東工大ニュース
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東京工業大学フロンティア研究機構 大隅良典栄誉教授が第20回慶應医学賞を受賞しました。
慶應医学賞は世界の医学・生命科学の領域において、医学を中心とした諸科学の発展に寄与する顕著、かつ創造的な研究業績をあげた研究者を顕彰するものです。1996年から研究者を顕彰し、過去には、本賞受賞者からノーベル賞受賞者を6名輩出しています。
オートファジーの分子機構の解明
生命を維持するためには細胞内のタンパク質を適切に分解・処理するシステムが必須です。大隅良典教授は、細胞が自分自身のタンパク質等の細胞成分を分解し再利用する「オートファジー現象」を出芽酵母の遺伝学的手法を用いて解析し、世界に先駆けてオートファジーに不可欠な遺伝子群を同定し、それらの機能と生物学的意義について明らかにされました。APGと名付けて報告されたこれらの遺伝子群は現在ATGと呼ばれていますが、この発見によってオートファジーの具体的な分子機構が明確になりました。そして、大隅教授の発見を発端として、これらの出芽酵母のATGに相当する遺伝子が哺乳動物細胞にも存在し、オートファジーは高等動物においても発生・恒常性維持に必須の役割を果たしていることが解明されました。更に、オートファジー機構の異常は、神経変性疾患や悪性腫瘍の病態や進展においても重要な機能を果たしていることが見出されました。
このように大隅教授の先駆的な研究から、オートファジーを基軸とする生命科学研究という新しい分野が創出され、教授自身も継続的に分野を牽引する研究成果を上げておられます。以上のような大隅教授の独創的な研究内容と、他の追随を許さない業績は、慶應医学賞に相応しいものです。
この度、慶應医学賞を受賞することになり、身に余る光栄の至りに存じます。ご推薦頂いた先生方、選考委員、慶應義塾医学振興基金の方々に深く御礼申し上げます。私はこの27年間、酵母を用いて細胞内の分解系の一つであるオートファジーの分子機構と生理的役割の解明を目指して研究を進めて参りました。近年オートファジーが様々な生命機能に関わっていることや、病態との関係も注目を集め、目覚ましい展開をしています。我々の研究がそのきっかけとなったとすれば、研究者としてこの上もなく嬉しく思います。これまでの研究が、素晴らしい共同研究者達に恵まれたことと、彼らのたゆまぬ努力の賜物であることに心から感謝の意を表します。
大隅良典栄誉教授が「オートファジーの仕組みの解明」により、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。受賞決定後の動き、研究概要をまとめた特設ページをオープンしました。