論

(先端的科目)

コンピュータグラフィックス
ヒューマンインタフェース
音声情報処理特論

これら,表2から表5までの科目の関連を図1に示す。

3)特別教育研究コース科目

 計算工学の先端的技術を実践するために表6の科目が用意されている。

表6(特別教育研究コース科目)

特別教育研究コース科目

大規模知識資源学特論 2
IT実践英語プレゼンテーション
生命知識特論
形式システムバイオロジ

4)推奨科目

 他専攻の科目であるが,自専攻の科目に関連したより広い,あるいはより深い知識を養成するための科目である。理学,工学にまたがる横断的能力,各種の適応領域特有の知識を身につけるよう活用されたい。

表7(推奨科目)

(数理・計算科学専攻)

(情報環境学専攻)

(共通)

計算数理応用-アルゴリズム-
計算量理論
計算機支援数理
グリッドコンピューティング

広領域知識ベース特論

インターネットインフラ特論
インターネット応用特論

5)演習・実験・講究・インターンシップ科目

 学位論文テーマに関連する課題に関する実験,演習や輪講を行ったり,学外機関にてインターンシップを行ったりする。

表8(特別実験)

計算工学特別実験第一
同       第二
 

先導的ITスペシャリスト育成推進プログラムの学生は,

IT実践特別実験第一
同      第二

表9(講究)

計算工学講究第一
同     第二
同     第三
同     第四
同     第五
同     第六
同     第七
同     第八
同     第九
同     第十

6)表10(インターンシップ科目)

情報理工学インターンシップ1A
同            2A
同            1B
同            2B


[1][2][3]