ノーベル賞レポート

文化勲章受章記者会見 会見録

大隅良典栄誉教授

大岡山キャンパス百年記念館にて

司会:本日はご出席いただきましてまことにありがとうございます。
ただいまから、文化勲章の受章が決定しました東京工業大学大隅良典栄誉教授の会見を行います。それでは、大隅良典栄誉教授から、受章の挨拶及び研究内容につきまして説明させていただきます。大隅先生よろしくお願いいたします。

文化勲章を受けて

大隅栄誉教授(以下、大隅):昨年度の文化功労者に続きまして、今年度文化勲章の内示をいただきました。大変名誉なことという以外に言葉がございません。
今年度のノーベル賞の受賞に伴う措置だと理解しております。今朝改めて文化勲章ってなんだろうとコンピューターに向かって検索しまして、これまで受章された384名の方々のお名前を拝見し、自分には重すぎる賞だという気持ちがあります。今までと変わりようもない私自身ですが、文化勲章という名前にもありますように、日本がこれからも文化という面で世界に誇れる、より優れた国になりますように微力ながら力を尽くしていきたいと思います。
研究内容に関しましては、ノーベル賞受賞以来、報道関係者の方々には度々お話をする機会がございましたので、今回の記者会見では改めて申し上げることはございません。

色々な会見を終えてみて、“こんなことを言わないといけないといけなかったのかな”という想いがございました。このたびこのような栄誉をいただきましたけれども、生物学はある種のスモールサイエンスであり、研究は個人的な側面もあるのですが、大きく研究を展開するためにはたくさんの方の協力が必要です。私の28年にわたるオートファジー研究を支えていただいた方々のおかげで初めてこのような大きな領域になりました。ここで支えていただいた方のお名前を一人一人申し上げることはできませんけれども、私のかけがえのない研究室のメンバー、それからたくさんの共同研究者の協力があったということをきちんと申し上げることが出来ていないという想いがありましたので、そのことだけ付け加えさせていただきます。

文化としての科学

司会:それではこれからご質問をお受けいたします。今回の受章につきましてご質問のある方は挙手の上、御社名とお名前をお願いいたします。
ご質問のある方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。

記者:(ノーベル賞)受賞後、基礎研究の重要性を繰り返し仰ってきて成果にとらわれすぎないということを仰って来たんですけれども、今回の受章決定を受けて改めてそのことをもう一度お願いできますか。

大隅:科学が役に立たないと言っているのではなくて、もちろんオートファジーの研究が今後人類の役に立つような成果があって欲しいと思っています。ただ、私が申し上げるのは、国全体の雰囲気が効率というのをあまりにも求めすぎていて、それは科学の進歩とはなかなか相容れないものだと思っています。役に立つということは大事なのですが、例えば役に立ったと思ったらとんでもなかったという薬品もたくさんありまして、やはり科学の検証をしながら進めていかないといけません。そういう意味で役に立つということを軽率にいろんな物事(を考える際の尺度)に使わないことを特に若い人に言いたいと思います。そして(科学という)人間の知的な財産が増えることの重要性を、もちろん政府もそうですけれども、国民の方に少しでも納得していただいて、そういう研究者がいることを誇れるようなそういう社会になって欲しいと思います。

受章の喜びを語る大隅栄誉教授

受章の喜びを語る大隅栄誉教授

記者:(ノーベル賞)受賞決定後の記者会見で、科学としての文化ということを仰っていました。せっかくの文化勲章ですので、改めて、その点をもう一度。

大隅:科学としての文化ではなく、文化としての科学です。たとえば、たくさん天文学のファンがいますけれども、天文学が人間の役に立つから天文学者になっているというわけではないと思います。サイエンスを理解したいっていうのが文化になったらいいと思います。生物学は本来、植物学の流れがあって身近なものですが、人間も動物なので、医学の領域と生物学の領域とが非常に接近してきました。今は医学に結びつくものが生物学、というように矮小化された生物学のイメージが広がっている感じがします。私は植物が大好きで植物からたくさんのことを学んでいます。そういう意味で植物も含めて生物を理解しようというようなことがあるといいなと思います。

