化学研究の高度化に伴い,新規計測法の開発が重要な課題となっている。したがって,化学の最先端を開拓する人材には,先端化学計測の原理の理解,最先端計測装置を用いた実践的能力の習得,化学計測に関する計画立案能力が要求される。計測に関する基礎的・実践的能力を持ち,それを通じて化学をリードできる広い視野を養うために,化学・物質科学専攻に属する博士課程大学院生を対象として本特別コースを設置する。
本コースでの修了を希望する学生は,あらかじめ指導教員および本特別コース担当教員と相談すること。
「先端化学計測特別コース」開講科目一覧
授 業 科 目 |
単位 |
担当教員 |
学 期 |
備 考 |
最先端計測機器概論 |
2−0−0 |
楠見 |
前 |
連絡教員 岩澤,河合 |
計測機器演習第一 |
0−1−0 |
渋谷,長谷川 |
前 |
|
計測機器演習第二 |
0−1−0 |
尾関,植草 |
前 |
|
計測機器演習第三 |
0−1−0 |
草間,大森 |
前 |
|
分離科学特論 |
2−0−0 |
岡 田 |
前 |
O(西暦奇数年度開講) |
物理化学特論第一 |
2−0−0 |
河合,北島 |
後 |
E(西暦偶数年度開講) |
物理化学特論第二 |
2−0−0 |
渋谷,河内 |
後 |
O(西暦奇数年度開講) |
スペクトル解析学特論 |
2−0−0 |
長 谷 川 |
後 |
E(西暦偶数年度開講) |
結晶構造特論 |
2−0−0 |
尾関,植草 |
前 |
|
分子分光学特論 |
2−0−0 |
|
|
2010年度以降休講 |
最先端計測創造特別実習第一,第三 |
0−0−1 |
河内,小國 |
前 |
|
最先端計測創造特別実習第二,第四 |
0−0−1 |
河内,小國 |
後 |
|
最先端計測創造特別講義第一 |
1−0−0 |
未 定 |
後 |
連絡教員 岡田 |
最先端計測創造特別講義第二 |
1−0−0 |
笠井* |
前 |
連絡教員 渋谷,石谷 |
最先端計測コロキウム第一,第三,第五 |
1−0−O |
渋谷,岡田 |
前 |
|
最先端計測コロキウム第二,第四,第六 |
1−0−0 |
渋谷,岡田 |
後 |
|
*非常勤講師
【コース修了の要件】
次の要件を満たした学生を「先端化学計測特別コース」修了と認定し,「コース修了証明書」を発行する。
計測機器演習1−3 |
2科目2単位以上 |
成績優秀者はRAとして採用 優れたプロポーザル提案者に研究費を支給 |
最先端計測創造特別実習1−4 |
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最先端計測機器概論 |
3科目6単位以上 |
|
分離科学特論 |
||
スペクトル解析学特論 |
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物理化学特論第一 |
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物理化学特論第二 |
||
結晶構造概論 |
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分子分光学特論 |
||
最先端計測創造特別講義1,2 |
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最先端計測コロキウム1−6 |
2単位 |
|
先端計測に関するプロポーザルを提出 |
先端化学計測特別コース担当教員
研究科 |
専 攻 |
教 員 名 |
理工学研究科 |
化学専攻 |
渋谷 一彦 教授 |
小國 正晴 教授 |
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河内 宣之 教授 |
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岩澤 伸治 教授 |
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岡田 哲男 教授 |
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石谷 治 教授 |
||
小松 隆之 准教授 |
||
草間 博之 准教授 |
||
長谷川 健 准教授 |
||
河合 明雄 准教授 |
||
北島 昌史 准教授 |
||
大森 建 准教授 |
||
木口 学 准教授 |
||
物質科学専攻 |
江口 正 教授 |
|
藤本 善徳 教授 |
||
尾関 智二 准教授 |
||
植草 秀裕 准教授 |
||
沖本 洋一 准教授 |
【講義概要】
13042
最先端計測機器概論(Scope of Advanced Instrumental Measurements)
核磁気共鳴スペクトル,X線結晶構造解析,質量分析法,表面分析法の基礎から最先端の手法までを概説する。
核磁気共鳴スペクトル(NMR)は有機分子等の構造解析,物性解析の手段として,現在なくてはならないものになっている。今日では複雑な蛋白質の水溶液中での立体構造でさえもNMRで決めることができるようになっている。このような有機分子の構造解析法として最も重要なNMRについて基礎から応用までを概説する。
X線結晶構造解析では,結晶中の原子・分子の配列を三次元的に明らかにする結晶構造解析の手法と,その応用である結晶構造データベースを利用した構造化学について概説する。
