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スポーツ講座2013「舞の海 本音トーク」詳細報告

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10月22日(火)の17:30から19:00まで、すずかけ台キャンパスすずかけホール3階多目的ホールにおいて、「可能性への挑戦」というテーマのもと、今年度二回目となるスポーツ講座が開催されました。

今回は大相撲で「技のデパート(本店)」の異名を持たれる舞の海秀平さんとジャーナル編集者の清家輝文さんをお招きしました。大変盛り上がった当日の様子をお伝えいたします。

現在、NHK相撲解説者、スポーツコメンテーターとして活躍されている舞の海秀平さんですが、一度目の大相撲新弟子検査で基準身長に足りず不合格となり、頭にシリコンを入れ壮絶な1ヶ月を過ごし、二度目の検査で合格されたことは有名です。各界最小の身体ながら、数々の技を繰り出し、"技のデパート(本店)"の異名をとり、引退までに技能賞を5回受賞されています。

清家輝文さんは学生時代からベースボールマガジン社の「スポーツマガジン」の編集に関わられ、野球・ラグビー・相撲・アメリカンフットボールなど幅広い競技の取材編集を経験され、スポーツ医科学分野を専門にジャーナル編集人として活動されています。

悪ガキだった少年時代

話題はまず、やんちゃで悪ガキだった舞の海さんの少年時代についてから始まりました。ガキ大将だった舞の海さんは、小学校のころは毎日野球や釣りに明け暮れていたそうです。友人をいじめたことでホームルームで説教をされ、職員室に連れて行かれてさらに説教をされたことが、とても嫌だったとのこと。相撲については、小学校の頃は夏休みに神社などで大会があり、そのときだけ取り組んでいたそうですが、その頃から学校で一番強かったそうです。

相撲部を辞めたかった中学校・高校時代

中学校へ進学し、相撲と野球でどちらの部活に入ろうか悩んだそうですが、青森は当時、野球が弱かったそうで、相撲であれば全国大会で活躍できると考えたため、相撲部への入部を決意したとのことです。そこから相撲に対して、初めて本格的に取り組むようになったそうです。しかし、体が小柄であり、次第に小学校の時には負けたことのなかった相手に負けるようになると、人に追い越されるのが嫌いな舞の海さんは、美術部に転部しようと考えました。そこで顧問の先生に何度も退部を申し出たそうですが、受け入れてもらえなかったそうです。その後、県立高校に進学したときも、やはり相撲は好きで、結局相撲部に入部します。

価値観が大きく変わった大学時代

相撲の強豪校として有名な日本大学に入学したあとは、純粋に相撲の道を究めたいと考えたそうです。「体重が90キロ超えたらレギュラーにする」との相撲部の監督の一言で、死に物狂いで食べに食べて、体重90キロ超えを達成でき、レギュラーの座を手にしたそうです。大学卒業後は山形県の高校教師に内定していたそうですが、将来を有望視されていた相撲部の後輩が急死したことを機に、大相撲を目指すことを決意したそうです。ここで大きく価値観が変わり、失敗を恐れていたそれまでのネガティブな考え方から、思い切ってここでやるしかないというポジティブな考え方に切り替わったそうです。

貪欲に相撲道を究めた大相撲時代

大相撲入りを決意して、頭にシリコンを入れた新弟子検査を経て入門した相撲部屋で、それまでの相撲部の環境との大きな違いにはとても感動したそうです。部屋が綺麗であることや、早朝の稽古で力士の身体から湯気が立っている姿を見て、初めて「修行は美しい」という気持ちになったそうです。また、当時の親方は「型にはまらない人」だったそうで、その親方の考え方で「考えてもいいが悩むな。悩むなら考えるな。」というのは今でも覚えておられるそうです。

小柄な体格であるということもあり、大きな力士と取り組む際にはとくに、綿密に勝てる戦略を立てていたそうです。取り組みの前日は翌日の勝ち姿だけを決めて酒を飲んで寝て、朝起きてから稽古を行っている間に決め技を2つに絞り、大銀杏を結い上げていくときに、徐々に戦略を絞っていくといった、勝負に対してどう立ち回るかというお話をしていただけました。最終的には、取り組みの直前の立ち合いのとき、相手の目を見て意思決定をしていたそうで、勝負師としての勘がとても鋭い方だという印象を受けました。加えて、ここで少しでも不安定な心理状況にあると、判断が1テンポ遅れてしまうと考え、常に強気で行くことを心掛けていたとのことです。

また、長く相撲に取り組んでいるあまり頭が凝り固まってしまっていては新しい発想が出ないと考えた舞の海さんは、なるべく素人の意見にも耳を傾けることを現役時代から心掛けていたそうです。ちなみにかの有名な八艘跳びは、大学時代の友人からの意見がきっかけだったそうです。

今後について

江戸時代から何一つ変わっていないスポーツであり、伝統芸能であり、神事でもある大相撲の奥深さについて、お茶の間で観戦している人が感動できるような解説をしていきたい、そしてご自身の体験を踏まえ、これまでにない新しい解説に全精力を費やしていきたいという意気込みがうかがえました。

質疑応答

Q:
どうやって現在のような、落ち着いた、論理的な話し方ができるようになられたのでしょうか?
A:
相撲を通じて、自分を自覚することができ、アイデンティティが確立されていった。先輩後輩の関係や師匠弟子の関係などはとくに自分自身の性格や人間性に与えた影響力は大きかったと思う。
Q:
相撲番組で解説をする際に気を付けられていることは何ですか?
A:
お茶の間で見ている人に相撲の奥深さを伝えるような解説をいつも心がけている。映像と語りを合わせて、独りよがりの解説にならないよう気を付けている。

開催後記

テレビなどでよくお見かけする舞の海さんですが、ひょうひょうとした語り口である一方、とても気さくな方であるという印象を受けました。他の選手より小柄で体格では劣ってしまう分、必死に頭で考え、また自分の強みであるスピードを生かすことで自分の土俵で勝負するといった考え方は、どんな分野にも共通して取り込めるのではないでしょうか。また、公式の場では語れないここだけの話が多くあり、とても奥深くて面白い講演会でした。

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