記者:今月初めにノーベル賞を受賞されて、発表以降とてもお忙しくお疲れじゃないかなと思いますが、いかがですか、この1か月間。

大隅:こんなに大変だとは思いませんでした。そんなに夜遅く帰るわけじゃないのですが、家に帰るともう何もできないなと。やっぱりいろんなプレッシャーを感じながら生活していると感じています。

記者:鶴保科学技術政策担当大臣が先生のご受賞を機に、どうしたら世界に誇れる研究者が育つのか検証を始めているということはお聞きになっていますか。

大隅:具体的には存じあげません。

記者:そういう動きが政府の科学技術の司令塔の大臣から出てきます。その辺の動きに対して、もう少しこういうところを考えてほしいというところがもしあればご指南いただければと思うのですが。

大隅:そういうことも色々と調べていて、これまでのノーベル賞受賞者も言っていますが、私もそういうことが出来ないかと考えています。私の受賞を社会的に大きく取り上げていただいて感謝を申し上げます。ただ、お祭りみたいにノーベル賞が取り上げられて、数か月間はお祝いムードが広がるということだけでなくて、少しずつでも大学での研究や子供たちに影響があったら嬉しいと思います。小学生、中学生が会見を見て、「人がやらないことをやるのは素晴らしいと思った」という感想を身近に聞いていて嬉しいことだと思っています。先ほどの質問ですけれども、内閣府が主導して議論して具体化することに関しては非常にありがたいと思っています。ただ、政府主導だけでは進まないのではないかという想いもあって、社会全体が支えるようになってほしいと思います。アメリカは大金持ちの寄付によって大学の研究が支えられていますが、日本は違います。政府がたくさんお金を出してくれたから安泰だろうというわけではないと思いますので、そういう努力をしていきたいと思います。

記者:昔話になりますが、先生が東大の駒場キャンパスで最初の研究室を持たれた時、近くにいらした先生に聞いたら、先生が自転車に乗って出かけていらしたと。その話を語ってくれた先生は“どこかで誰にも邪魔をされずに自分の研究のことを考えていたのではないか”と仰っていましたが、先生は自転車に乗ってどこに行かれていたんですか。

大隅:日夜、研究のことばかり考えていたわけではありません。

記者:当時、顕微鏡を覗く以外にも色んなことを考えていたと思うのですが、一番興味があったこと、考えていたことはなんだったんでしょう。

大隅:研究は一直線に進むものではないので、あるところまでいったら止まってしまうということの繰り返しなんですよ。知りたいこと、例えば分解の仕組みだとか、どこから攻めるかっていうアプローチはそんなに単純でありません。私の場合は非常にラッキーでいろんなことが前に進んでいきました。

会見場に集まった報道陣

会見場に集まった報道陣

記者:うまくいかないとき、成果をすぐ求められて自分の職を失うかもしれないという状況で気持ちがくじけてしまう若い研究者もいると思うんですけれども、先生がめげずに前を向いてやってこれた理由はなんでしょう。

大隅:あまりくよくよしなかったというか、ある種のいい加減さが大事だったんだと。研究は“こうしたら必ずこうなる”っていうのが分かれば、研究者はみんなそれをやりますが、そういうことはないのが科学なわけで、追い詰められないような、そういう研究者たちが社会で尊重されるようなことが大事だと思います。効率(という物差し)でサイエンスは測れないので、日本はこれだけ豊かな国になったわけですし、社会に余裕があったらいいなと思います。研究者には時間と精神的な余裕が必要で、それは研究費と同じくらい重いことだと思っています。

基礎研究の重要性

記者:ここ数日の新聞をご覧になっていてお気づきになられたかもしれませんが、ノーベル賞受賞者の小柴昌俊先生が作られた基礎科学財団が来年解散する予定です。こういうことを考えても、なかなか国民が基礎科学を支持するというのはまだまだ道のりが遠いと思いますが、いかがでしょうか。

