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スーパーコンピュータ『京』による世界最大規模のダークマターシミュレーションに成功

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公開日:2012.11.09

筑波大学計算科学研究センターの石山智明研究員を中心とする研究グループは、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を用いて、約2兆個のダークマター粒子の重力進化の計算に成功しました。1兆粒子を超す規模のダークマターシミュレーションは世界最大であり、専用のアプリケーションを開発した上で「京」全体の約98%を使用し、実効性能5.67ペタフロップス(1秒間に0.567京回計算)を達成しました。
宇宙には、普段われわれが目にする物質のほかに、質量にして5倍ほどのダークマターが存在します。ダークマターの重力進化を解明することは、宇宙の形成過程を明らかにすることにつながります。この計算は現在も進行中で、終了すると、現存する銀河のダークマターの微細構造やその成長過程が明らかになり、ダークマター粒子の観測方法の改良にもつながります。
本研究の初期成果はゴードン・ベル賞のファイナリストとしてノミネートされています。11月10日~16日に米国・ソルトレイクシティで開催される国際会議SC12において、最高性能賞ほかが発表されます。

ゴードン・ベル賞のファイナリストに選出されたことは、今回開発したアプリケーションの実用的価値と「京」の実運用での性能が高く評価された結果といえます。アプリケーション開発に用いたTreePM 法は、粒子間の重力相互作用を高速に解くアルゴリズムの一つです。21世紀に入ってからTreePM法を採用したアプリケーションは世界のいくつかのグループで開発されており、これまでに、およそ1000並列度まで対応した並列化が報告されていました。今回、遠距離力の計算の際に発生する大データの通信を高速に行う新しいアルゴリズムを開発するなどの最適化を行い、少なくとも10万近い並列度まで非常に効率良く動作するTreePMアプリケーションの開発に成功しました。開発にあたっては、研究グループ内の、理化学研究所 計算科学研究機構(AICS)・似鳥啓吾研究員、および東京工業大学大学院理工学研究科 理学研究流動機構・牧野淳一郎教授の協力を得ました。

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