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10年先を見据えた世界的トップリーダから学ぶ生命理工学フォーラム 開催報告

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公開日:2014.07.16

最近20年のライフサイエンス研究の発展はめざましいものがあります。特に理工学の複数分野との融合研究によって、再生医療や超高速ゲノム解析に代表される革新的なライフサイエンス・エンジニアリング技術が多く開発されています。幅広い視点で未来を見据え、新たな発想に基づいた柔軟で創造性あるアプローチの重要性が益々高まっています。

10年先を見据えた世界的トップリーダから学ぶ生命理工学フォーラム ポスター

10年先を見据えた世界的トップリーダから学ぶ生命理工学フォーラム
ポスター

このような現況のなか、創設から20年を経た大学院生命理工学研究科は、将来のライフサイエンス研究を担う学部生・大学院生、若手研究者を対象に、10年先を見据えた近未来のライフサイエンス研究のあり方や方向性を考える「10年先を見据えた世界的トップリーダーから学ぶ生命理工学フォーラム」を企画しました。国内外で最先端の研究を展開し、ライフサイエンス分野の世界的リーダーである先駆的研究者を招聘し、その分野において解決すべき問題点や理工系研究者に期待したい技術を含めた現状と将来について、熱く語っていただくことを目的としています。

記念すべき第1回フォーラムを5月28日、すずかけ台大学会館(すずかけホール)にて開催し、世界をリードする脳科学者、御子柴克彦教授(理化学研究所・脳科学総合研究センター)にご講演いただきました。御子柴先生は、1989年に細胞が外からの刺激に応じて細胞内でカルシウムイオンを放出するIP3受容体チャネルを発見し、その遺伝子配列を世界に先駆けて決定されました。その後も細胞内における情報伝達機構に関する研究で常に世界をリードされてきました。その功績によって、学士院賞をはじめ国内外の数多くの賞を受賞され、今年2月にはフランス共和国の最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章を受章されています。

御子柴先生と生命理工若手研究者との交流会

御子柴先生と生命理工若手研究者との交流会

本フォーラムをより有益なものとするために、講演会に先立ち、研究科を代表して岡田助教(分子生命)、門之園助教(生体分子)、鈴木准教授(生体システム)、十川准教授(生命情報)の4名が自身の最新の研究成果を御子柴先生に紹介し、交流する機会をもうけました。研究科長室でおこなった研究交流会は、終始和やかな雰囲気で進みましたが、発表途中での活発な質疑応答もあり、一人15分の発表時間の予定は大幅にオーバーし、とても密度の濃い有意義な時間をもつことができました。世界的に著名な研究者から直接質問やアドバイスをいただくことができ、若手研究者にとっても励みとなり、また東工大のライフサイエンス研究を知っていただく良い機会になりました。

講演会に先立ち、本フォーラム設立の趣旨を説明する関根研究科長

講演会に先立ち、本フォーラム設立の趣旨を説明する
関根研究科長

研究交流会終了後に休む間もなく、午後4時から講演会がおこわれました。学部1年生から大学院生、そして本研究科研究員、教員と、会場のすずかけホールは予備の椅子も埋まるほど多くの聴講者が集まりました。講演タイトルは「生命科学における真理の探求」で、御子柴先生の世界的な発見から、現在に至る研究の発展の経緯を、あますことなく解説していただきました。そのなかでも、講演タイトルの副題とされた「オリジナルな研究で世界をリードするには」どうしたらよいかを、学生や若手研究者に向けて、最初は語りかけるように、そして研究成果の部分にさしかかると熱く語ってくださいました。御子柴先生の研究成果は、どれも世界をリードするエキサイティングなものであり、そのデータ量の膨大さに聴衆は驚かされました。長年多くの研究員らが積み重ねてきた研究成果は、予定していた1時間30分の講演時間内に収まりきるものではなく、講演会は2時間30分にも及ぶものとなりました。

学生に語りかけるように研究の楽しさ、醍醐味、そしてオリジナリティの重要性を話される御子柴克彦先生

学生に語りかけるように研究の楽しさ、醍醐味、
そしてオリジナリティの重要性を話される御子柴克彦先生

予定時間を大幅に超える講演会でしたが、途中退席者はほとんどなく、多くが御子柴先生の講演を最後まで傾聴していました。また、来年70歳になられる御子柴先生ですが、2時間半ものあいだ疲れた様子を見せることなく、情熱的に研究の面白さを語ってくださいました。講演の後半は多少専門知識が必要となる内容でしたが、その詳細が理解できずとも、膨大なデータ量と圧倒的な研究成果を肌に感じることができました。

学部・大学院生から教員まで200名以上の聴講者で埋まる講演会の様子。

学部・大学院生から教員まで200名以上の聴講者で埋まる
講演会の様子

以上のように、第1回のフォーラムは、講演者との研究交流会とともに、非常に有意義なものとなりました。2012年に創設20周年を迎えた大学院生命理工学研究科では、次の30周年、40周年と、常に未来を見据えた研究を展開していくために、本フォーラムがそのきっかけとるよう、今後とも継続して回を重ねていく予定です。

お問い合わせ先
生命理工学研究科事務室
Tel: 045-924-5940

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