大隅:私はそんなに悲観していません。もちろん一気に変わることはあり得ませんので、そこは地道に色んな人が色んな努力をしていく以外にはないと思います。大学の運営が財政的に厳しい状況なので、企業との連携が必要です。共同研究して数年後に成果が出るからお金をちょうだいという共同研究の関係ではないような、社会的な連携ができないかなと思っています。生命科学に関して言えば、企業も1年、2年といった期間で成果を求めすぎて、研究者のポテンシャルも下がっているのではないかと思っています。大学と連携しながら、情報交換なりの交流がある社会であってほしいと思いますが、生命科学の分野ではそうした関係が希薄です。グローバル化が進んで買収で解決する傾向にあります。日本の研究力の低下につながるのではないかとこの1年危惧しています。

記者:受賞後、まだ故郷の福岡に帰られていないと思いますが、今後帰郷したらお会いしたい人はいらっしゃいますでしょうか。

大隅:福岡っていう土地柄、とてもお祭りが好きなので、騒がしくなると思います。私の高校の同窓生、小学校、中学校、音信が途絶えた人なども含め、全世界からお祝いをいただいており、幸せに感じております。皆さんにお会いできればいいなと思います。

記者:今会いたい人は何人くらい?

大隅:何人くらいというのは難しいですね。私もこの年なので、恩師は亡くなられた方もいらっしゃいますので。同窓会には100人くらい来るのでは。

記者:母校の福岡高校を始め、小中学校で先生のお話を伺いたいというお話もあると思いますが、そういうお話をできる機会はありそうでしょうか?

大隅:実は母校の福岡高校の学生10人くらいと最近話しました。そういうジェネレーションの方とお話するのはとても新鮮で、(彼らも)真剣に聞いてくれました。来年には、福岡高校で話をすることになっています。

記者:福岡高校の学生とどんなことを話したのか教えていただけますでしょうか。

大隅:オートファジーの勉強を事前にしっかりしてきていて、高校生なのに大学院生がするような鋭い質問をしてきました。やっぱり若い人っていいなと。研究に関してだけではなくて人がやらないことに関する質問とかも含め、非常に真面目な質問でした。

記者会見の様子

記者会見の様子

記者:基礎研究への懸念を表明されていますが、具体的な打開策やお考え、お知恵があれば伺わせていただけませんでしょうか。

大隅:“こうしたらきっと良くなる”という策はありません。私もどこから手をつけたらよいか分かりませんし、大学だけがすごく良くなるということではなく、高校生が大事なんじゃないかという話もあって、それなら中学生、小学生も大事なんじゃないかと。掘り下げてみると教育体系そのものまで広がります。ただ、一つ言えることは、大学の教授が楽しく研究していることが周囲に伝われば少しずつでも変わってくると思います。大学の教授が胸を張って楽しいことをしていると言えること、研究費を求めるだけではなく、研究をしている本人が楽しいと思うことが大事なので、そういう大学であって欲しいと思っています。

記者:去年の文化功労者、今年は文化勲章ということで2年続けての受章となったことについてどんなことをお感じでしょうか。

大隅:文化勲章はノーベル賞受賞者の既定のようなものもあって、ノーベル賞受賞と連動しているものと受け止めています。そうした意味では変な意味ではなくて驚きはなくて、そういうものかなぁと思っておりました。

記者:ノーベル賞授賞式まで1か月余りと迫っていることと思いますが、その準備をされていることがあったら教えていただきたいのと(授賞式を)迎えるにあたってどんなお気持ちでいらっしゃるかお聞かせ下さい。

大隅:今一番の懸案事項は、全世界に発信されるノーベルレクチャーをどうしようかということです。その後、ノーべルレクチャーが本になるので、その内容やバイオグラフィーを2月初めまでにまとめないといけないので、時間が欲しいなと思います。大学に出てくると色々な案件があり、じっくり考えたりする時間が本当にないので、このままいったらどうなるんだろうというのが私の最大の心配事です。

記者:研究についてお聞きしたいのですが、以前の会見時も仰っていましたが、新しい研究にも取り組みたいとのことでした。今後やってみたいことを差し支えない範囲で教えていただければ。

