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細く、しなやかな人工筋肉の大学発ベンチャーを設立

2016.05.19

細く、しなやかな人工筋肉の大学発ベンチャーを設立
―福祉介護パワースーツ、人型ロボット用キーデバイスとして開発、販売へ―

東京工業大学と岡山大学の両大学発ベンチャー企業s-muscle(エスマスル)が4月1日に誕生し、空気圧で動作する細径人工筋肉の販売を開始します。

今回販売を開始した細径人工筋肉は、外径が2~5mmと従来の人工筋肉に比べてはるかに細くしなやかなため(従来市販されているものは外径が10~40mm程度)、これを筋繊維として編み込むことで、軽く、柔らかく着心地のよい介護福祉用サポートスーツやコルセットの実現が期待できます。また、人間と同じようななめらかな動きを行う人型ロボットや超軽量ロボットなど、新しいロボット、福祉機器のブレイクスルーとなり得ます。

7月より人工筋肉のユーザーメーカーや研究機関にサンプル出荷を開始し、用途開拓と実用化を進め、来年度を目標にネット販売を通じた一般の小口ユーザーへの販売も始める計画です。

開発の背景

2011年より、鈴森康一教授(岡山大学(当時)、2014年度より東京工業大学)、脇元修一准教授(岡山大学)、ならびに池田製紐所が協力してマッキベン型人工筋肉[用語1]の研究開発を開始し、細く、しなやかな人工筋肉の開発に成功しました。

その後、東京工業大学と岡山大学が共同で細径人工筋肉の基礎特性と応用に関する研究を進めていましたが、アパレル、福祉介護用具、ロボットを扱う多くの企業や研究者から、この人工筋肉を使いたいとの要望を受け、4月1日に、東京工業大学と岡山大学発ベンチャーとしてs-muscleを設立し、細径人工筋肉の設計、製造、販売、用途開拓を開始しました。

細径人工筋肉の概要

人工筋肉の研究開発にはいくつかの方式がありますが、s-muscleが開発したのはマッキベン型と呼ばれるものです。従来にない、細く、しなやかで、軽く、力の強い人工筋肉で、この特徴を利用すれば、人と接する柔らかな機械や新しいロボット機構など、様々な用途が期待できます。

販売する細径人工筋肉の例

外径は2~5mm、収縮率[用語2]は20~25%、最大収縮力[用語3]は1cm2あたり約30kgfです。
複数の人工筋を束ね、様々な形状の筋肉が構成できます。

販売する細径人工筋肉の例

サポートスーツへの応用

布状に織ることで、柔らかく、軽く、着心地の良いパワースーツやサポータへの応用を目指します。

サポートスーツへの応用

サポートスーツへの応用研究の一部は、戦略的イノベーション創造プログラム(革新的設計生産技術)「東工大―大田区協創による喜びを創出する革新的ものつくり環境の構築と快適支援機器の設計製造技術の開発」outerの研究成果(平成26年度~平成27年度)です。

ロボットへの応用

超軽量/長尺ロボット、人間型筋骨格ロボット、ソフトロボットなど、新しいロボットへの応用が可能です。

ロボットへの応用

今後の展開

サポートスーツ、福祉介護用具、ロボットへの細径人工筋肉の応用を検討するメーカーや研究機関に対して、7月より機能検証用人工筋肉のサンプル出荷を開始します。外径2mm、2.5mm、4.8mmの3タイプを用意し、人工筋肉単体、アセンブル品、駆動装置等、要望に応じた形で販売をします。s-muscleでは、顧客企業、東京工業大学、岡山大学で共同して、細径人工筋肉の設計、開発、用途開拓を進めます。営業、製造など業務の一部は池田製紐所とコガネイに委託します。2017年春には安価な普及用人工筋肉の提供を予定しており、顧客メーカーや研究機関と協力して、細径人工筋肉を用いたサポートスーツ、福祉介護用具、ロボット等の普及に努めます。また、一般の小口ユーザーにもネット販売を開始し、この人工筋肉の普及を図る予定です。

s-muscleの会社概要

社名 :
株式会社s-muscle(エスマスル)
設立日 :
平成28年4月1日
所在地 :
岡山県倉敷市児島唐琴2丁目4番24号
事業内容 :
人工筋肉の設計、製造、販売、用途開拓、技術コンサルティング
資本金 :
81万円
役員 :
代表取締役 鈴森康一(東京工業大学 工学院 教授)
取締役 脇元修一(岡山大学 大学院自然科学研究科 准教授)、清板祝士、河野一俊
監査役 清板雅史
主要株主 :
鈴森康一、脇元修一、株式会社池田製紐所、株式会社コガネイ

用語説明

[用語1] マッキベン型人工筋肉 : ゴムチューブの外周にメッシュを編んだ構造で、ゴムチューブ内部に空気を送ることで軸方向に収縮する。原理は1960年頃に米国で開発され、現在、複数のメーカーが製造している。マッキベン型のほかに、高分子材料を使ったものや静電気力を使ったものなど、種々の人工筋肉が研究されているが、その中でマッキベン型人工筋は唯一実用レベルの力や収縮力が得られている。

[用語2] 収縮率 : 人工筋の収縮した長さを、人工筋肉の元の長さで割った値。例えば、長さ100mmの人工筋肉が収縮して75mmになる場合、収縮量は25mmなので、収縮率は25%となる.一般的には収縮率が大きいほどよい性能といえる。

[用語3] 最大収縮力 : マッキベン型人工筋肉の収縮力は、人工筋肉の伸び量によって変わり、最も伸びた状態で最大の力となる。このときの収縮力を最大収縮力という。最大収縮力は人工筋肉の断面積によって変わり、1cm2あたり約30kgfの力がでる。例えば外径2.5mmの人工筋肉の断面積は約0.5cm2なので、発生する最大収縮力は約15kgfとなる(kgfとは日常でkgと呼ばれる単位と同じ)。

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お問い合わせ先

東京工業大学 広報センター

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

岡山大学 広報・情報戦略室

Email : www-adm@adm.okayama-u.ac.jp
Tel : 086-251-7292 / Fax : 086-251-7294

株式会社 s-muscle

Email : contact@s-muscle.com
Tel : 086-477-5566 / Fax : 086-477-4156

6月9日 「サポートスーツへの応用」に追記を行いました。