質量分析法(MS)は,簡単な分子から高分子(ポリマー,タンパク質等)まで高感度に検出できる。2002年に田中耕一氏らがノーベル化学賞を受賞して注目を集めたマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)もその1手法である。近年,試料導入部,イオン源,検出部,データ処理などの急速な技術進歩に伴い解析法として広く利用されるようになり,今後の発展も期待されるMS法について基礎から応用までを解説する。
光,電子,イオンをプローブとする表面分析法(紫外光電子分光,X線光電子分光,オージェ電子分光,二次イオン質量分析)について,以下の内容につき概説する。1. 表面分析の必要性,2. 表面分析法の原理,3. 表面分析法の応用例。
実験化学で日常的に用いられる分離について,特にクロマトグラフィーなどの流れ分離分析について主に溶液化学と界面化学の観点から解説する。
19001
結晶構造特論(Advanced Course in Crystal Structure Science)
結晶構造およびその解析方法を理解する基礎となる回折理論および対称性について解説するとともに,結晶中の原子や分子の配列がその結晶の物理的・化学的な性質をいかに左右するかについて紹介する。
結晶によるX線の回折
結晶の対称性と空間群
結晶構造解析法
有機分子結晶の構造
結晶相反応
複雑な無機構造(無限周期構造,分子性構造)
不定比性と格子欠陥,構造の乱れ など
13051
物理化学基礎特論
量子化学を基礎として,物質の物理化学的性質の基本を理解する。分子の電子状態,構造,動的性質,光との相互作用について学ぶ。さらに,分子集合体の統計的な取扱いをふまえて,分子集合体の電子状態,電子的性質,金属,半導体等の概念を学ぶ。
- 量子化学の基礎-Pauliの原理再考-
- 分子のエネルギー状態
- 分子集合系のエネルギー状態
19002
分子分光学特論(Advanced Molecular Spectroscopy)
科学のあらゆる分野にとって欠く事の出来ない分光学の基礎について,主として可視紫外領域での吸収,発光スペクトルの解析的方法論を述べると共に,若干の励起状態に関する知識について講義する。
2原子分子の回転エネルギー
回転準位間の遷移選択則とスペクトル
多原子分子の振動スペクトル
2原子分子の電子スペクトル(回転構造,振動構造)
電子の運動と分子の回転運動,振動運動との相互作用
13041
スペクトル解析学特論(Quantitative Analytical Techniques for Spectroscopy)
最先端の計測分析では,測定しただけでは分子情報を十分に得ることはできない。本講義では,スペクトルに代表される多変量データを解析し,混合物中の微小試料に関する情報や,狙った分子情報を定量的に引き出す手法について学ぶ。
Lambert-Beer則の多成分・多波長測定への拡張
多次元空間を利用したスペクトルの新たな表現と理解
Inverse least squares(ILS)法の導入と問題点
主成分分析法(PCA) など
13043, 13044
最先端計測創造特別講義第一,第二
(Specified Lecture on Advanced Instrumental Measurements T and U)
研究所や企業などの現場における最先端計測機器開発に関する外部講師による講義。大学の研究だけでは学ぶことが困難な,先端計測機器開発に対する社会的要請を知り,アカデミアと社会との接点を学び,自らの研究の社会における位置付けなどを再認識する。
最先端計測演習第一〜第三(Practical Exercise for Advanced Instrumental Measurements T〜V)
この演習は,先端計測実験とデータ解析を含んでいる。各自の研究において日常的に利用する機会の少ない装置に触れる機会を提供すると共に,先端計測技術原理が確認できるよう構成されている。これにより,習得した技術や知識を研究に活用することを目標とする。
- 分光計測
- 結晶構造解析
- 表面分析
- 有機構造解析
13045〜13048
最先端計測創造特別実習第一〜第四
(Laboratory Training of Advanced Instrumental MeasurementsT〜Y)
本学では利用できない最先端計測装置や施設を利用して,実習を行う。修士課程では(最先端計測創造特別実習1,2),学外施設の利用方法を習得し,その施設の特徴を理解した上で実験の原理,データ解析を学ぶ。博士課程では(最先端計測創造特別実習3,4),学外設備を利用する研究を主体的に推進する。
履修に際しては,研究計画を予め「計測教育室」に提出し,履修の承認を受ける必要がある。
13521〜13526
最先端計測コロキウム第一〜第六(Colloquium on Advanced Instrumental Measurements T〜Y)
本コロキウムでは,新たな先端化学計測創造を目指して,博士課程学生が定期的に集まり,互いのアイデアを題材に多角的に議論する。その議論を通じてまとまったアイデアをリサーチプロポーザルとして,「計測教育室」に提案することを最終的な目的とする。コロキウムは学年進行と共に開講される。