これまでの歩みと原点回帰

大隅:オートファジーという世界が拡がっています。私自身の論文が約4割ありますし、水島さんという東大医学部でオートファジーを牽引している彼は動物の研究の分野をしていて十数%を占めています。今の風潮はセンセーショナルであればあるほど素晴らしい研究だというような褒め方があります。地味な研究はなかなか評価してもらいにくい世の中の風潮が、科学者の周りだけかもしれませんけれども、あります。オートファジーの中でもまだたくさん分からないことがありますので、動物細胞の研究は大事だと思っていて、これからも大いに発展してほしいと思っていますが、私自身は酵母に固執して、酵母でやったことが動物細胞なり、植物細胞の研究にインパクトを与えるような研究を続けたいという強い思いがあります。ラボを上げて取組みたいと、ちょっと違ったテイストのラボにならないかなと思っています。

記者:福岡高校の後輩の生徒さんとお話されたということですが、高校生などの子どもたちにはどういう姿勢を持っていて欲しいか、周囲が整えるべき環境などありましたら、お願いします。

記者の質問に答える大隅栄誉教授

記者の質問に答える大隅栄誉教授

大隅:情報化社会になって、簡単にネットで情報が得られる社会になっていて、それは人間の非常な大事なところの進歩になっているのかというのは大きな問題だと思っています。人間の大事な部分を失っているのかもしれません。若者には、自分の興味を大事にして、それが面白かったら科学の道に進んでもらえればいいよと伝えました。身の回りのどんなことでもいい、面白いと思えることからサイエンスを出発してほしい、生物領域では、膨大な情報の中から自分のアイデアを見つけることはそんなに易しいことではなくて、オートファジーの論文が毎年5000本出てくるけれどもそれに全て目を通していたらサイエンスは出来ないので、そういうことに惑わされず、自分が何を面白いと思うのかを追及してほしいと伝えました。

記者:これまで東京大学、岡崎にある基礎生物学研究所、東京工業大学と移られてきて、それぞれ個性があって研究環境も違ったと思うんですけれども、改めて振り返られて、それぞれの組織でこういう環境がその後の研究活動にプラスになったといった感想、印象があれば教えて下さい。

大隅:東京大学の理学部では、酵母の仕事を始めました。圧倒的に素晴らしい大学院生に恵まれたと思っています。私が教えたという風には思っていなくて研究仲間だし、研究活動の同志というような人たちと巡り合えたと東京大学理学部での10年間はそういう風に思っています。教養学部に関しては、非常に狭いところですし、それほどスタッフに恵まれなかったからこそ、ある部分は自分で転換をしてみようと思えたところもあるので、そういうことも人生の中ではいいこともあるのかなと思っています。基礎生物学研究所では、その当時、毛利(秀雄)先生が盛んに仰るように、あまり論文を出していなかったのですが、63歳が定年の時代に既に51歳で教授に迎えていただいたというのは、私の人生には大きかったと思います。基礎生物学研究所は当時は、今よりも恵まれた研究環境でした。スタッフ、機器類も揃っていたので短時間で研究が大きく立ち上がるということも多くありました。なかなか一つの小さな研究室で酵母もやり、植物や動物のオートファジーも多様な生物を使いながら研究できたというのは、基礎生物学研究所があって初めて大きく展開したと思っています。吉森先生とか水島先生とかオートファジーが大きな領域になったのは、私も含め基礎生物学研究所にいたからだと思っています。東京工業大学は定年間際に誘っていただいて、研究を継続できて非常にいい条件を提示していただいたので、今日があります。もちろんステディに研究を行ってきましたが、ここ数年、東工大では原点回帰したいと思っています。

記者:お話を伺うと東大教養学部では大変だったようですが、その他も含めて、これは大変だったなということがもしあれば。

大隅:一番大変だったのは実は留学時代かもしれません。私の能力のなさもあるんですけれど、大腸菌を対象にしてきた人間がいきなりマウスの受精卵を材料として扱うことになって、自分に何が出来るのかとても悩みが多かった時代でした。これもなぜそうなったかってのは時の運だったと思います。酵母に出会ったのも(ロックフェラー大学の)エーデルマン研だったので、そういうことも含めて実に色んなものとの出会いと、こう決めたからこうなるというもんでもないっていうのはサイエンスに限らず人生もみんなそうなんですけど、その中で進んでいくしかないかなと思っていました。ロックフェラー大学でものすごく苦労して酵母の研究をしていた頃に、自分で観察していて液胞に初めて触れた時にものすごく印象に残ったというのが、東京大学理学部に行って液胞の研究をしてみようと思ったきっかけになりました。そんな風に思いもかけないことがあるというのがサイエンスの面白さだと思っています。

