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大学院総合理工学研究科長、精密工学研究所長 就任挨拶

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公開日:2014.05.14

2014年4月1日付で、東工大の部局長(研究科長・学部長・研究所長)のうち、大学院総合理工学研究科長、精密工学研究所長が交代しました。新部局長からの就任の挨拶をご紹介いたします。

大学院総合理工学研究科 小田原修研究科長 就任挨拶

大学院総合理工学研究科 小田原修研究科長

私の学部入学は1970年で、工学部金属工学科の卒業が1974年ですので、今年は学部卒業40年になります。そして、総合理工学研究科は2015年に創立40年を迎えます。 

私は原子炉工学研究所の河村和孝先生に師事して卒業研究を行い、原子核工学専攻へ進学し、「溶融塩の輸送現象」で学位を取得しました。博士課程在学中の1977年8月からの1年間は、オランダ政府給費留学生としてアムステルダム大学ヴァントホフ研究所の銀のイオン半径を決定したケテラール教授の下で、学位取得に資する研究生活を過ごしました。ファンデルワールスやゼーマンの名を冠した研究所などが歩いて数分の範囲にある環境では、「日本は科学技術の発展を勘違いしている。科学技術には風土がある。」と、欧州の研究者に言われることにも納得できる重みを実感しました。1979年3月に学位を取得し、4月より通商産業省(当時)に奉職し、工業技術院東北工業技術試験所(当時)を舞台に「サンシャイン計画」と「ムーンライト計画」に従事するとともに、「燃焼合成」という新しい研究開発分野を開拓しました。また、1983年8月からの1年間は科学技術庁(当時)に出向し、スウェーデン・イェーテボリ市にあるシャルメース工科大学物理学科に出張して二次イオン質量分析技術を習得しました。7年間の国策研究への従事を終え、1986年4月に総合理工学研究科電子化学専攻に助教授として出向しました。私の大学院時代を支え育んでくれた岡田勲先生とともに教育研究を進めるとともに、燃焼合成を「宇宙環境利用」研究に活かすことをベースに我が国の宇宙探査計画に参画しました。創造大学院構想の具現化に伴い、1997年4月に材料物理科学専攻、2003年5月からは物質科学創造専攻に所属し、総合理工学研究科の物質材料系三専攻の全てに所属して現在に至っています。

学部を持たない総合理工学研究科は、様々な科学技術に柔軟に対応できる学際領域における教育研究を推進してきました。「社会の要請に柔軟に応える」を使命としてきましたが、これからは「社会と共生して、社会を導く」教育研究を充実させなくてはなりません。現在の総合理工学研究科の構成は、物質材料系、環境エネルギー系、システム情報系の三系に大別された十一専攻です。歴史が40年にならんとする今、各専攻の基幹講座の教員が中心的に大学院生の教育研究を担い、附置研究所等を原籍とする教員と学外機関に所属する研究者で構成する協力講座と連携講座を有機的に繋いで共に築いてきた「独自の風土」には、刻まれた年輪以上の重みがあります。私たちは、その重みに頼ることなく、「あるべき姿を具現化し、合意形成の心で展開し、効果的な手法で訴求し、次の一手に繋ぐ」を成し得る総合理工学研究科の強みを一層強化して、今日の全力を全力以上の明日に繋げる人間力を育む教育研究の技を鍛えなくてはなりません。この気持ちを大切にして、また、現在の総合理工学研究科が置かれている状況判断を見誤ることなく、次の発展に繋げるように最善を尽くす所存です。今後とも、皆様の御支援・御協力をよろしくお願いします。

精密工学研究所 新野秀憲所長 就任挨拶

精密工学研究所 新野秀憲所長

2014年4月1日付で東京工業大学精密工学研究所(略称:精研)の第23代所長に就任致しました新野秀憲です。この機会に精研を紹介するとともに所長としての抱負を述べさせて頂きます。

1. 精密工学研究所とは

東京工業大学の4附置研究所のひとつである精研は、すずかけ台キャンパスに位置し、機械工学、制御工学、電子工学、情報工学、材料工学といった広範な研究分野の教員から構成されています。精研は精密機械研究所(1939年創設)と電気科学研究所(1944年創設)が1954年に合併した研究組織で、設立以来、「精密工学における学理の究明と応用」をミッションとして掲げ、古賀逸策教授(水晶振動子の研究)と中田孝教授(歯車工学と自動制御の研究)の2名の日本学士院会員を輩出するとともに、さまざまな産業基盤となる研究成果を創出し、産業界や学界の発展に多大な貢献をしてきました。

例えば、機械を作るための機械である工作機械の数値制御技術における我が国のルーツであり、世界第1位の生産額を誇る日本の工作機械製造産業を牽引してきました。最近では、東京工業大学の前学長である伊賀健一教授(面発光レーザの発明と実用化の研究)が世界的に高く評価されています。

2. 精研の発展経緯

1991年に「精密と知能を融合した新しい精密工学」の創成をめざして、英文名称を「Precision and Intelligence Laboratory(略称:P &I Lab.)」に変更し、それまでの研究対象と研究範囲を格段に拡大しました。そして1993年に従来の研究体制から知能化工学、極微デバイス、精機デバイス、高機能化システム、先端材料の5部門15研究分野の体制に一新し、ロゴである「テトラへドロン(正四面体)」は、それら5部門が緊密に連携した異分野融合組織であることを象徴しています。

加えて2000年に文部科学省COEプログラムから発展したマイクロシステム研究センター、2008年にセキュアデバイス研究センター、次いで客員部門の知的財産利用支援システム研究部門と先端フォトニクス研究部門が設置されました。なお、マイクロシステム研究センターは、2010年に次世代光ネットワークの実現をめざしたフォトニクス集積システム研究センターに転換して、研究活動を推進しています。

3. 代表的な精研の研究トピックス

最近の代表的な精研の研究トピックスを以下に紹介しましょう。

(1)

超並列光エレクトロニクス

精研で発明された面発光レーザをベースに、新たな学術領域「超並列光エレクトロニクス」を構築。その研究成果により、1000億円以上の巨大市場を創出し、高度人材育成と高度情報化社会の実現に貢献しています。

(2)

革新的機械システム

精研のコア技術として蓄積してきたナノ加工、ナノ計測、ナノ制御、ナノデバイスの研究成果を融合した革新的機械システムおよびその構成要素を実現。高度人材育成とものづくり産業基盤の展開に貢献しています。

(3)

医工学連携による研究
精密工学と知能工学の融合、東京医科歯科大学との医工学連携により、高度ヒューマンインタフェース、世界最小の体外循環用磁気浮上式人工心臓、力覚提示機能を備えた手術ロボット、医療用新材料を創出。Quality of Life(QOL)の向上に貢献しています。

4. 所長としての抱負

近年、大学を取り巻く環境は、劇的に変化しています。そのような環境変化に迅速、かつフレキシブルに対応するため、学内外におけるプレゼンスを高めるとともに産業界、学界、政府機関との緊密な連携を進めながら新たな精密工学の創成、学理の究明と発展に寄与していこうと考えています。私たち精研の教職員・学生は、学内、学外を問わず、みなさまと積極的に関わり合いながら、先進的な研究課題に挑戦し、明るい未来社会の実現に挑戦したいと考えています。

2015年4月27日11:20 古賀逸策教授の名前に誤りがありましたので、修正しました。

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