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東工大教員が日本建築学会賞など三賞を受賞

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2014.05.15

東工大の教員5名が、2014年日本建築学会賞(論文)*1同賞(作品)*2、および2014年日本建築学会作品選奨*3を受賞しました。各賞を受賞した教員のコメントをご紹介します。

2014年日本建築学会賞(論文)

大野 隆造 大学院総合理工学研究科 人間環境システム専攻 教授
受賞業績:「生活環境の知覚および認知に関する一連の研究」

概要

受賞対象の「生活環境の知覚および認知に関する一連の研究」は、人が日常の生活を営む中で環境からどのような情報をどのように受け取り行動しているのか、またどのようにその環境を記憶して意味付けているのかといった、人と環境との関わりの根底にある関係を実証的に解明し、それに基づいて建築・都市空間の計画への応用を提案したものです。

3部構成の第1部では、モノの知覚とは異なる環境の知覚についての理論的な検討を通して「環境視」の概念を提起し、それに関わる環境情報を記述する方法を開発しています。第2部では、空間移動時の環境と知覚との相互のダイナミックな関係に着目し、視覚シミュレーション装置を用いて、移動中の誘導サインの認知や距離知覚について解明しています。第3部では、公共空間における居場所選択行動、複雑な屋内外の経路構造と迷い、緊急時の避難と環境情報、など環境認知の現実的課題について究明しています。

大野教授のコメント

大野隆造教授
大野隆造教授

映画のアカデミー賞を受賞した人の挨拶をテレビで見ていて、あまりにも多くの名前を延々と挙げて感謝の辞が続くのを奇異に思ったことがあります。しかし、今回の受賞を機にあらためて自分の一連の研究を振り返ってみると、さまざまな場面で重要な役割を果たしてくれた多くの人々の顔が次々と浮かんできて、その一人一人の名前を挙げて感謝したくなる気持ちが分かりました。学生として東工大とウィスコンシン大で教えを受けた先生方、新参教師として赴任した神戸大で助けて頂いた先輩教員や同輩、東工大に戻ってからの同僚、そしてその間に出会った学生達。研究の発想と思考は孤立した個人の脳では成り立たず、周りの人のとの知の交信によってはじめて可能であったことに気付きました。そして、この互いに刺激しあう知のネットワークの基盤として、情緒的な安定を保つための家族をはじめとする心の環境が欠かせないことも再認識しました。

川島助教のコメント

2014年日本建築学会賞(作品)
2014年日本建築学会作品選奨

川島 範久 大学院理工学研究科 建築学専攻 助教
受賞作品:「NBF大崎ビル」

概要

NBF大崎ビル 撮影:鈴木豊
NBF大崎ビル(撮影:鈴木豊)

世界的ICT企業のための研究開発型オフィス。知的生産性が高いワークプレイスを最小の環境負荷で支えながら、都市に対して利他的な効果をももたらす、次世代環境オフィスです。研究所とオフィスを一棟に集約し、エンジニア同士の知的交流を促進する計画とし、さらにワークプレイスは整形無柱の空間として、製品開発に求められる迅速な人の集散に対応でき、一望性が高くコミュニケーションが生まれやすいよう配慮しました。

ワークプレイスには全周バルコニーを設けて高層階でも安心して働ける環境にするとともに、貯留雨水を循環させて外壁を気化冷却し冷房負荷を削減する外装システム「バイオスキン」を開発し、採用しました。これは周辺街区も冷やし、ヒートアイランド現象を抑制する今までにない利他的な環境装置です。ランドスケープでも、隣接建物の緑地と連続させることにより広大な緑地を大崎駅前につくりだし、クールスポットを形成します。

川島助教のコメント

川島範久助教
川島範久助教

日建設計の設計担当として、コンペから竣工まで関わらせていただいた建築ですが、施主の皆様、施工者の皆様、社内外の沢山の設計チームメンバーとの協働の中で実現した建築です。まずは、この関係者の皆様に、感謝の意を伝えたいと思います。この建築の竣工引渡し一週間前に、東日本大震災が発生しました。それまで考えてきた建築と環境の関係性について、再考せざるを得なくなりました。それが、その後にUCバークレーで客員研究員としてカリフォルニアにおけるサステイナブル・デザインを学ぶキッカケとなり、これから考えていくテーマを見つけることに繋がりました。このように、多くの人達と出会い、多くことを学ぶキッカケとなった建築が、このような素晴らしい賞を受賞したことは、大変嬉しく思います。これを励みにこれからさらに頑張っていこうと思います。

2014年日本建築学会作品選奨

塚本 由晴 大学院理工学研究科 建築学専攻 准教授
竹内 徹 大学院理工学研究科 建築学専攻 教授
伊原 学 大学院理工学研究科 化学専攻 准教授
受賞作品:「東京工業大学 環境エネルギーイノベーション棟」

概要

環境エネルギーに関する研究者が専攻を超えて集まるこの研究棟は、建築と融合した棟内の高効率なエネルギーシステム設計により、CO2排出量を従来よりも約60%削減し、棟内で消費する電力を650kWの大容量太陽電池パネルと100kWのリン酸燃料電池コジェネレーションシステムによってほぼ自給できる設計となっています。独自に開発されたスマートグリッド管理システム“エネスワロー”によってエネルギーの見える化をおこない、気象条件、エネルギーの需給バランスなどにより、消費電力を無理なく抑制できる仕組みをも持ちます。建物本体の外殻架構には地震エネルギーを吸収し、柱梁を損傷より守る座屈拘束ブレースを螺旋状に巡らせ、震度6強の地震時にも機能を維持できる構造としました。この本体に寄りかかるように傾いた南面、屋根面および西面の三面が一体となり、建物を包み込むソーラーエンヴェロップを形成。フィーレンデールの鉄骨フレームに既製品の太陽電池パネルとキャットウォークを設置し、メンテナンスと将来のパネルの更新を容易にしました。研究室の階では冬至の南中時にパネル全体に日射が届くルーバー状として採光を確保しています。太陽の恵みを受けるという点で、太陽光電池パネルには農業との共通性が多く、太陽に干すようにパネルが並ぶ姿は“稲掛け”を連想させます。

環境エネルギーイノベーション棟
環境エネルギーイノベーション棟

エネスワローによるエネルギーの見える化
エネスワローによるエネルギーの見える化

受賞教員のコメント

審査では太陽光パネルを鎧のようにまとった姿に「異形の建築」という声もあったと聞いていますが、それを新しい時代を開く建築として高く評価していただいた背景には、環境エネルギー分野と建築分野の協働への期待があります。今後も同様の努力を続ける責任が本学にはあると、気を引きしめているところです。(塚本准教授)

本プロジェクトでは学内のみならず多くの企業の方々のご協力を頂きましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。環境エネルギーイノベーション棟の設計に加えて、そこで運用されている棟内スマートグリッド “エネスワロー” も高い評価をいただいたものと思います。今後も本棟を中心とするスマートエネルギーキャンパス構想“東工大グリーンヒルズ構想”を推進していきたいと考えています。(伊原准教授)

  • 塚本由晴准教授

    塚本由晴准教授

  • 竹内徹教授

    竹内徹教授

  • 伊原学准教授

    伊原学准教授

近年中に発表された研究論文の中でも、学術の進歩に貢献する優れたものに授与されます。
近年中に竣工した建築の設計の中でも、技術や芸術の進歩に貢献する優れた作品に授与されます。
日本建築学会作品選集に掲載された中でも、特に優れた作品が選出されます。

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