記者:岡崎の基礎生物学研究所で会いたい方、岡崎で行ったことがない居酒屋はないと聞きましたが、行きたいお店はありますか。

大隅:岡崎は激しく変わっていて、数年前に行ったら、行きつけだったお店がほとんどなくなっていました。13年間単身赴任していましたが、結局自炊せずに済んでしまったので、たいてい夜は飲み屋で食事をしていました。行きつけのうち、いくつかは残っていますので、行ってみたいなと思います。基礎生物学研究所には、今はもう他の機関に移った方などもいますが、まだ半分くらいはよく知っている仲間が残っているので、話す機会があったらと思っています。

記者:小中学生から「人のやらないことをやるのはすごい」といった感想があったとのことですが、先生に直接、メールや手紙が来たということなのでしょうか。

大隅:正確には覚えていませんが、色んな人と話をして、中学1年の女子生徒が先生の話を聞いて、“そういうことがあるんだ”と興奮していた、という類の話を聞いていて私自身も嬉しく思っています。

記者:プレッシャーを感じているとのことでしたが、それはノーベルレクチャーなどでしょうか。

大隅:本当に出来るのかと言う時間的なことを含めてです。自分がやってきたことを反芻して、書く時間が欲しいなというところです。

記者:10月3日以降、顕微鏡を覗くなどの研究の時間を取れていますか。

大隅:全くありません。私のグループのポスドクや博士研究員とディスカッションする時間もなく、申し訳ないと思っているくらいなので、私自身が何かするような時間はないというのが現状です。

記者:原点回帰したいとのことですが、酵母の魅力と、原点回帰とは具体的には何を指しているのか教えて下さい。

記者会見後のフォトセッション

記者会見後のフォトセッション

大隅:研究の契機は、光学顕微鏡で細胞の中が見えたことからスタートしているので、もう1回そういうことをしてみたいというのが一つです。オートファジー研究の一番の泣きどころは酵母でも動物細胞でも定量的な評価ができないことです。酵母でもいい系を持ってはいますが全ての条件で働くわけではないので、定量的な評価ができるようなシステムをつくって、どういう状況で何がどれだけ壊れるか、タンパク質に限らず核酸の分解にも興味を持っていますし、脂質の分解にも興味があって、いつ何がどれだけ壊れるのかをきちんと評価することが酵母なら出来るだろうという想いがあって。酵母に出来れば違う系にも広がっていく、オートファジーの研究がより進むんじゃないかと思っています。日本のオートファジーの研究者の評価は高くて、派手なことをどんどんやるわけではありませんが、歴史に残る研究者が私の後にどんどん続いてくれていると思っています。

私を支えた「七人の侍」

記者:研究を進めて行かれる中で「七人の侍」の存在が取り上げられていますが、六人の方と会われるのは受賞後初めてと思いますが、その活動の重要性を含めてお話いただければと思います。

大隅:私は素晴らしい友人に恵まれたと思っています。研究者は孤独で、競争が激しい分野で自分と似たような仕事をしている人と和気あいあいと何も考えずに話をするのは難しいところがあります。私には「七人の侍」という、お互いを尊敬しあえる仲間をずっと持っていられたというのは幸せなことだったと思います。若い世代の研究者にも「七人の侍」を作りなよと話をしていますが、実際にはなかなか実現していません。私がたまたま色んな話や相談もできる同世代の仲間を持てたのは研究者にとっては幸せなことだと思います。

司会:それでは、予定していた時間となりましたので、これで記者会見を終了させていただきたく存じます。本日はご出席いただきまして、誠にありがとうございました。

公開日:2016年11月9日