研究

東工大ニュース

体内の余分なマグネシウムを尿中に排出する新たな経路を特定

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2013.06.20

要約

○ 海水魚は海水に含まれるマグネシウムの過剰摂取から身を守るために、マグネシウムを尿中に捨てます。
○ マグネシウム輸送体が腎臓で尿を産生する細胞の細胞内液胞に高発現することを初めて見出しました。
○ 本研究はマグネシウム排出の新たなメカニズムを理解する重要な手がかりとなります。

研究の内容、背景、意義、今後の展開等

マグネシウムは核酸やタンパク質(酵素)と結合する補因子として全ての細胞の生存に不可欠です。体内のマグネシウム濃度は腸や腎臓によるマグネシウム吸収と排出により一定に保たれます。それぞれの細胞にはマグネシウムを吸収したり排出したりする仕組みが備わっていますが、動物細胞がマグネシウムを細胞外に出す経路に関わる因子はごくわずかしか明らかになっていません。

海水にはNaClの他、マグネシウムや硫酸、カルシウム、カリウムなどのイオンも含まれています。海水中には「にがり」の成分としても知られるマグネシウムが海水魚の血液の約30倍も存在し、マグネシウムは海水から体内へ濃度勾配に従って侵入します。マグネシウムの過剰摂取を防ぐために海水魚はマグネシウムを尿中に150 mMにまで濃縮して排出します(Smith 1930)。腎臓には尿を濾過する装置(糸球体)と尿の組成や量を調節する細い管(尿細管)が存在しますが、海水魚腎臓ではマグネシウムを多く含む液体が尿細管から尿中に活発に分泌されることが知られ(Beyenbach 1982)、マグネシウム排出の研究に有用な研究材料となっています。

これらの背景を踏まえて海水魚の尿細管に発現するマグネシウム輸送体の解析を行った結果、細胞内液胞に局在するSlc41a1(注1)を介したマグネシウムの排出系路を見出しました。まずトラフグ(海水魚)のゲノムデータベースからマグネシウム輸送体の候補遺伝子を網羅的に同定し、その中から腎臓で高発現する遺伝子を特定しました。その結果Slc41a1と呼ばれる遺伝子がマグネシウムを尿中に分泌する細胞(近位尿細管細胞)で高発現することを見出しました。淡水と海水で棲息できるトラフグ近縁種のメフグを用いて腎臓での遺伝子発現を比較したところ、海水で飼育したメフグの腎臓では淡水で飼育したメフグの腎臓に比べSlc41a1の発現量が約3倍に上昇していました。Slc41a1の局在を免疫蛍光法および免疫電子顕微鏡法で確認したところ、興味深いことにSlc41a1は細胞内の液胞と呼ばれる場所に局在することが明らかになりました。

近位尿細管細胞の管腔側(尿側)には微絨毛が密に存在し、微絨毛は栄養素の再吸収やイオンの再吸収・排出(分泌)を行います。海水魚の腎臓では、硫酸イオンやカルシウムイオンが微絨毛を介して排出されることがこれまでの研究から明らかになっていました(図1)。今回の研究で、マグネシウムイオンは細胞内の液胞に一度蓄えられてから尿側に放出されるという別の経路をたどることが明らかになりました。マグネシウムイオンを一度液胞に蓄えてから捨てる仕組みはヒトなど他の動物細胞にも存在する可能性が高く、今後、新たなマグネシウム排出経路が明らかになると期待されます。

(注1) Slc41a1: Solute carrier family 41 member a1と呼ばれるマグネシウム輸送体。

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