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【報告】 RAKUGO Live at Tokyo Tech 2013

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公開日:2013.08.05

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夏の暑さも本番の8月1日、TIERサマープログラム2013の一環として、立川志の春さんをお招きして"RAKUGO Live at Tokyo Tech" を開催しました。会場である大岡山キャンパス本館H111教室には午後3時からの開演に先立つこと1時間以上前から待機してくださった留学生さん方がいらっしゃいました。

大きな拍手と共に登場した志の春さんは、まずマクラとして黒板に書かれた(本人直筆!)漢字の意味の説明から入り、次に扇子や手ぬぐいの使い方、座ったままで演じることの意味など落語がいかにオーディエンスの想像力の中で生きる芸能であるかを丁寧にご説明くださいました。「こんにちは」というシンプルな言葉で老若男女を演じ分ける志の春さんに皆びっくりしていました。

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一通りの説明が終わったあとに「まずは一席どうぞ」と「転失気」へ。体調のすぐれない和尚が医者にかかったときに聞いた「転失気(てんしき)」という言葉。その意味がわからないまま、知ったかぶりをして小僧にその意味を探らせるというおなじみの古典落語です。登場人物の軽妙なやりとりひとつひとつに会場は沸きたち、噺の後の最初の質疑応答も大いに盛り上がりました。休憩を挟んでの二席目も古典落語の「薮入り」。これは9歳で丁稚奉公に出た息子が3年ぶりに故郷に帰ってくる前の晩から始まります。息子を待ちかねる両親、特に父親の様子を笑いながら聴いているうちについホロリときてしまう温かい人情噺です。

二席目前の質疑応答時に「落語に地域差はありますか?」という質問があったのですが、滑稽さが中心の「転失気」はどちらかというと大阪の噺で、おかしさと人情が江戸落語の特徴だ、というご説明の通り江戸落語の奥行きを見せてくれた「薮入り」でした。志の春さんは「英語での人情噺が留学生さんに通じるだろうか」と事前に心配していらっしゃいましたがまったくの杞憂でした。

二席目のあとの質疑応答時も、「薮入り」と関連して「徒弟制度」「落語の徒弟制度」について活発な質疑応答が繰り広げられました。特に徒弟制度の是非を問われた際、志の春さんが「これを通じて、私は立川志の春という軸と師匠の立川志の輔という2つの軸を持てたと思います」というご説明がとても印象的でした。

落語を通じて笑いながら日本文化を伝えられたら良いな、という思いから始めた企画ですが、英語を使って日本人の機微まで見事に表現してくださった立川志の春さんに改めて大きな感謝と敬意を表したいと思います。

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文:国際室国際連携プランナー / 特任准教授
西野可奈

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