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熱帯熱マラリア原虫に対する5-アミノレブリン酸と鉄の相乗的な増殖阻害メカニズムを解明

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公開日:2013.12.06

国立大学法人東京大学(所在地:東京都文京区、総長:濱田純一)と国立大学法人東京工業大学(所在地:東京都目黒区、学長:三島良直)、MRC National Institute for Medical Research(所在地 :英国ロンドン、所長:Jim Smith)、SBIファーマ株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役執行役員CEO:北尾吉孝)は、5-アミノレブリン酸(ALA)と2価の鉄が熱帯熱マラリア原虫の生育を相乗的に阻害する作用メカニズムについて12月2日発刊のThe Journal of Biochemistryに発表しました。

発表のポイント

  • ALAと2価の鉄との組み合わせによって、相乗的にマラリア原虫の生育を阻害するメカニズムの一端について解明しました。
  • 本成果は、多くの人たちを苦しめているマラリアを治療するための新規の医薬品の開発につながるものと期待されます。

発表概要

マラリアは、3大感染症の一つであり、年間の罹患者が数億人、死亡者が100万人を超えるといわれる重大な感染症です。ALAを投与するとマラリア原虫に感染した細胞にポルフィリンが蓄積され、そのポルフィリンを手がかりに光照射でマラリア原虫を殺せることはすでに知られていますが、血液に光照射を行うことは現実的ではなく実用化の障壁となっていたため、光照射を伴わないALA薬剤の開発が望まれていました。

東京大学大学院医学系研究科の北 潔教授、東京工業大学大学院生命理工学研究科の小倉 俊一郎准教授とSBIファーマ株式会社は、ALAと2価の鉄の併用により、光照射する ことなく熱帯熱マラリア原虫の生育を阻害できることを2011年に学会で発表しました。その後MRC National Institute for Medical Researchも研究に加わり、マラリア原虫の 各オルガネラにおけるポルフィリン類の分析結果から、今回ALAと2価の鉄の併用が特定のオルガネラへのポルフィリンの蓄積と活性酸素の発生を引き起こし、それらがマラリア原虫の成長阻害を誘導するという作用メカニズムの一端を明らかにしました。

本成果は、多くの人たちを苦しめているマラリアを治療するための新規の医薬品の開発につながるものと期待されます。ALA、2価鉄ともにすでに安全性が確保され、食品や医薬品として利用されている化合物であり、早期に臨床開発に移れる可能性があり、既存の抗マラリア薬と比べて副作用が小さく予防的にも服用可能な画期的な抗マラリア薬となることが期待されます。

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